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楽器の位相について(7) 〜アンプの逆相ついて〜 [技術]

今回はアンプの逆相ついてについてです。

ここまで、お付き合いしていただいた読者の皆様は、位相が重要な音作りの一つであることを感じていただいていると思います。現在の状態が正相なのか、逆相なのか、基準を持っていた方が良いですよね。
基準を持つ上で、困る存在があります。チャンネルによって異なる位相を持つアンプです。チャンネル1は正相、チャンネル2は逆相、チャンネル3は正相、など、、、、チャンネル間で位相が異なる場合が多々あります。位相を統一したい場合には、位相を逆相にするための機器が必要となります。チャンネル切り替えとセットで、位相を変える機器のコントロールが必要となるわけです。このように困った状況を解決するために、ARC-4 (フリーザトーン製のスイッチャー)を開発し発売しました。売り込みっぽくなってしまうようで恐縮ですが、ARC-4は位相切り替えをプリセットごとに設定できるようになっています。アンプの位相が変わった場合でも、逆相機能をONにして位相を反転させ、それをプリセット毎に覚えさせることができます。おそらく、位相をコントロールできる機能を持つスイッチャーは、世界でもこのARC-4だけだと思います。位相のコントロールは非常に重要で音作りに有効なので、 ARC-4から位相切替機能を抜き出した製品を現在開発中です。できるだけ小型にして使いやすい製品に仕上げたいと思っています。

話が少しそれてしまいましたので、アンプの位相の話に戻ります。位相を説明する上で、真空管(チューブ)アンプを例に説明するのがわかりやすいと思いましたので、ネット上にアップされていた、あるチューブアンプの回路図を元に、なぜ正相と逆相のチャンネルが生まれてしまうのか、探ってみたいと思います。


まず、前回のブログでご紹介しました、真空管の回路を思い出してください。信号を取り出す場所によって、信号の位相が変わります。同位相(正相)で出力する場合と、逆相で出力する場合がありました。
上側の回路③は、主にインピーダンスを下げる回路です。下の回路④は主にゲインを上げるために使われる回路です。

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では、具体的にアンプの回路を見て見ましょう。パッとみると様々なパーツが接続されていますので、難しそうに見えますが、実は簡単です(笑)22, 23歳くらいの時だったと思います。回路の勉強をしている際、先輩にこう言われました。
「コンデンサーは、信号の周波数によってインピーダンス(抵抗)が変わる性質のものだから、コンデンサーの記号を抵抗の記号に置き換えて、抵抗として回路を書き直してみると理解しやすいよ。」
そのあと、
「コンデンサーを抵抗に書き換えると、ほとんど抵抗ばかりの回路になってしまうから、あとは直列に繋がっている抵抗や並列に繋がっている抵抗は、1本にまとめてしまうと、回路としてはものすごくシンプルなものになる。」
と教わりました。電気回路を分かりやすくするために、有効なアドバイスだったと思います。もしご興味がある方は、是非やってみてください。

アンプ回路.jpg

(上の図をクリックすると大きなサイズの回路図を見る事ができます)
ざっと、回路についてご説明いたします。回路図の左側が信号の入力です。電気回路は、左側から右側に信号が流れるように回路が書かれています。Inputと書かれたジャックのマークにギターからの信号が入力され、その信号が回路に流れて行きます。
・クリーンチャンネルの信号は、「黄緑の矢印」
・ドライブチャンネルの信号は、「紫の矢印」
に分けて信号の流れを示しました。途中で信号が分かれて、異なるそれぞれの回路を通過します。その後、信号は合流します。
クリーンチャンネル側から、幾つのチューブ回路を通過したか見て行きましょう。
入力信号 > 逆① > 逆② > 逆⑤の手前で合流
逆相の回路を2つ通過しましたので、正相の状態で、信号が合流するポイントへ入ります。

次にドライブチャンネル側を見て行きます。
入力信号 > 逆① > 逆③ > 逆④ > 逆⑤の手前で合流
逆相の回路を3つ通過しましたので、逆相の状態で、信号が合流するポイントへ入ります。
ドライブチャンネルは、信号を歪ませるために、通過するチューブ回路がクリーン側より1つ多くなっています。このため逆相となる回路を奇数回通過することになり、逆相となって合流ポイントに入ることになったわけです。
結果的にこの回路では、クリーンチャンネルとドライブチャンネルは、位相が異なって出力されます。

楽器のアンプに頻繁に使用される代表的なプリ管(プリチューブ)は、12AX7(ECC83)です。この中には2回路分入っています。アンプの設計者は、サウンドの事だけでなく、できる限り効率良く、合理的にアンプを設計したいと考えます。真空管の数を減らすことができれば、電源トランスの容量を下げることができるため、トランスのサイズや重量を小さくすることができます。またアンプのスペースも小さくすることができます。コスト削減に直接、繋がります。逆相のチャンネルを正相に戻すためには、チューブ回路を1つ追加する必要がありますので、合理化とは逆の方向に進むことになります。私は、これが1つのネックになっていると考えています。
また、もう一つ大きな要素はサウンドです。私も以前、チューブアンプの設計をしていたので分かりますが、1つの真空管が増えることによって、サウンドキャラクターが想像以上に変化します。真空管の数、回路の数が増えれば増えるほど、音の「腰」「芯の強さ」が弱まり、「音が遠く」なるように感じました。もちろん比較して見ないと分からないくらいの差の場合もありましたが、設計者としてはより良いサウンドを提供したいと思っているわけです。位相のことはちょっと横に置いておいて、アンプ自体のサウンドを重視!という気持ちが、痛いほど分かります。私のようなシステム設計をする立場の技術者としては、アンプ設計者の気持ちを汲み取り、弱点は補い、より良いサウンドシステムを組み上げる事が重要だと思っています。私が位相切替機能付きのARC-4を開発したり、位相切替機器の開発をしているのも、ご理解いただけるのではないかと思います。

