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イギリス滞在記(9) [音楽]

8月22日(木)

今日は、朝からPMS-16U用のルーティングシステム用アッテネーターを作った。またこれが、大変な代物で、性能はいいが作るのに何時間もかかるものだ。肩はこるし、何十本も使う抵抗を間違うといけないし、一箇所でも半田をミスるとパーツが駄目になるという代物だ。がー、こんなん俺にさせるなぁ。ピートも多分自分でやりたくなかったんだろうなぁとか思いながら、腹をくくって丁寧に仕上げた。これはピートより、俺のほうが綺麗だぞ!とか思いつつ。ピートもビューティフル!と誉めてくれた。ちっとは、半田もうまくなった。ちょっとコツをつかんだかな。あまりピートから注意されなくなった。
(ピートは毎回私の行ったハンダ付けを隅から隅まで全てチェックしていた。)

そういえば、今日は別のことでピートに注意された。少し慌てていたときに、慌てるな!“Don’t Panic!”
どんなときも冷静に対処しなさい。慌ててはいけない。
アッテネーターを作っているときに、後ろでピートが何か作業をしていたので、見せてもらおうとしたら、2つのことを一緒にやろうとするな!必ずミスをする。いままでの経験上そうだから間違いないよ。一つのことを終えてから、次のことに集中するようにしよう!と注意された。ありがたく思った。たしかに、その通りだもんなぁ。特に技術者は集中しないと、駄目なときが多いからな。肝に命じよう。

アッテネーターの製作は、ピートもすごく慎重になっていて、全ての抵抗は、つけるまえに全てチェックして、抵抗値が正確なことを確認すること。一回路ずつ、チェックし信号をいれて正確に3dBづつアッテネートされる事を確認すること。ロータリースイッチにゆがみがないことを確認すること。スイッチのコモンが3回路ともセンターにきていることを確認すること。抵抗がスイッチに近づきすぎないこと。あー、こりゃ大変!なんとか完成した。音出しもして、クリックノイズや音切れがないことも確認した。今回つ作ったのは10ポジションの10kΩ-27dBのアッテネーターである。

ピートはずっとルーティングユニット用のシャーシの加工をしていた。M3のネジだと弱いからM4のネジに改造したり、強度が弱いところはネジの数を増やして、タップを切って補強していた。シャーシが鳴かないように相当気を使っているようだ。そういえば、ケミカルメタルというパテのようなものをシャーシの隙間に塗りこみ、乾かしたあとで、ネジのタップを切っていた。

基板検討.jpg

レイアウト検討中の写真。紙の上にパーツを置いて、レイアウトを検討します。製作に苦労した3chのロータリースイッチ(大きなノブが底側に付いている緑のパーツ)が右下側にあります。



その後、アッテネーターの製作を終えて、フロントパネルのレイアウトの検討に入った。ピートは、全てのシャーシのパーツにシリアル番号をいれて、どのシャーシがどれにあたるかわかるようにしていた。上下も記入し、さらにフロントとリアパネルの内側にパーツの置ける有効範囲をマジックで書き込んでいた。それからシャーシをばらした。
まず、実物大のフロントパネルをなぞった紙の上で、全てのパーツを並べてみた。なんとか並びそうだ。ピートは、この段階で全てのファンクションが入るか入らないか確認して決めていくそうだ。もし入らない場合は、別のユニットに移動したり構成を変更するそうだ。

紙の上で並べたあと、実際にシャーシのフロントパネルに全てのパーツをならべた。隙間がないくらいぴったりで、やっと入った。トグルスイッチのON/OFF作業がやりにくいほどではない。
今晩家に帰ってから忘れがないかどうか、これでいいかどうか、確認しようと言われた。忘れないように写真とメモをとった。フロントとリアの配置を決めてから内部のレイアウトにはいるそうだ。

そう言えば、このカスタムユニットと一緒に歪みのアンプを使用するときに注意がいるといわれた。マスターボリュームは、3つの出力を同時に同じレベルだけ可変するように設計してある。マスターボリュームを動かすとアンプへ送られる信号レベルが変わるので、アンプの歪み具合が変化するので注意するように言われた。
それから、ピートから教わったことでドリルの使い方があった。ドリルを抜くときは、削る時と同じ方向に回しながら、ひきぬかないと駄目らしい。そうしないとドリルの歯が痛むと言っていた。大学の実習で習ったかも。

デイブ・ギルモアの話になった。彼は、ダイレクト(DRY)音とエフェクト音に用意されたアンプのON・OFFをよく行なうそうだ。たとえばあるフレーズはエフェクト用L/Rのみ。その後、DRY音を足したり、逆にDRYだけにしたりして、音のバリエーションを出しているらしい。遠くでなっている音が、急に前にでてくるので、非常に効果的だと言っていた。




