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楽器の位相について(6) 〜エフェクターの逆相ついて〜 [技術]

今回はエフェクターの逆相ついてについてです。

エフェクターの中で、逆相(逆位相)になることで良く知られているものは、ワウやコンプ、ブースターなどがあります。でもちょっと待ってください。全てのワウ、コンプ、ブースターが逆相になるわけではありません。回路によって異なります。正相(入力した信号と同位相)で出力する物も存在します。
例えば、Wahで有名なJenのCry Babyやコンプで有名なMXRのDynaCompは逆相で出力します。回路の規模を少しでも小さくするために(小型化するために)、逆相出力のままにしたのか、、、、、それとも正相のタイプと逆相のタイプを比較して、逆相のタイプを選択したのか、、、、、。叶うなら当時の設計者に聞いてみたい内容です。

楽器の位相について(2) 〜位相と周波数〜にも書きましたが、周波数の高い信号は、波長が短いため位相の影響を受けにくくなります。ギターやベースに当てはめると、高い音程(フレットのハイポジションの音など)は位相の影響を受けにくいということになります。ギターのソロプレイやカッティングなどは、位相の問題が起こりにくいわけです。かといって影響が無いわけではありません。ワウの位相を反転して、バンドサウンドの中で、正相と逆相のサウンドを比較してみると、明らかに音色(聞こえ方)が変わります。ここまで来ると好みの世界とも言えます。ワウペダルを他の種類に変える方法もありますが、位相をひっくり返してみるのも、音作りの手法の一つです。

一方、ギターの5、6弦、やベースなど、音程の低い音は、位相の影響を受けやすくなります。例えばヘビーなギターのリフとベースの音が逆相だった場合、音の出るタイミングによって、音が出たり引っ込んだりを繰り返すため、キレの悪い演奏になってしまいます。私には演奏が変わってしまったように聞こえます。ドラムとベースの場合、例えばキックとベースのリズムが周波数の半周期分、ズレた方が、それぞれの音が聞こえやすくなるという現象が現れてもおかしくありません。低音域を扱うベースは、ドラムとの位相と密接な関係があり、さらにそれは音を出すタイミングで変化するものなので、本当に難しい楽器なんだろうなと思います。私はバンドでベースを弾いたことがないので、どれほど難しいか分かってません(汗)ドラムとの位相関係を複雑にしないためにも、ベースの位相は、常に変化しないのが良いと考えています。

ここで、少し電気的なお話を。エフェクターは電気回路で構成されています。位相を反転させるエフェクターが存在するのも内部に電気回路が入っているからです。ネットを調べると、エフェクターの回路図が沢山見つかりますので、位相が正相で出力する回路なのか、逆相で出力する回路なのか調べてみるのも面白いです。

バイアス回路などを省いて簡素化した、トランジスタと真空管の回路を図に書きました。それぞれ入力信号に対して、どのような位相で出力するのかも書きましたのでご覧ください。信号を取り出す場所によって、信号の位相が変わります。

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トランジスタや真空管の基本動作として、
・ゲインを上げる(音量を上げる)動作をさせたい時は、位相が反転する回路を使用します。(図2と図4)

・信号のインピーダンスを下げる動作をさせたい時は、位相が同相(正相)になる回路を使用します。(図1と図3)

信号のインピーダンスを下げたい場合というとバッファー回路が頭に浮かぶと思います。そうです、バッファー回路をトランジスタや真空管で作る時は、位相反転せずに作ることができます。ブースターやオーバードライブなど、ゲインやレベルを上げたい場合は、位相が反転する回路を使用する必要があるので、どうしても位相が反転してしまうのです。ちなみに、位相が反転する回路が2個(もしくは偶数倍)あると、位相は元の位相(正相)に戻ります。設計者の思想によって、位相をどのように捉えているか、想像するのも楽しいです。特に私は1960年代に生まれたエフェクターの回路を見るたびに、設計者は何を考えながら設計図を書き、パーツを決めて行ったんだろう、と考えます。回路図は設計者にとって、絵画のようであったり、小説のようであったりします。貴重な財産です。

3月27日に、フリーザトーンからPHASE ANALYZERを発売いたしました。エフェクターやアンプの位相(極性)を簡単に測定することができます。ご興味ございましたら、チェックしてみていただけると幸いです。バッテリー駆動もできますので便利です。リハーサルスタジオで使っているアンプの位相をチェックしてみても良いですね。いつも使用しているギターアンプとベースアンプ、両方のアンプの位相を知るのは重要だと思います。

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次回は、アンプの逆相についてお話ししようと思います。
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楽器の位相について(5) 〜エフェクターと測定方法について〜 [技術]

今回はエフェクターと測定方法についてです。

エフェクターは本当に様々で、使用されている電気回路によって位相も変化します。
測定の手法が異なることで、話が食い違う場合も出てくるかもしれませんので、測定方法について少しご説明いたします。エフェクターの位相については、測定する場合、大きく分けて2つあります。