チャンネル毎に位相が異なるから、使えないとか否定的な方向では無く、気に入ったサウンドが出るアンプの弱点も受け入れて、その弱点を補いながら自分独自のシステムを構築していくのも楽しい事だと思います。このブログを参考にしていただけると幸いです。

位相のシリーズは、今回で一旦終了です。また、新たな情報が出てきましたら、ご案内したいと思います。

次回からは、私がイギリス在住の技術者Pete Cornishの元で修行していた時に書いていた日記をご紹介しようと思います。すでに18年近く前の話ですが、これから技術者を目指すための方にもお役に立つ内容だと思いますので、是非楽しみにしていてください。

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楽器の位相について(6) 〜エフェクターの逆相ついて〜 [技術]

今回はエフェクターの逆相ついてについてです。

エフェクターの中で、逆相(逆位相)になることで良く知られているものは、ワウやコンプ、ブースターなどがあります。でもちょっと待ってください。全てのワウ、コンプ、ブースターが逆相になるわけではありません。回路によって異なります。正相(入力した信号と同位相)で出力する物も存在します。
例えば、Wahで有名なJenのCry Babyやコンプで有名なMXRのDynaCompは逆相で出力します。回路の規模を少しでも小さくするために(小型化するために)、逆相出力のままにしたのか、、、、、それとも正相のタイプと逆相のタイプを比較して、逆相のタイプを選択したのか、、、、、。叶うなら当時の設計者に聞いてみたい内容です。

楽器の位相について(2) 〜位相と周波数〜にも書きましたが、周波数の高い信号は、波長が短いため位相の影響を受けにくくなります。ギターやベースに当てはめると、高い音程(フレットのハイポジションの音など)は位相の影響を受けにくいということになります。ギターのソロプレイやカッティングなどは、位相の問題が起こりにくいわけです。かといって影響が無いわけではありません。ワウの位相を反転して、バンドサウンドの中で、正相と逆相のサウンドを比較してみると、明らかに音色(聞こえ方)が変わります。ここまで来ると好みの世界とも言えます。ワウペダルを他の種類に変える方法もありますが、位相をひっくり返してみるのも、音作りの手法の一つです。

一方、ギターの5、6弦、やベースなど、音程の低い音は、位相の影響を受けやすくなります。例えばヘビーなギターのリフとベースの音が逆相だった場合、音の出るタイミングによって、音が出たり引っ込んだりを繰り返すため、キレの悪い演奏になってしまいます。私には演奏が変わってしまったように聞こえます。ドラムとベースの場合、例えばキックとベースのリズムが周波数の半周期分、ズレた方が、それぞれの音が聞こえやすくなるという現象が現れてもおかしくありません。低音域を扱うベースは、ドラムとの位相と密接な関係があり、さらにそれは音を出すタイミングで変化するものなので、本当に難しい楽器なんだろうなと思います。私はバンドでベースを弾いたことがないので、どれほど難しいか分かってません(汗)ドラムとの位相関係を複雑にしないためにも、ベースの位相は、常に変化しないのが良いと考えています。

ここで、少し電気的なお話を。エフェクターは電気回路で構成されています。位相を反転させるエフェクターが存在するのも内部に電気回路が入っているからです。ネットを調べると、エフェクターの回路図が沢山見つかりますので、位相が正相で出力する回路なのか、逆相で出力する回路なのか調べてみるのも面白いです。

バイアス回路などを省いて簡素化した、トランジスタと真空管の回路を図に書きました。それぞれ入力信号に対して、どのような位相で出力するのかも書きましたのでご覧ください。信号を取り出す場所によって、信号の位相が変わります。

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トランジスタや真空管の基本動作として、
・ゲインを上げる(音量を上げる)動作をさせたい時は、位相が反転する回路を使用します。(図2と図4)

・信号のインピーダンスを下げる動作をさせたい時は、位相が同相(正相)になる回路を使用します。(図1と図3)

信号のインピーダンスを下げたい場合というとバッファー回路が頭に浮かぶと思います。そうです、バッファー回路をトランジスタや真空管で作る時は、位相反転せずに作ることができます。ブースターやオーバードライブなど、ゲインやレベルを上げたい場合は、位相が反転する回路を使用する必要があるので、どうしても位相が反転してしまうのです。ちなみに、位相が反転する回路が2個(もしくは偶数倍)あると、位相は元の位相(正相)に戻ります。設計者の思想によって、位相をどのように捉えているか、想像するのも楽しいです。特に私は1960年代に生まれたエフェクターの回路を見るたびに、設計者は何を考えながら設計図を書き、パーツを決めて行ったんだろう、と考えます。回路図は設計者にとって、絵画のようであったり、小説のようであったりします。貴重な財産です。

3月27日に、フリーザトーンからPHASE ANALYZERを発売いたしました。エフェクターやアンプの位相(極性)を簡単に測定することができます。ご興味ございましたら、チェックしてみていただけると幸いです。バッテリー駆動もできますので便利です。リハーサルスタジオで使っているアンプの位相をチェックしてみても良いですね。いつも使用しているギターアンプとベースアンプ、両方のアンプの位相を知るのは重要だと思います。

