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イギリス滞在記(24)最終回! [音楽]

9月24日(火)

今日は朝からロンドンへ出発だ。目指すは、バッキンガム宮殿。エリザベス女王の在位50周年記念のプレートを探しに出発。ビクトリア駅で降りて、歩いてバッキンガム宮殿に向かった。多くの人が同じ方向に向かっている。みんなバッキンガム宮殿に行くんだな。行く道にバッキンガム宮殿の中への入り口を見つけたので、5ポンド払って入った。そこは、いろんな馬につける蔵や馬小屋、馬に乗るための訓練学校、馬車などが展示されており、想像していたような感じではなかった。あれ?と思いながらショップに入った。ショップの中には、いろんな商品が並んでいて、どれもこれもオフィシャル商品ということで、値段が異常に高かった(苦笑)そのなかに、ジュビリーのプレートを発見。おお、品がよくてなかなか良いではないか!お店の人がちゃんと中を見せて割れていないかどうか確認させてくれた。おお、さすがバッキンガム宮殿内のショップは違う!

無事買い物を済ませて、バッキンガム宮殿の正面を見てから場所を移動しようと思っていたら、宮殿の中へ入れるらしく、人の行列が出来ていた。おお、9月末まではバッキンガム宮殿の中に入ることが出来るんだ!ラッキーとばかりに早速チケットを買いに行き、12時からの入場のチケットをゲット!相当な人数の行列に並び、中に入った。中は驚くほどの装飾品が飾ってあって、こんなところに住めるのかなぁと思うくらい異様な雰囲気であった。美術館の中に住むような感じだ。感動しながら、仮設した感じのショップに入り、小さなぬいぐるみを買って、バッキンガム宮殿を後にした。

次に向かうは、デンマークストリート。ここでお土産に音楽関係の本を買おう。いくつか楽譜等を扱っているお店に入った。なかなかいい本がないと思っていたら、ピートが音楽関連業者の住所などを確認するために調べていた本の最新版が置いてあった。50ポンドもしたが、今後の役に立つと思い購入した。
*この本はどこかに行ってしまい見つかりません(苦笑)

そのあと他のお店に入って、ビートルズのギアブックを見つけた。しかし、その隣に最近出たと思われるビートルズの本があるではないか!中を見てみると、こちらのほうが面白そうだったので、こちらにした。さて、お土産も仕入れたので、帰ることにした。

5時半くらいに工房につきメールチェックと近鉄に連絡をさせてもらった。その後、時間は少なかったが、何点か技術について教えてもらった。
まず電源トランスを最大定格のぎりぎりで使用しないこと。ほとんどのメーカーは、ぎりぎりのトランスを使用するため、ほとんどが熱くなったり溶けたりする。ボスのACアダプター(以前発売されていたトランスを使ったタイプのACアダプター)だけが、ピートの行なうチェックを通ったそうだ。ジミーページのペダルボードは、大きな容量のトロイダルトランスを使用しているそうだ。必要な容量の倍近くのトランスを使用するようにしているそうだ。ぎりぎりでトランスを使用すると、ハムフィールドが広範囲に広がり、ハムを拾いやすくなるとの事だ。日本で良いトランスが見つからなかったら、いつでも送るので言ってくれればいいよと言ってくれた。

それから、ピートは預かったミュージックマンのアンプを修理していた。入力部は全てIC構成になっていて、トレモロエフェクトが非常に面白いものであった。途中で逆相になってミックスされるところがあり、ふしぎな感じのトレモロ効果であった。交換したコンデンサを見せてくれた。小さな穴が開いていて、中から噴出したあとがあった。それからリバーブがかからない現象があって、調べてみるとワイヤが断線していた。これは直らないそうだ。構造上修理できないのでこのまま返却すると言っていた。

帰り際、ピートがお土産と言って、紙袋を渡してくれた。なんてやさしいんだ。きっとリンダが用意してくれたんだな。ピートに何度もお礼を言った。おまえのじゃないからな!とか言ってるし。まったく。明日は、車を返しに行くので朝10時から10時半くらいに家に来てくれることになった。今晩は部屋の方つけと、パッキングで忙しくなるなぁ。冷蔵庫のものも整理しないと。


9月25日(水)

今日は帰国の日。早起きして部屋の片付けを終え、スーツケースに荷物を詰め込んだ。そのあと大家さんに挨拶をしに行ったら、風景画をイギリスのお土産にと言って渡してくれた。本当にありがたい。もっと居て欲しかったと言われたので泣きそうになった。家の玄関は締めなくていいからねと言われたので、鍵を渡してお別れをした。良い大家さんと出会えて良かった。またイギリスに来た時は、何かを持って挨拶に来よう。
ピートが迎えに来てくれたので、荷物をトランクに詰め込み、一緒にレンタカー屋さんに車を返しに行った。事故もしなかったし、ぶつけることも無かったので、すぐに手続きが終わった。ピートが、「だいたいレンタカーを借りた時は、どこかぶつけることが多いんだが、どうやってぶつけないで過ごせたんだ?」と言って来たので答えに困った(笑)「運転上手いからだよ」と笑って答えたがピートは凄いなと感心していた。イギリス人は運転荒いのか?