(1) 時間軸を考慮しないで、波形の向き(極性:ポラリティ)を測定する場合
電気的にプラス側からスタートするテスト信号をエフェクターに入力します。エフェクターからプラス側からスタートする波形が出力すれば、位相は正相が出力すると言えます。この場合、極性(ポラリティ)はプラス(+)側です。
例え波形が出力するタイミングが遅れたとしても、プラス側からスタートする波形が出力すれば、エフェクターとしては、同位相の信号を出力するわけですので、正相の信号を出力したことになります。
あくまで信号の波形の向きを調べていて、時間軸は無視しています。そのため、極性(ポラリティ)がプラス、もしくはマイナスという言い方をします。
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(2)時間軸を基準にした位相測定
時間軸を基準に位相を測定する場合は、入力した信号と出力した信号を同時間で比較し、位相を測定します。一番わかりやすい例としては、テスト信号の山の部分と、エフェクターから出力する波形の山が一致すれば、正相で出力していると判断します。逆に、テスト信号の山の部分と、エフェクターから出力する波形の谷が一致している場合は、逆相で出力していると判断します。

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時間軸を基準に、位相を測定する際に困ることがあります。テスト信号の山の頂点とエフェクターから出力する波形の山の頂点がピッタリ一致せず、ほとんどの場合、少しずれているからです。例えば、FUZZペダルは、微弱な信号でも大きく増幅するため入力波形が崩れてしまいます。元々あった頂点の場所は、どこにあるのかよく分からなくなってしまいます。このような場合は、FUZZのGAINを下げ、増幅率を下げて測定してみます。テスト波形に形状が近くなれば近くなるほど、位相の測定はし易くなります。

時間軸を基準にすると位相の測定ができないエフェクターもあります。
例えばコーラスやフェイザーのような、常時位相を変化させているエフェクターです。ある時は正相、ある時は逆相、ある時は90度位相ずれなど、掴みどころがありません(笑)
時間軸を基準にして位相が測定できないコーラスやフェイザーですが、前述の極性は測ることができます。

そして信号処理をデジタルで行なっているエフェクターも、位相の測定に困るエフェクターです。AD/ADコンバーターを経由する時間や、演算処理の時間が必要なので、デジタルエフェクターでは音の遅延が発生します。時間軸を基準とすると、入力信号に対して位相がずれた状態になります。デジタルエフェクターも極性は測ることができます。

極性がプラスのエフェクターでも遅延が発生していると、結果として位相はどうなるの?という疑問が湧くと思います。入力信号に対して、出力信号が遅延しているということは、位相がずれているということになりますが、どれくらい遅延時間が発生しているのかによって、どれくらい位相がずれるのかが変わります。入力信号と、デジタルエフェクターを通過した音(例えば、デジタルEQでほんの少しエフェクト処理した信号など)をミックスしてみましょう。どんな音になるか試して見るのも面白いと思います。ProToolsなどをお持ちの方は、何サンプルくらいエフェクト音が遅延するのかチェックして見るのも良いと思います。

次回は、エフェクターの逆相についてお話ししようとお思います。
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楽器の位相について(4) 〜ギターやベースについて補足と楽器用アンプ〜 [技術]

今回は楽器用アンプの位相についてです。

本題に入る前に少し、前回の補足的なお話を。
前回、ギターやベースの位相についてお話ししました。楽器自体や奏法で、出力する信号が正相(極性としては電気的にプラス側から信号がスタート)なのか、逆相(電気的にマイナス側から信号がスタート)なのか変化しますとお伝えしましたが、やはり自分の楽器がどちらなのか気になる方もいらっしゃると思います。その場合は、ProToolsなどに直接、ギターやベースの波形を録音して取り込んでみてください。そして波形を拡大して自分が弾いた音がプラス側から振れているのか、逆にマイナス側から振れているのかチェックしてみてください。弦のひっぱり方(ピッキングによって)波形の立ち上がりが変化します。非常に興味深いと思いますので、是非、録音した波形が確認できるツールをお持ちの方はやってみてください。弦を上下(天地方向)に揺らすだけでなく、左右に揺らした時の波形もどうなるか、円を描くように揺らした時どうなるか、、、なども実験して見ると面白いと思います。
リア側のピックアップで弦を鳴らした時と、フロント側で鳴らした時の違い。
Jazz Bassで鳴らし時とPrecision Bassで鳴らしたときの違い。
ピック弾きと指弾きでの違いなどなど、、、、比べて見ると面白い内容が沢山あると思います。
このギターやこのベースで、こんな風に弾くと、信号としてこのように出力するんだな、、、ということが分かっていると、演奏に応用が効くこともあると思います。