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次回は、アンプの逆相についてお話ししようと思います。
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楽器の位相について(5) 〜エフェクターと測定方法について〜 [技術]

今回はエフェクターと測定方法についてです。

エフェクターは本当に様々で、使用されている電気回路によって位相も変化します。
測定の手法が異なることで、話が食い違う場合も出てくるかもしれませんので、測定方法について少しご説明いたします。エフェクターの位相については、測定する場合、大きく分けて2つあります。

(1) 時間軸を考慮しないで、波形の向き(極性:ポラリティ)を測定する場合
電気的にプラス側からスタートするテスト信号をエフェクターに入力します。エフェクターからプラス側からスタートする波形が出力すれば、位相は正相が出力すると言えます。この場合、極性(ポラリティ)はプラス(+)側です。
例え波形が出力するタイミングが遅れたとしても、プラス側からスタートする波形が出力すれば、エフェクターとしては、同位相の信号を出力するわけですので、正相の信号を出力したことになります。
あくまで信号の波形の向きを調べていて、時間軸は無視しています。そのため、極性(ポラリティ)がプラス、もしくはマイナスという言い方をします。
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(2)時間軸を基準にした位相測定
時間軸を基準に位相を測定する場合は、入力した信号と出力した信号を同時間で比較し、位相を測定します。一番わかりやすい例としては、テスト信号の山の部分と、エフェクターから出力する波形の山が一致すれば、正相で出力していると判断します。逆に、テスト信号の山の部分と、エフェクターから出力する波形の谷が一致している場合は、逆相で出力していると判断します。

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時間軸を基準に、位相を測定する際に困ることがあります。テスト信号の山の頂点とエフェクターから出力する波形の山の頂点がピッタリ一致せず、ほとんどの場合、少しずれているからです。例えば、FUZZペダルは、微弱な信号でも大きく増幅するため入力波形が崩れてしまいます。元々あった頂点の場所は、どこにあるのかよく分からなくなってしまいます。このような場合は、FUZZのGAINを下げ、増幅率を下げて測定してみます。テスト波形に形状が近くなれば近くなるほど、位相の測定はし易くなります。

時間軸を基準にすると位相の測定ができないエフェクターもあります。
例えばコーラスやフェイザーのような、常時位相を変化させているエフェクターです。ある時は正相、ある時は逆相、ある時は90度位相ずれなど、掴みどころがありません(笑)
時間軸を基準にして位相が測定できないコーラスやフェイザーですが、前述の極性は測ることができます。

そして信号処理をデジタルで行なっているエフェクターも、位相の測定に困るエフェクターです。AD/ADコンバーターを経由する時間や、演算処理の時間が必要なので、デジタルエフェクターでは音の遅延が発生します。時間軸を基準とすると、入力信号に対して位相がずれた状態になります。デジタルエフェクターも極性は測ることができます。

極性がプラスのエフェクターでも遅延が発生していると、結果として位相はどうなるの?という疑問が湧くと思います。入力信号に対して、出力信号が遅延しているということは、位相がずれているということになりますが、どれくらい遅延時間が発生しているのかによって、どれくらい位相がずれるのかが変わります。入力信号と、デジタルエフェクターを通過した音(例えば、デジタルEQでほんの少しエフェクト処理した信号など)をミックスしてみましょう。どんな音になるか試して見るのも面白いと思います。ProToolsなどをお持ちの方は、何サンプルくらいエフェクト音が遅延するのかチェックして見るのも良いと思います。

次回は、エフェクターの逆相についてお話ししようとお思います。
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楽器の位相について(4) 〜ギターやベースについて補足と楽器用アンプ〜 [技術]

今回は楽器用アンプの位相についてです。

本題に入る前に少し、前回の補足的なお話を。
前回、ギターやベースの位相についてお話ししました。楽器自体や奏法で、出力する信号が正相(極性としては電気的にプラス側から信号がスタート)なのか、逆相(電気的にマイナス側から信号がスタート)なのか変化しますとお伝えしましたが、やはり自分の楽器がどちらなのか気になる方もいらっしゃると思います。その場合は、ProToolsなどに直接、ギターやベースの波形を録音して取り込んでみてください。そして波形を拡大して自分が弾いた音がプラス側から振れているのか、逆にマイナス側から振れているのかチェックしてみてください。弦のひっぱり方(ピッキングによって)波形の立ち上がりが変化します。非常に興味深いと思いますので、是非、録音した波形が確認できるツールをお持ちの方はやってみてください。弦を上下(天地方向)に揺らすだけでなく、左右に揺らした時の波形もどうなるか、円を描くように揺らした時どうなるか、、、なども実験して見ると面白いと思います。
リア側のピックアップで弦を鳴らした時と、フロント側で鳴らした時の違い。
Jazz Bassで鳴らし時とPrecision Bassで鳴らしたときの違い。
ピック弾きと指弾きでの違いなどなど、、、、比べて見ると面白い内容が沢山あると思います。
このギターやこのベースで、こんな風に弾くと、信号としてこのように出力するんだな、、、ということが分かっていると、演奏に応用が効くこともあると思います。

さて今日の本題に入りたいと思います。
エレクトリックギターやエレクトリックベース用のアンプは、真空管式の物からデジタル技術を駆使した物まで多種多様です。楽器用のアンプは、位相という面から見ると、そこにとらわれることなく製作されています。入力した信号に対して、同じ位相(正位相や正相とも言う)で出力するアンプもありますし、入力信号に対して逆の位相(逆位相や逆相とも言う)で出力するアンプもあります。ギターアンプで多々見られますが、使用するチャンネルによって、正相であったり逆相であったりします。ベースアンプでも逆相で出力する物もあります。練習スタジオに置いてあるアンプが変わるだけで、位相が変わると言うこともあり得るわけです。これは困った状況です。