リンダが買い物をしているショップに迎えに行き、3人でヒースロー空港まで移動した。道中は、みんなでこの約2ヶ月の思い出話をして過ごした。ピートは、「俺はこの2ヶ月、良くやったと思う。独立してから人に教えながら仕事をするのは初めての経験だからな。Yuki、お前も良くやった。毎日、日記を書いたりノートにメモを取ったりしていただろう。その姿勢に感動したよ。誰でもできることではないと思う。」と褒めてくれたので非常に嬉しかった。リンダもピートを褒め、自分もピートを褒め、さらに次は二人でリンダを褒め、褒めあって車内での時間を過ごした。
ヒースロー空港に到着し、飛行機に乗るまで少し時間があったので、紅茶を飲もうということになって空港内のショップに入った。イギリスの紅茶は自分には強くて、最初は胃が痛くなったが、今では慣れてしまって砂糖なしで美味しく飲める。しばらく飲めないなぁと思いながら紅茶を飲んだ。

ピートとリンダが、日本に帰ったらどんな感じで仕事をスタートするんだ?と言うので、まずは仕事をする場所を確保して、カスタム品を作ったりペダルボードやラックを組んだり、リペアができるように少しづつ準備をする。プロミュージシャンとの仕事をメインにしたいと言う話をしたら、リンダが良い話があると、ある出来事を話してくれた。

あるミュージシャンに招待されて、ライブを見に行った時の話。ライブ中、ギターの音が急に小さくなってしまい、1曲か2曲、音が出ないまま進んで行ってしまったそうだ。とにかくケーブルを交換して、音が正常に出るようになり、ライブは無事終わったらしいのだが、あとで機材のメンテナンスをするために機材を一式預かったそうだ。調べて行ったら、つなぐと音量が下がるケーブルがあり、その原因がプラグの汚れだったそうだ。「たった1本のケーブルでも、たった1本のプラグでも、正常でなければ音が出なくなったり、音量が下がったりするのよ。ギターやアンプを大切にメンテすると思うけど、ケーブルも大切にメンテしないとダメなのよ。」とリンダが丁寧に説明してくれた。「音を解き放つために、プラグを綺麗にクリーニングしないとね。」と言った途端、ピートが、「それは良いフレーズだな。うーん。」と少し考えて、「Yuki、Free The Toneと言う名前の会社名はどうだ?良い名前じゃないか。」リンダもそれは良い名前ね!とピートに賛成し、私の顔を覗き込んだ。うーん、日本人には馴染まない言葉だけど自分には絶対思いつかない言葉だし、海外の会社みたいだし、なんかカッコいい!即決で、会社名を「FREE THE TON」にすることにした。ピートがメモ用紙に「FREE THE TONE, LTD THE HOLITIC APPROARCH TO SYSTEM DESIGN」と書いた。「これがYukiの目指す道だ。大変な道のりだが、お前ならできると思う。」とメモをちぎって渡してくれた。これは期待に応えなきゃ!ここまで色々教えてくれたピートとリンダに顔向けできない。
それから子育てについてのアドバイスをもらったあと、飛行機に乗るためにゲートに向かった。ピートとリンダとハグをして、心からのお礼を言い、泣くのをこらえながら手を振ってお別れした。

しかし、冷静に考えると日本から訳の分からない若僧を迎えてくれて、本気で特訓してくれた。何かの形で恩返しをしなければバチが当たるな。日本に帰ったら忙しくなるけど頑張ろう!
妻の出産も近いし、やることいっぱいだ。

終わり

logo-img.jpg

ピートが空港で書いてくれた社名。今は、ちゃんと額に入れて飾ってあります(笑)

お二人と.JPG

前回は、2017年の冬にロンドンでお二人にお会いしました。

<あとがき>
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。24回に渡り、約18年前の日記を公開させていただきました。読み返すと、全く覚えていない事も多々あり、自分の記憶力の無さもありますが、記録しておく事の重要性をあたらめて感じました。人の記憶はあてにならないものですね(苦笑)

ピートから、技術的な事も多く学びましたが、仕事の姿勢、仕事との向きあい方というものを一番学んだと思ます。例えば、その回路は本当に考え尽くした回路なのか。作った後、本当にそれは良い音がするのか(時間をかけて回路だけでなく音の検証をしたのか)、耐久性含め何年も使ってもらえる製品なのか、などなど。自分との戦いに近い部分が多々あります。私もピートに負けじと精進し続けなければと思っています!

