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楽器の位相について(4) 〜ギターやベースについて補足と楽器用アンプ〜 [技術]

今回は楽器用アンプの位相についてです。

本題に入る前に少し、前回の補足的なお話を。
前回、ギターやベースの位相についてお話ししました。楽器自体や奏法で、出力する信号が正相(極性としては電気的にプラス側から信号がスタート)なのか、逆相(電気的にマイナス側から信号がスタート)なのか変化しますとお伝えしましたが、やはり自分の楽器がどちらなのか気になる方もいらっしゃると思います。その場合は、ProToolsなどに直接、ギターやベースの波形を録音して取り込んでみてください。そして波形を拡大して自分が弾いた音がプラス側から振れているのか、逆にマイナス側から振れているのかチェックしてみてください。弦のひっぱり方(ピッキングによって)波形の立ち上がりが変化します。非常に興味深いと思いますので、是非、録音した波形が確認できるツールをお持ちの方はやってみてください。弦を上下(天地方向)に揺らすだけでなく、左右に揺らした時の波形もどうなるか、円を描くように揺らした時どうなるか、、、なども実験して見ると面白いと思います。
リア側のピックアップで弦を鳴らした時と、フロント側で鳴らした時の違い。
Jazz Bassで鳴らし時とPrecision Bassで鳴らしたときの違い。
ピック弾きと指弾きでの違いなどなど、、、、比べて見ると面白い内容が沢山あると思います。
このギターやこのベースで、こんな風に弾くと、信号としてこのように出力するんだな、、、ということが分かっていると、演奏に応用が効くこともあると思います。

さて今日の本題に入りたいと思います。
エレクトリックギターやエレクトリックベース用のアンプは、真空管式の物からデジタル技術を駆使した物まで多種多様です。楽器用のアンプは、位相という面から見ると、そこにとらわれることなく製作されています。入力した信号に対して、同じ位相(正位相や正相とも言う)で出力するアンプもありますし、入力信号に対して逆の位相(逆位相や逆相とも言う)で出力するアンプもあります。ギターアンプで多々見られますが、使用するチャンネルによって、正相であったり逆相であったりします。ベースアンプでも逆相で出力する物もあります。練習スタジオに置いてあるアンプが変わるだけで、位相が変わると言うこともあり得るわけです。これは困った状況です。

ライブやレコーディングの時、エンジニアの方は、ドラムのキックの音に対してベースの音が正相になるように位相を決めます。マイクやDIを通した音は、逆相スイッチで簡単に位相を逆にすることができますし、マイクの位置を動かすことで、位相を合わせることができます。デジタルミキサーを使用している場合は、入力波形を少し遅らせることで調整する場合もあります。
ところがステージやリハーサルスタジオ内で演奏される楽器の位相は、用意されている楽器の位相がそのまま出力していますので、一般的に位相を変えることができません。

実際にあった例をご紹介いたします。あるボーカルの方が、リハーサルに用意した新しいアンプは、素晴らしいサウンドを持ったアンプでした。音の調整が終わって、バンド全体のリハーサルが始まると、そのサウンドは聞こえにくくなり、音量を上げてもトーンの調整をしても、単体で弾いた時のパンチのあるサウンドを再現することができませんでした。アンプの故障?なのか。しかしアンプの動作は正常で、その日は、原因不明のままリハーサルが終了しました。
その後、スタッフの方が持っていたA/B BOXに逆相スイッチが付いていることに気付き、そのA/B BOXを通してからアンプを鳴らしました。逆位相にした途端、バンド演奏の中で、素晴らしいアンプサウンドが聞こえるようになったのです。結論をいうと、このギターアンプの位相は、ベースアンプの位相と逆位相の関係でした。ベースアンプの近くに、このギターアンプが置かれていたため、音を打ち消しあう関係となっていた訳です。リハーサルスタジオで、このような経験をされた事はないでしょうか?このアンプ「音が抜けないなぁ」と感じた場合、もしかすると位相の問題かもしれません。

このような実体験を元に、逆相にする機材の必要性を感じました。せっかく気に入った機材が、位相の関係で良くなかったという結果になってしまうのは、本当に残念な事だと思いますので。

ここで少しデジタルアンプのお話をしたいと思います。デジタル技術の飛躍的な発展で、アンプの世界もデジタル製品が多くなりました。デジタルエフェクターも同様ですが、デジタル製品を信号が通過するには時間がかかります。製品によってその時間は変化しますが、数msec遅れるものが多いようです。これは、アナログ信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を演算処理(数字上で加工する)するために時間がかかるからです。デジタルの処理速度は、ディバイスの進化とともにどんどん早くなっていて、処理速度が早くなれば音の遅れも少なくなります。今後も更に処理速度が上がって行くと思いますので、どこまで早くなるのか楽しみです。

次回は、エフェクターの位相についてお話ししようとお思います。
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