ライブやレコーディングの時、エンジニアの方は、ドラムのキックの音に対してベースの音が正相になるように位相を決めます。マイクやDIを通した音は、逆相スイッチで簡単に位相を逆にすることができますし、マイクの位置を動かすことで、位相を合わせることができます。デジタルミキサーを使用している場合は、入力波形を少し遅らせることで調整する場合もあります。
ところがステージやリハーサルスタジオ内で演奏される楽器の位相は、用意されている楽器の位相がそのまま出力していますので、一般的に位相を変えることができません。

実際にあった例をご紹介いたします。あるボーカルの方が、リハーサルに用意した新しいアンプは、素晴らしいサウンドを持ったアンプでした。音の調整が終わって、バンド全体のリハーサルが始まると、そのサウンドは聞こえにくくなり、音量を上げてもトーンの調整をしても、単体で弾いた時のパンチのあるサウンドを再現することができませんでした。アンプの故障?なのか。しかしアンプの動作は正常で、その日は、原因不明のままリハーサルが終了しました。
その後、スタッフの方が持っていたA/B BOXに逆相スイッチが付いていることに気付き、そのA/B BOXを通してからアンプを鳴らしました。逆位相にした途端、バンド演奏の中で、素晴らしいアンプサウンドが聞こえるようになったのです。結論をいうと、このギターアンプの位相は、ベースアンプの位相と逆位相の関係でした。ベースアンプの近くに、このギターアンプが置かれていたため、音を打ち消しあう関係となっていた訳です。リハーサルスタジオで、このような経験をされた事はないでしょうか?このアンプ「音が抜けないなぁ」と感じた場合、もしかすると位相の問題かもしれません。

このような実体験を元に、逆相にする機材の必要性を感じました。せっかく気に入った機材が、位相の関係で良くなかったという結果になってしまうのは、本当に残念な事だと思いますので。

ここで少しデジタルアンプのお話をしたいと思います。デジタル技術の飛躍的な発展で、アンプの世界もデジタル製品が多くなりました。デジタルエフェクターも同様ですが、デジタル製品を信号が通過するには時間がかかります。製品によってその時間は変化しますが、数msec遅れるものが多いようです。これは、アナログ信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を演算処理(数字上で加工する)するために時間がかかるからです。デジタルの処理速度は、ディバイスの進化とともにどんどん早くなっていて、処理速度が早くなれば音の遅れも少なくなります。今後も更に処理速度が上がって行くと思いますので、どこまで早くなるのか楽しみです。

次回は、エフェクターの位相についてお話ししようとお思います。
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楽器の位相について(3) 〜ギターやベース〜 [技術]

今回はギターやベースの位相についてです。

皆様がご存知の通りエレクトリックギターやエレクトリックベースには、コイルと磁石を使ったピックアップが、弦の下にマウントされています。磁性体の弦が揺れることによって微小ながらピックアップに電気信号が流れ、この電気信号がシールドを伝って、接続されたエフェクターやアンプに流れます。

ギターやベースのピックアップに使用されている磁石には、ご存知の通り、S極とN極があります。ピックアップに使われている磁石のS極とN極を入れ替えると、電流の流れる方向が逆になります。
また、コイルとして巻かれるワイヤーにも、「巻く向き」があります。ワイヤーを巻く向きを変えても電流の流れる方向が逆になります。

ギターやベースの製造メーカーや、ピックアップ製造メーカーは、これら磁石の向きやコイルの極性を管理した上で製造しているわけです。ピックアップをご自身で交換した方は、ご存知だと思いますが、ピックアップから出ているワイヤーの被覆には色が付いていて、ピックアップの極性を間違って逆に配線しないように工夫しています。ハムバッカータイプのピックアップは、最初から一芯シールド線がピックアップから出ていて、配線し易くなっているものも多数あります。

少し長々と説明してしまいましたが、ピックアップは、磁石の極性やコイルの極性を変えることで、電流の流れる方向が変わる特性を持っています。ということは、ピックアップにも位相(極性)があるということになります。

先にピックアップ側から説明しましたが、今度はギターやベースの弦側からご説明します。
ピックアップの上を弦が行ったり来たりすることで、微弱な電流が生じコイルに電流が流れるわけですが、弦がピックアップに対して、下に動いた時と上に動いた時では、電流の流れる向きが異なります。ピックアップに対して弦が上下に振動することで、電流の流れる向きが変化する信号が生まれます。
もうお気付きだと思いますが、弦をピックで弾く方向を変化させるだけで、信号の位相(極性)が変わります。
ピッキングが音色を変化させる重要な要素の一つですが、ピッキングによって位相も変化させることができるのです。

こうなってくると、ギターやベースの位相が正位相で出力するのか、逆相で出力するのか分からなくなってきますよね。これは私の個人的な見解ですが、ギターやベースから出力するのは、どのような位相であっても良いと思います。演奏家は、耳を使って、ピックアップを選択し、ピッキング方法を変化させ、良いトーンを得られるように工夫します。位相は使用している楽器、奏法とも密接な関係があります。

次回は、楽器用アンプの位相についてお話ししようとお思います。
タグ:楽器 位相
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楽器の位相について(2) 〜位相と周波数〜 [技術]