8月23日(金)

今日はピートから非常に重要な事を教えてもらった。途中でテストされながら、何とか正解の答えを言うと、満足そうに話を続けた。話題に出た内容は下記の通り。

1. エフェクトのループには、センドとリターンがある。ここで設定する標準レベルが非常に重要。
(これはミキシングコンソールの設計でも学んだ非常に重要な内容で、レベルダイヤグラムの設計に近い内容)

2. センドリターンのレベルマッチング
ここで重要なのが、必ずセンド側とリターン側のボリュームは対照にコンプリメンタリで設定されるということだ。必ずエフェクトループがユニティゲインになるためには、ボリュームが対照の位置になるはず。ペダルエフェクターをループにつなぐときは、センドレベルを0dB、リターンレベルを0dBに設定してから始める。
(今回製作しているカスタムユニットのセンドリターンには、センドレベルとリターンレベルが付いていて、それぞれレベルを調整できるようになっている。プラス側にもマイナス側にもレベル調整可能。)

3. 次にエフェクターが歪まないようにセンドレベルを上げていく。耳で聞いて確認する。このときエフェクターのレベルは最大にしておく。それから、エフェクトループのON/OFFを行いユニティゲインになるように、リターンボリュームを下げる。こうすることによって、CDクオリティは簡単に得られると教えてくれた。

4. ラックエフェクターの場合は、センドレベルを+14dB、リターンレベルを-14dBから始める。後は同様である。

5. コンプレッサーをかけた信号は、ピークが抑えられているので、たとえばSDE3000のインプットメーターが赤まで振れていても大丈夫なこともあると言っていた。まずは耳で判断ということのようだ。機器によって、ヘッドマージンの取り方が違うので、機器に合わせて設定が重要とのことだ。


それから、今日は真空管の話にもなった。ムラードの真空管は、白のシルクが入っているものが品質が良く軍に出荷されるレベルのものらしく、次のランクは黄色いペイントが施されるようだ。このタイプはドメスティック用と言っていた。ムラードの規格に入らないものは、シルクなしで出荷され、OEM物として他社がシルクを入れて発売していたそうだ。それで白シルク入りのムラードの真空管は品質が良いんだ!
SOVTEKの5881は、非常に品質がよくすばらしいと言っていた。ベースの部分は、高熱に耐えられる別の種類のガラスらしい。

それから、電源のロードテスターも自作で作らないといけないねと言われた。おー、作らないといけないものが一杯だ。

今日も夕方、ルーティングシステムのフロントパネルのレイアウトを検討した。もう何時間もかけている。ここで、失敗したら作り直しだから、絶対にあわてないようにしているそうだ。ボーっとしていてもいいから、時間をかけて忘れていることがないかどうか、確認するのだそうだ。これで間違っていたら、おまえのせいだからな、責任持てよといわれた。まあ笑いながらだが。プレシャーかけるなぁ。

ある程度レイアウトを決めてから、正確な配置を決めることになった。ピートはLEDインジケーターの基板のジグを持っていて、正確にセンターの位置だしをしていた。V字で線引きの場所を記していた。ピートは、この作業が大好きだそうだ。美哲学を追求するのだと言っていた。機能美ということらしい。いろいろノブの位置やジャックの位置を動かし、操作しやすく且つ美しく見える配置を検討した。最終的には火曜日にしようということで、今日の作業を終えた。月曜日は祭日なので休みらしい。日曜のランチとディナーを誘ってもらったので、楽しみだ。月曜日はフランスから業者さんが来て、町に出店がでるそうだ。道も閉鎖して大掛かりにやるらしい。キャスパーも来るらしいので、写真を撮ることにしよう。

夜は、ピートのバンド練習を見に行った。先週と同じビックバンドだが、面子が違っている。聞いたらいつも違うらしい。みんな初見でもプレイできるそうだ。でもあまり上手くなかったなぁ。ピートも言っていたが、みんな趣味でやっている連中なので、2回目だと上手くできるそうだ。それでもすごい!自分には絶対できん!隣に60歳くらいの綺麗なおばさんが座っていて話かけてきた。JAZZボーカリストといっていた。今も3つのバンドで歌っているそうだ。ピートとも一緒にやったことがあるらしい。飲んでるらしく、ペンフレンドになろうとか言い出して、いま自宅の住所がわからないので、とごまかした。自分の母親くらいの人とペンフレンドになってもちっともうれしかないど!(笑)

帰りはJAZZの音楽論の話で盛り上がりながら、家まで送ってもらった。音楽理論もちゃんと把握してるそうだ。このおっさんやはり只者ではないなぁ。ずいぶんとレッスンも受けていたらしい。ロンドンにいるときに相当バンドやってたようだ。毎週パブで演奏してお金もらってたらしい。いいお金になったそうだ。

(つづく)
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