SSブログ

イギリス滞在記(15) [音楽]

9月5日(木)

今日は、朝からピートはIN/OUT側のユニットの基板配置に集中することになった。この作業は私が手伝えるところはないということで、メールをしたり雑誌をチェックしたり他のことをしていた。自分がいると集中できないだとうと思って、奥のコンピューターのあるほうで、メールしたりピートが持っている雑誌を見せてもらったりした。古い雑誌の中にピートの紹介が載っているものがとってあったので、借りてコピーすることにした。

ピートが基板配置を終え、シャーシに穴あけを終えたあと、呼ばれて基板のピロー(支柱)をネジ止めする作業をした。すごい数なので驚いた。

お昼は、いつものサンドイッチだが、今日はマスタードとマヨネーズを塗ってきた。ピートが今日のサンドイッチは何のサンドイッチなんだ?と聞くので、それを塗った奴だというと、それはリンダの最も嫌いな組み合わせだと笑っていた。そっか、リンダはニンニクもだめとか言ってたから好き嫌いがはげしいのかなぁ。ジンジャーは大好きとか言っていたが。

午後は、LEDの色を決めて、全てを実際にフロントパネルに取り付け、LEDの輝度を確認しながら、抵抗値を一つ一つ決めていった。ピートがいうには、LEDはばらつきが結構あるので、必ずこのように、一つ一つ確認しているそうだ。すごい手間をかけている。実際にばらつきがあって、LEDを交換した。チェック時はちょん付けで試していた。注意点は下記の通り。

・必ず、LEDチェッカーで輝度が揃っているかどうか確認すること

・黄色のLEDが輝度が低い傾向にあるので、黄色から輝度を設定する。その後他の色を合せるようにすると、うまくいく。

・LEDにつなげる抵抗値を決めるときは、バリアブル抵抗器を使って決める。

・ラック全体の輝度をそろえるため、必ず近くからと遠く離れた場所で確認する。
人間の目の感度カーブは変な特性をしていて、赤に敏感になっているらしい。

LEDの色と抵抗値を決めたら、回路図や資料に数値を書き込んだ。その後、ダイオードマトリクスとLED用の抵抗をつなぐラグ板をピートが作り、それに半田付けするための配線図を作った。配線図には全ての情報を書き込むように言われた。簡単に勘違いをし、誤配線をするため、念には念をいれるということらしい。
ラグ板に半田付けするとき抵抗やダイオードは、ラグ板に近づけて半田付けしてはいけないと言われた。近いと、半田の熱が余計に伝わり良くないと言うことである。半田付けの部分から3mmは離したいと言っていた。それからピートはパーツの足を曲げるときに必ず手を使っている。ニッパー等を使えば綺麗に曲げられるのにと思うのだが、何か理由がありそうだ。今度聞くことにしよう。一回間違うと修正が難しくなるから、手で曲げて鋭角を作らないようにしているのかもしれない。

そういえば、今日は新しい英語の言葉を教えてあげようといわれて聞くと、わけがわからない内容だったので、紙に書いてもらった。
Around the rugged rock, the ragged rascal ran.
ごつごつした岩の周りを、汚い格好をした悪がきが走っていた。という意味だが、発音が非常に難しい。早く言われたら、まったく理解できなかった。そういえば、曜日を聞かれて、今日の日付を答えたりしてしまった。たしか中学校のとき習ったような記憶が・・・。

今日は、ピートの家の犬を予防注射に連れて行くというので、5時少し前にあがった。その後、雑誌をコピーしようと思って、Uckfieldに行ってお店を探した。やっとカラーコピーが出来たが、一枚1ポンドくらいした。たっけー。おばさんが心配してくれて手伝ってくれた。と思ったらお店が5時で終わりだったらしく、早くコピーを終えて欲しかったみたいだ(苦笑)

朝霧.jpeg

9月5日の朝は、凄い霧で視界が悪かった



9月6日(金)

今日は、朝から残りのルーティングシステムのサブシャーシとシャーシに載せる基板の位置決めしたところに、ポインターで小さな穴の印をつけ、ピートが穴あけをした。ピートいわく、怪我したら保険の問題があるから、自分でやるといってボール盤は使わせてもらえなかった。危険がともなうから、それは仕方ない。次にプラスチック製のピロウといわれる支柱を木ネジで止め、全ての基板を取り付ける準備が済んだ。次に行なった作業は、LEDとリレーを駆動するための回路をラグ板に半田つけする作業だ。昨日の続きである。ちゃっちゃと済ませ、ランチにした。

今日はすこぶるピートが機嫌がよくていろんな事を話した。
そういえば自分が作っているペダルやケーブルは、自分の誇りなので、絶対に自分とリンダとで作るんだと言っていた。今回、自分が手伝えているのは、例外中の例外だよなぁ。ほんと。感謝感謝!
(現在は、ピートとリンダ、長男のミンガスの3人でピートコーニッシュ製品は作られています。)