今回は位相と周波数(音の高低)についてです。

周波数の話をする前に、位相の基本的な現象について少し触れます。
・同じ音が2つ、同じ位相(同位相)で出ているとき、音の音量が上がります。
・同じ音が2つ、片側は正相、片側が逆相で出ているとき、音量が下がります。
位相という言葉を使うと分かりにくいと思いますので、別の例えで言い換えてみます。

海や大きな湖などで見ることができる波を思い浮かべてみてください。波と波が重なる時、大きく山なりに盛り上がる場所と、逆に谷となって沈みこむ場所や平になる場所があります。山なりの場所は、同相(この場合は正相と正相)が重なった場所。平らになった場所は正相と逆相が足されて、打ち消しあった場所。谷となった場所は、逆相同士が重なった場所。このように考えると分かりやすいのではないかと思います。

波でも想像しにくい場合は、少し飛躍してしまいますが、ブランコを想像してみてください。ブランコが進もうとする方向に力を加えると(乗っている人の背中を押すと)進もうとする方向にさらに勢いがつきます。これが同相の2つの音が加わった場合のイメージです。
ブランコが進もうとする方向と逆に引っ張ろうとしたり、地面を足ですってブレーキをかけると、ブランコのスピードが落ちます。これがある音(正相)に対して逆相の音が加わった時のイメージです。

次に「周波数」という言葉を絡めてお話を進めます。周波数という言葉に馴染みが無い方もいらっしゃるかもしれません。音の高低を表す際に使用する言葉ですが、「周波数が高い」とは音が高いという意味で「周波数が低い」とは音が低いという意味です。(大雑把な言い方ですが)ピッチが高い、ピッチが低いと言い換えることもできます。

位相を分かりにくく複雑にする原因の一つが、この「周波数」によって変わる「波長」です。
波長は言葉の通り波の長さです。例えば、ギターの基準音の440Hzは、波の長さ(1周期)が約77cmです。(音速340m/Sとして440Hzでは、340/440=約77cmなので波長が77cm) ということは、77cmごとに波の「山」があり、山と山のちょうど半分の所に「谷」が発生するということになります。この「山」を基準とすると、谷の部分が「逆位相(逆相)」となります。人間の耳に聞こえる低い周波数の限界が20Hzと言われていますが、20Hzの信号を伝えるためには、約17mの距離が必要となります。17mって凄く長いですよね?(笑)

さらにさらに困るのが、低音域ほど空気を伝わるスピードが遅くなるという事実です。広い場所で、「せーの!」で金属の高い音と、バスドラの低い音を「同時」に出したとします。かなり離れた場所で音を聞いていたとすると金属の音が早く聞こえ、そのあとにバスドラの低い音が聞こえるわけです。

波長が長く、伝わるスピードが遅い低音域ほど、扱いにくいという訳です。さらに波長が長いため、人間の耳には、低い音であればあるほど、どこから音が出ているのか把握しずらくなります。この特性を利用したのがサブウーファーです。サブウーファーの設置場所は思ったほど厳密ではありませんし、一般的な部屋で使用するサブウーファーは1個で、ステレオペアで無いのはこのためです。

前回、正相と逆相の話をいたしましたが、音が低い音ほど波長が長いため逆相の影響を受けやすくなります。例えば、ドラムのキックの音や、ベースの音、ギターの巻弦側の低音域などが影響を受けやすくなります。逆に、音が高い音ほど逆相の影響を受けにくくなります。ギターソロでハイポジションをプレイしている時などは逆相の影響を受けにくいということになります。

・低音域は、位相の影響を受けやすい。
・高音域は、位相の影響を受けにくい。
位相を理解するために、周波数(波長)についても考慮が必要と感じて頂ければ幸いです。

次回は、ギターやベースの位相についてお話ししようとお思います。


タグ:位相
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楽器の位相について(1) 〜プロローグ的〜 [技術]

2011年頃、位相について発生する現象や問題点について、少しブログに書きましたが、その後、位相についての話題が尻窄みになってしまいました。今年、PHASE ANALYZERという位相を簡単に判定できる測定ツールの開発が終わり、フリーザトーンから3月27日に発売となります。これをきっかけに、再び位相について話をしてみようと思います。お付き合いいただけると幸いです。

下記は、2011年に書き始めた位相についてのお話。合わせてお読みいただけると幸いです。
楽器の位相問題について(1)
楽器の位相問題について(2)

基本的に人間の耳は、位相に対して鈍感です。例えば、ギター単体の音を聞いて、この音が正相(正位相)だ、この音は逆相(逆位相)だ、と判断できる方は多くないでしょう。逆にある音と比較して、正相だ、逆相だと聞き分けることは比較的簡単です。音質比較と同様に、位相も比較すると分かりやすいわけです。

実は逆相の音は、様々なケースで利用されています。例えばイヤホンで音楽や映画の音声を聞いている時、後方から何かの音がなっているように聞こえる場合があります。これは逆相を利用している例です。

ギターのアンプメーカーで有名なFenderやMatchlessというブランドがありますが、逆相で出力するモデルやアンプチャンネルが多く、狙ったサウンドを優先して設計した結果、逆相を選択しているのではないかと思われます。試しに、逆位相のアンプのスピーカーのプラスとマイナスを入れ替えて接続し、音を鳴らしてみてください。私の主観になりますが、正相にした方が「ミッドに張り」があるサウンドに聞こえます。今までカッティングやアルペジオに向いているサウンドが、リフを弾くのに適した感じのサウンドになる、という感じでしょうか。表現が難しいのですが、イメージとしてそのような感じです。元々のサンドとは異なるサウンドに聞こえます。
(*位相を変えるために機材を間に挟むと、その機材のサウンドが加味されるため、音の比較では追加機材を使用せず、スピーカーのプラスとマイナスを入れ替えてサウンドチェックしました。)