ピートのカスタム品などの製品・作品は、イギリス本国のサイトでご覧いただけます。
ピートコーニッシュ氏のサイト

左側にTHE QUEEN YEARSというメニューがあります。このメニューを選択すると、ブライアンメイの機材情報が載ったページに進みます。このページの一番下の方へ進むと、QUEEN MEMORABILIAというリンクがあります。このリンクをクリックすると、当時、私がピートに見せてもらった色々なQUEENグッズの写真を見ることができます。

また、ピートが製作したエフェクターやカスタム品も、是非ご覧ください。スイッチの位置やノブの色使いなど、ピートならではのこだわりが随所に見られます。

日本では、フリーザトーンが運営する「Tone Gold」というオンラインショップにてピートコーニッシュ製品をご購入いただけます。今でも完全に手作りで製品作りを行なっています。是非、こちらもご覧ください。
Tone Goldのサイトはこちら

最後になりましたが、日記をお読みになって、感想やご質問など、何かございましたらコメント欄にご記入ください。ありがとうございました!

また、このブログを使って、色々お伝えして行こうと思います。
引き続き、よろしくお願い致します。






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ちょす

毎日楽しみに読ませていただきました
一つ一つのこだわりとその意図が伝わりました。

また、後日談などあれば読みたいです。
林さんのFREE THE TONE製品に対するピートの評価や
大家さんと再会できたのか、など
(布袋さんのあの宇宙船みたいなピートのペダルボード
 についても改めて知りたいですが…)
by ちょす (2020-05-20 21:39) 

Yuuki

イギリス滞在記全部読みました!

もともと林さんのことは布袋さんの機材を調べていくうちに知りました。
布袋さんのラックを見て機材のことがほとんどわからなかったので、空間系のラック以外のラックが何なのかわからず、これは何だとあれこれ考えたりしていました!(今は何となく少しわかった?ような気がします笑)

僕は布袋さんだけじゃなく、とてもたくさんの林さんが関わったサウンドシステムや、エフェクターなどの音を普段から聞いています。
Free The Toneがなければ僕が普段聴いている音楽を楽しむことはできなかったと思います。

今までたくさんのアーティストのサウンドをサポートをしてくれて本当にありがとうございます!!

このイギリス滞在記を読んで、ピートとリンダさんから技術的なことや、作業に対する姿勢などを教えてもらってきたことが伝わりました。

70年代からロック・ミュージックのサウンドを支えてきた二人の音楽への魂や情熱のようなものが林さんの中にも流れていると思うと、目頭のあたりが熱くなりました。

林さんの、製品の開発やアーティストのサウンドシステムの構築など、音楽に関わる仕事全てを応援します!

これからも頑張ってください!

僕も近い将来、音楽をやっていく上で林さんに会えればいいなと思います。

その時はよろしくお願いします!

イギリス滞在記面白かったです!

ありがとうございました!








by Yuuki (2020-05-20 22:24) 

林 幸宏

ちょすさん

コメントありがとうございます。
後日談ですねw 機会を見て書いてみようと思います。
布袋さんの宇宙船のようなペダルボードの事ですね。
あれは、本当に完成まで大変でしたw

今後ともよろしくお願いいたします。
by 林 幸宏 (2020-06-01 17:44) 

林 幸宏

Yuukiさん

コメントありがとうございます。
機材製作側の気持ちが伝わったようで、すごく嬉しいです。
これからも頑張って行きますので、よろしくお願いいたします。
お会いできる日が来ることを楽しみにしております。
by 林 幸宏 (2020-06-01 17:47) 

セキ

はじめまして。
僕はベーシストでfree the toneのケーブル一式を利用しています。
回路等の専門的な知識はありませんが、林さんのブログは読み応えがあり、一気にみてしまいました。
また次の記事を楽しみにしています。
by セキ (2020-10-11 18:53) 

林 幸宏

セキさん
はじめまして。ブログを読んでいただいて、ありがとうございました。また、記事を書くタイミングがあると思いますので、引き続きよろしくお願い致します。
by 林 幸宏 (2020-11-08 12:21) 

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