午後はワイヤリングの作業に入った。ピートのワイヤリングの需要なポイントは下記の通り。

・シャーシをばらした状態で動作確認ができるように、ワイヤリングを考える。

・ワイヤーの色や番号には、気をつける。ポート番号、リレー番号にあった色を使って、なるべく誤配線をしないようにする。

・ワイヤの先に行き先やどこから来たかを書いたテープを張っておく。シャーシや基板にも情報をなるべく書き込む。簡単に誤配線をすることを忘れない。

・ワイヤは、機能別に束ねると綺麗に配線できる。

・ワイヤを短くぎりぎりにしないで、美しいループを作り揺れても大丈夫なようにする。またある程度長さに余裕を持たせることで、配線の修正や後日の改造でやり直しができる可能性を持たせることができる。半田付けしたい個所にケーブルを持ってくるときは、必ずケーブルを戻して半田付けするようにする。

・2芯シールドケーブルを使用するときは、かならず2芯の線の長さが同じになるようにケーブルの配置を考える。一方が短く一方が長くというのは、配線のやり直しが効かなくなるので、ダメ。

・コネクタの半田つけ用穴に対して垂直にケーブルを通し、90度曲げて半田付けする。

・リアパネルやフロントパネルに付いているパーツの配線から行い、配線材は余裕を持って切断する。いろんな方法を試してみたが、この配線の順番が一番良いそうだ。

等々の説明を受けて、まずD-SUBのポートの配線から初めた。その間ピートは電源のチェックを始めた。ダミーロードを使って、負荷を与え、電源一次側電圧を上下し出力電圧をチェックしていた。日本は85Vから110Vくらいの間で動作すれば問題ないが、間違って120V電源タップにつなぐこともあるので、120Vでも壊れないようにして欲しいと頼んだ。ピートは、1ランク上のタイプの電源トランスを使用していると言っていた。熱もこちらの方が有利だし、トランスに対する負荷少なくすむ。磁界フィールドも下がるといっていた。磁界については文献を読まないとわからないが。とりあえず電源チェック用のダミーロードは作らないとダメだ。

トランスの話になったので、JVCで働いていた時に電源トランスでずいぶん苦労したことがあると言う話をした。興味があったようでいろいろ聞いてきた。なんでデジタルアンプをやることになったんだ?と聞いてきたので、デジタルミキサーのプロジェクトが途中で中止になったので、そうなたったんだと答えると、なんでデジタル関係の設計をやっていたのに、そこから離れようと思ったんだ?ときた。やっぱアナログが好きだし、音はアナログでしょ!
(当時私はピートに、アナログ技術を学びたいと頻繁に質問をしていた。)

ピートがいうには、ディレイやコーラス等はデジタルで問題ないのにディストーションだけは、上手く行かないなと言っていた。(18年前は、現在のように楽器用デジタルアンプが一般的になっていませんでした。)スティングのレコーディングでチューブDIをかなり多用したらしい。チューブは本当にいい音がすると思う。その話の流れで、サウンドシティーの話になった。急に無くなってしまった時の話をしてくれた。当時イギリスにはテレビを作る製造会社が結構あって、それらは大きな会社だったそうだ。サウンドシティーもその中の一つのテレビを製造する会社が所有していたそうだ。その後、海外のメーカーがイギリスでシェアを奪いはじめ、イギリスのテレビ製造メーカーは全てつぶれてしまったそうだ。サウンドシティーは当時イギリスで一番のお店だったらしく、フェンダーの代理店をやったりアコースティック(ベースアンプで有名)の代理店をやったりして、ものすごい量の在庫と販売をしていたそうだ。なので、当時ピートはものすごい量の修理に追われていたそうだ。その頃、VOXのジェニングスの話とダラスの話をしてくれた。VOXからジェニングスが離れて、VOX MUSIC COMPANEYという会社を設立したあと、VOX社はピートに全てのVOXアンプの回路図のコピーをくれたそうだ。そういえばイギリスではお金を出せば、サービスマニュアルが買えるそうだ。ピートもローランドの回路図等は必要なとき購入するんだよと言っていた。回路図は絶対に必要だと言っていた。なんでも****はバイパスしたときに、f特がフラットでないので、修正するのに随分時間がかかったといっていた。

ピートのお薦めは、マーシャルでもなんでも、パワーのあるヘッドやパワーアンプを使用し、それを周波数特性がフラットになるように必要であれば改造し、それに対してエフェクターやプリアンプで色付けするという方法だ。マーシャルを歪ませて使うという方法は、全く考えていない。そこで歪ませてしまうと、その音だけしか得られないからというのが、ピートの考え方だ。歪みは気に入ったエフェクターを使って作るほうが、バリエーションを得られてよい結果を得ることができるというのが、ピートの考え方のようだ。

今日は、一ヶ月くらいどこかに行ってしまって、配達されなかったというピートが使用しているトランスが届いた。ちゃんとDC抵抗値を測定して正しいものかどうか確認していた。ピートは、必ず届いたものは確認しているそうだ。特に電気製品関係は、すぐに試して問題があれば送り返しているそうだ。それからトランス用のガンシン液もちゃんと持っていて、とくにVOXの古いトランスをガンシンして、鳴き止めしているとのこと。しかし、やっている内容が多岐にわたっていて、さらにそれぞれのパーツについて、深い知識を持っているので、いろんな対処方法がわかるんだろうなぁ。すごい。

今日もピートのバンド練習に誘ってもらった。今日は最後らしい。レスポールさんとも記念写真を撮った。すでにメンバーの人と4回会っているのでみんな挨拶をしてくれるようになった。みんな良いおじさんたちだなぁ。

家の前.jpg

家の前は牧場で、遠くに羊の群が見えます。

(つづく)
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。