20年以上前に、レコーディングエンジニアの方から聞いた話をご紹介しようと思います。
レコードが主流だった時代、レコードを作るためにはカッティングという工程が必要でした。複数のレコードを生産するための、元になるレコード盤を作る作業と思ってください。このカッティング作業をスムーズに行うためには、低音域の処理が非常に重要になると聞きました。レコードの溝を切るのがカッティング工程ですが、レコードの溝の幅は、最大幅が決まっています。幅の制限を越えると、隣の溝まではみ出て切ってしますから(笑)周波数が低く、振幅(レベル)が大きい信号ほど、深くさらに幅をとってカットする必要があります。マスタリングである程度の振幅調整がされたとしても、カッティングにマッチしているかどうかは分かりません。このため、フェアチャイルドのようなステレオコンプがカッティング作業で必要だったわけです。低音域のレベルを抑えて、溝の幅が規定値を超えないように押さえていたわけです。(昔のレコードを聞くと、低音域のレベルが、CDとは比べ物にならないくらい低いですよね。)
そして、低音域のレベルの話だけではなく、逆位相の話が続きます。レコードのカッティング作業では、逆位相の音をある一定以上のレベルで入れると、針飛びが生じるというのです。仮にカッティング作業で逆位相のサウンドが溝に加工できたとしても、一般のレコードプレーヤーでは針飛びすると聞きました。逆位相の音はレコード針の針飛びを引き起こす。 物理的な波形ではなく、データを使用したCDでは起こり得ない現象です。なぜ針飛びが発生するかは、専門の文献に譲るとして、逆位相をマスタリングされた音源に極力入れないと言うことが重要だったことが分かります。買ったレコードが針飛びして、曲が途中でスキップしてしまうのは困りますよねw

このようにレコードが主流だった時代、逆位相はNGだったわけです。
ところがCDが主流になると、皆様がご存知のように大きく変化が訪れます。レコードという物理的な制限からデータに移行し、制限が少なくなって行きます。

逆位相は基本NGだった時代、逆位相の楽器をどうやってレコーディングしていたの?と疑問に思う方も多いと思います。実は古いミキシングコンソールにも位相計が装備されていて位相が正相なのか逆相なのかわかるようになっていました。SSLには位相を見るためのリサージュと呼ばれる位相計が付いていますが、古いNEVEのようなレコーディング用コンソールには、針のメーターでセンターより右が正相、左が逆相となる位相計が付いていました。そしてミキサーのマイクプリアンプセクションには、位相を逆位相にするスイッチが必ず付いていました。レコード時代は耳を使って物理的にマイクの位置をずらしたり、マイクプリで位相を逆にしたりする事で位相をコントロールしていたわけです。

次回は、位相の話を難しくする周波数や距離との関係についてお話ししようと思います。

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『ギタリストとベーシストのためのシステム構築マニュアル』を出版します! [技術]

帯あり-721x1024.jpgブログに本でも書くか、と独り言を書き込んだ事で始まった執筆活動。一年近くかけてリットーミュージックから出版することになりました。

タイトルは『ギタリストとベーシストのためのシステム構築マニュアル』。あったら自分で買いたいくらいの内容です(笑)。若い頃は、こんな本があったらな〜とずっと思っていて、洋書も含めて探しても見つかりません。まさか、自分が書く事になるとは思ってもみませんでした。

できる限り、わかり易く実例を挙げて書きました。この本を読んで、自分でペダルボードを組んでみようかな、とか、ちょっと手直しをしてみるか、とか何か行動を起こすきっかけになればいいなと思っています。もちろんシステムは人それぞれで全く異なりますので、自分の方法を探して行くことになりますが、その入り口にして頂ければ幸いです。

この本を出版するにあたり、布袋寅泰さんからコメントをいただきました。自分の音を追求してこられたからこそ言える深い言葉だと感じました。是非、読んでみてください。

どんなにいいプレイでも音が良くなければ人には伝わらない。どんなに音が良くてもプレイが悪ければまた人には伝わらない。もちろん、良い音とはプレイヤーがその指と心で探し奏でるものだが、それを忠実に、いや、それ以上に増幅させて空気を震わすのは、ギターからアンプに届くまでの過程(システム)にかかっている。「ギターから直に繋いでアンプで鳴らす」という言い方はいかにも純度の高いリアルな音を想像させるが、実際はそこに行き着くまでの電気信号をよく理解しコントロールすることにより、さらなるピュアなサウンドを手に入れる事が出来るのだ。 僕は長年に渡り自分だけの音にこだわってきたつもりだ。誰の音とも違う、「布袋寅泰」の音。それは歪みすぎず、乾きすぎず、伸びすぎず、短すぎず、甘すぎず、硬すぎず、言葉するのは非常に難しいが、右手でギターをヒットするときの感触をそのままアンプに伝えること。自分以上の音になってはいけない。自分の未熟さ、つたなさ、もどかしさこそがアイデンティティーであり、自分のギターに陶酔しない事が大事だ。僕はシステムに頼っていない。頼ってしまうとギターを弾く意味がない。しかしシステムを信頼している。いい音が出ないのをシステムのせいにしてはプロではない。 僕を実験台にして、より良いシステムを探求してほしい。僕のスタイルは死ぬまで変わらないので、実験台には最適だと思う。 レーサーは一人。そして勝利のゴールは多くの協力者たちと分かち合うためにあると思っている。 ――布袋寅泰


『ギタリストとベーシストのためのシステム構築マニュアル』
【CONTENTS】
■第1章 システム構築の基礎知識
◎1.音の信号について
◎2.インピーダンスと信号の劣化
◎3.エフェクターのバイパス方式
◎4.信号の位相による音の変化
◎5.ノイズについて
◎6.電源について

■第2章 システム構築の概要
◎1.システム全体の構想
◎2.ペダル・ボード製作の注意点
◎3.ラック・システム製作の注意点

■第3章 システム構築の実例
◎光村龍哉(NICO Touches the Walls)~手狭になったペダル・ボードの組み直し
◎Ju-ken~ベース用ペダル・ボードのオーバーホール
◎布袋寅泰~シンプルかつ実用的なペダル・ボードの新規製作
◎SUGIZO~ラックや複数のアンプを含む大規模なシステム

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ペダルエフェクターの問題(分解して塗装剥ぐのは大変) [技術]

今回は、ペダルボード組みする際、困るなぁという内容に触れたいと思います。
エフェクターを輸入している代理店の方やメーカーの方には是非読んでいただきたい内容です。

塗装2.JPGペダルボードにエフェクターを組み込む作業をする時、ほぼ必ず行う作業があります。それはエフェクターをいったんバラバラにして、シャーシの塗装を剥がす作業です。特に輸入品のエフェクターに多いのですが、塗装が厚く塗ってあるため、シャーシにパーツのグランドが落ちていない(導通がない)物が年々増えてきています。

プロビデンスやBOSSや昔のMXRの内部を見て頂ければ分かり易いのですが、ボトムプレートを開けた時、内部は塗装されておらず、金属部がむき出しになっています。これは、ジャックやポット(ボリューム)などのパーツの金属部をシャーシに接触するように組み立てし、ノイズに強い状態を作るためです。ところが、内部を塗装しない状態にし、外側だけ塗装するには、ある程度の工夫と技術が必要になり、コストがアップします。その為か、内部までご丁寧に塗装しているエフェクターがどんどん増えています。結果、入出力ジャックがシャーシに落ちていないエフェクターや、ポットのダイキャスト部(ハウジング部)がシャーシに接触していないエフェクターが市場に流通しています。
ジャック部.JPGこの写真はエフェクターの内部を撮影したものですが、穴の周りに爪の様な跡がいくつもついているのがお分かりになるとおもいます。これはシャーシとジャックをしっかり導通させ、かつジャックがゆるんで回転してしまうのを防止する役割をする菊ワッシャと呼ばれるパーツの爪跡です。ところが、塗装が厚いため、シャーシに食い込む事が出来ず、導通がない状態でした。

これらのエフェクターは単体でチェックしたり、小さな音では気付きにくいのですが、システムとして構成されたり、大きな音で使用された時に問題が発覚します。
例えば、オーバードライブのレベルやゲインを調整しようと手を近づけた時に、ブーンというハムノイズが出た事はないでしょうか?これは、ポットのダイキャスト部(ハウジング部)がシャーシに接触していない為に起こる現象です。これらの問題を解決するには、いったんばらばらにして、シャーシの塗装を削り落とすしかありません。以外に時間のかかる作業です。

塗装.JPGこれはボトムシャーシを止めるためのネジが通る穴の写真です。これも塗装が厚い為、トップシャーシとボトムシャーシをネジで止めてもシャーシ同士の導通がありませんでした。

このような場合は、ヤスリ等で削り導通するようにしてあげるしかありません。導通が無いと言う事は、裏ブタを閉めずに開けたままの状態で使用しているようなものです。ノイズが乗らない方が変です(苦笑)。

細かい事かもしれませんが、このような問題点を一つ一つ潰していく事で、S/Nの良いペダルボードに仕上げていく事ができます。ライブ会場では、照明・映像機材等が張り巡らされていてノイズの海の中にいるような物です。回路にノイズが乗らないようにシャーシでシールドすべき部分がシールドされていなかったとすると、、、、、結果は見えていますよね。

テスターをお持ちの方は抵抗レンジにして導通をチェックすることができますので、やってみてください。
メーカーさんや代理店の方には、是非点検をしていただき、問題があった場合は改善をお願いしたいです!!!

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電源ケーブル変えてみた方が良い?! [技術]

PowerC-PWI.jpg楽器のシステムを製作してる際には、信号用のケーブルだけでなく電源ケーブルに関しても注意を払っています。電源ケーブルを変えると、確かにサウンドが変わります。エレクトリック・インスツルメンツのエネルギー源はコンセント(アウトレット)から供給される電源(AC100V商用電源)です。電源を供給するラインの質によってサウンドが変わるわけです。
電源ケーブルを交換してみようという方は多いと思います。これから説明する内容が皆さんの参考になれば幸いです。

オーディオのアンプではなく、楽器用のアンプ、特に真空管アンプを使用する際の電源ケーブルについての質問が多く、「アンプの電源ケーブルは変えた方が音が良くなりますか?」、「お薦めの電源ケーブルはありますか?」という質問をよく受けます。また、「電源ケーブルを変えたらヒューズが飛びやすくなった気がするのですが、そんな事はありますか?」という質問もありました。

実際にヒューズが飛び易くなるのでしょうか?
アンプのヒューズの定格(ヒューズの種類や値など)は添付された電源ケーブルを使用してメーカー側で決めています。電源ケーブルも極端に言うと抵抗です。電流を流すとその抵抗値に応じて、電圧が下がります。アンプの音量を上げ、大音量でプレイしたり、継続して大きな音を出し続けた時、アンプには大きな電流が流れます。その分、電源ケーブルの持つ抵抗成分によってトランスの一次側に供給される電圧が下がります。例えば、練習スタジオの壁に付いているコンセント(アウトレット)にAC100Vが出ていたとしても、電源ケーブルを通過して、電源トランスに届くまでに5V位下がってAC95V位になっていることは普通に起こっています。こたつやホットプレートの電源ケーブルが熱くなっている事がありますよね。電源ケーブルの抵抗成分が電力を消費して熱くなっているのです。

高級な電源ケーブルを使用すると、この抵抗成分が小さいため大音量で鳴らしても電圧の低下が小さくなります。これは供給側の電圧を持ち上げたのと同じ状態とも考えられます。電圧の低下が少ないため最大出力が上がります。このように考えていくと、アンプの最大出力が上がり、メーカー側が想定していた電流より大きく流れるためにヒューズが飛び易くなるというケースが考えられます。

どのメーカーのアンプのヒューズが飛び易いか探って行った所、ヒューズの値を小さくぎりぎりに設定しているアンプのヒューズが飛び易くなっていることが分かりました。ヒューズの値にどれくらい余裕があるかどうかなんて普通はわからないですよね。ただ、ヒューズが飛んだからといってアンプの内部回路を壊してしまったり痛めてしまったりと言う事は、今までの経験上ありません。

話を少しもどして、アンプの最大出力が上がると言う事は、音量が上がって聞こえます。
人間の耳は音量の大きい方が音が良くなったと感じる傾向があります。
電源ケーブルを高級品に変えると音圧が上がり音が良くなったように聞こえるのは確かです。

音楽的に高級電源ケーブルに変えない方がいいのではないかと思っている内容があります。私は電源ケーブルがチューブアンプのナチュラル・コンプレッション・サウンドを生み出す重要な要素だと考えています。例えば古いブラックフェイスのFenderのPrinstonアンプは日本と同じ2芯の平行線タイプの電源ケーブルが付いています。これを細いからといって太いケーブルにすると、Prinstonアンプの持つ良さが失われてしまったと感じます。

アンプには回路の持つダイナミックレンジの制限によるリミッター性能があります。ある一定以上の音量を入力すると、回路のダイナミックレンジの制限により、クリッピングという現象(歪み)が発生します。チューブアンプは偶数次の倍音成分が多く含まれる歪んだ音(ディストーションサウンド)となる為、耳に優しい心地よいディストーションサウンドが生まれます。

またアンプの設計によって程度が変わりますが、電源電圧の変化によるコンプレッション/リミッター効果があります。音量が上がると共に供給される電源電圧が下がりダイナミックレンジが狭くなり、また電圧低下が継続した場合、最大出力が低下します。コンプレッション/リミッターが効くわけです。弦を弾いた瞬間は大きな信号が入力され大きな音量となりますが、そのあと弦の振動は減衰し、アンプへの信号は小さくなります。その後は電源電圧が上がりコンプレッション/リミッター作用が緩和されます。弦をヒットした後、アンプ全体でコンプレッション/リミッターを働かせているようなイメージです。

これら二つのコンプレッション/リミッター作用がチューブアンプサウンドの心地よさ、プレイして気持ち良いと感じさせる重要な要素だと考えています。Prinstonアンプの持つ良さが失われてしまったと感じてしまうのは、コンプレッション/リミッターの作用が変わってしまったからだと考えています。あくまで私の主観的な考えです。好みもありますので、ケーブルを太くして良くなった!と感じる方もたくさんいらっしゃると思います。

一方で反応が悪いアンプの場合、電源ケーブルを良質な電源ケーブルに変えて改善を狙う手法もあります。ピッキングニュアンスや表現力をより上げる為に供給する電源の能力を上げることで好みのニュアンスを得る事ができる場合もあります。

以上、ヒューズとコンプレッション/リミッター作用の二点について述べてきましたが、他の観点から見ると良質な高級電源ケーブルを使用するメリットがまだまだあると思います。高級電源ケーブルを使用することを否定しているわけではありませんので、念のため明記しておきます。ただ、多くの高級電源ケーブルは太すぎて、取り回ししにくいのが難です。あと、少し触ったらケーブルの重みで抜けて落ちた経験があります。それ以来、ちょっと自分的にはイメージが悪いです(苦笑)。

私が推奨する電源ケーブルは、AWG16の電源ケーブルです。AWG18の電源ケーブルが添付されていることが多いと思いますが、今までの経験で言いますとAWG16の電源ケーブルで良い結果が出ています。
AWGというのはAmerican Wire Gaugeの略で数字が小さくなればなるほど太いケーブルとなります。AWG16の方がAWG18より太いケーブルです。

楽器用アンプの電源ケーブルではなく、Pro Toolsやデジタルミキサー関係の電源ケーブルを高級品に変えたらサウンドの透明度や奥行き感が飛躍的良くなったという話も聞きます。電源ケーブルもサウンド作りをするシステムの中で重要なファクターです。ギター/ベース用のケーブルを変えて音が変わることを利用しながらサウンドメイキングをするように電源ケーブルでもトライしてみる事は大切で貴重で興味深い経験になると思います。

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