さて今日の本題に入りたいと思います。
エレクトリックギターやエレクトリックベース用のアンプは、真空管式の物からデジタル技術を駆使した物まで多種多様です。楽器用のアンプは、位相という面から見ると、そこにとらわれることなく製作されています。入力した信号に対して、同じ位相(正位相や正相とも言う)で出力するアンプもありますし、入力信号に対して逆の位相(逆位相や逆相とも言う)で出力するアンプもあります。ギターアンプで多々見られますが、使用するチャンネルによって、正相であったり逆相であったりします。ベースアンプでも逆相で出力する物もあります。練習スタジオに置いてあるアンプが変わるだけで、位相が変わると言うこともあり得るわけです。これは困った状況です。

ライブやレコーディングの時、エンジニアの方は、ドラムのキックの音に対してベースの音が正相になるように位相を決めます。マイクやDIを通した音は、逆相スイッチで簡単に位相を逆にすることができますし、マイクの位置を動かすことで、位相を合わせることができます。デジタルミキサーを使用している場合は、入力波形を少し遅らせることで調整する場合もあります。
ところがステージやリハーサルスタジオ内で演奏される楽器の位相は、用意されている楽器の位相がそのまま出力していますので、一般的に位相を変えることができません。

実際にあった例をご紹介いたします。あるボーカルの方が、リハーサルに用意した新しいアンプは、素晴らしいサウンドを持ったアンプでした。音の調整が終わって、バンド全体のリハーサルが始まると、そのサウンドは聞こえにくくなり、音量を上げてもトーンの調整をしても、単体で弾いた時のパンチのあるサウンドを再現することができませんでした。アンプの故障?なのか。しかしアンプの動作は正常で、その日は、原因不明のままリハーサルが終了しました。
その後、スタッフの方が持っていたA/B BOXに逆相スイッチが付いていることに気付き、そのA/B BOXを通してからアンプを鳴らしました。逆位相にした途端、バンド演奏の中で、素晴らしいアンプサウンドが聞こえるようになったのです。結論をいうと、このギターアンプの位相は、ベースアンプの位相と逆位相の関係でした。ベースアンプの近くに、このギターアンプが置かれていたため、音を打ち消しあう関係となっていた訳です。リハーサルスタジオで、このような経験をされた事はないでしょうか?このアンプ「音が抜けないなぁ」と感じた場合、もしかすると位相の問題かもしれません。

このような実体験を元に、逆相にする機材の必要性を感じました。せっかく気に入った機材が、位相の関係で良くなかったという結果になってしまうのは、本当に残念な事だと思いますので。

ここで少しデジタルアンプのお話をしたいと思います。デジタル技術の飛躍的な発展で、アンプの世界もデジタル製品が多くなりました。デジタルエフェクターも同様ですが、デジタル製品を信号が通過するには時間がかかります。製品によってその時間は変化しますが、数msec遅れるものが多いようです。これは、アナログ信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を演算処理(数字上で加工する)するために時間がかかるからです。デジタルの処理速度は、ディバイスの進化とともにどんどん早くなっていて、処理速度が早くなれば音の遅れも少なくなります。今後も更に処理速度が上がって行くと思いますので、どこまで早くなるのか楽しみです。

次回は、エフェクターの位相についてお話ししようとお思います。
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楽器の位相について(3) 〜ギターやベース〜 [技術]

今回はギターやベースの位相についてです。

皆様がご存知の通りエレクトリックギターやエレクトリックベースには、コイルと磁石を使ったピックアップが、弦の下にマウントされています。磁性体の弦が揺れることによって微小ながらピックアップに電気信号が流れ、この電気信号がシールドを伝って、接続されたエフェクターやアンプに流れます。

ギターやベースのピックアップに使用されている磁石には、ご存知の通り、S極とN極があります。ピックアップに使われている磁石のS極とN極を入れ替えると、電流の流れる方向が逆になります。
また、コイルとして巻かれるワイヤーにも、「巻く向き」があります。ワイヤーを巻く向きを変えても電流の流れる方向が逆になります。

ギターやベースの製造メーカーや、ピックアップ製造メーカーは、これら磁石の向きやコイルの極性を管理した上で製造しているわけです。ピックアップをご自身で交換した方は、ご存知だと思いますが、ピックアップから出ているワイヤーの被覆には色が付いていて、ピックアップの極性を間違って逆に配線しないように工夫しています。ハムバッカータイプのピックアップは、最初から一芯シールド線がピックアップから出ていて、配線し易くなっているものも多数あります。

少し長々と説明してしまいましたが、ピックアップは、磁石の極性やコイルの極性を変えることで、電流の流れる方向が変わる特性を持っています。ということは、ピックアップにも位相(極性)があるということになります。

先にピックアップ側から説明しましたが、今度はギターやベースの弦側からご説明します。
ピックアップの上を弦が行ったり来たりすることで、微弱な電流が生じコイルに電流が流れるわけですが、弦がピックアップに対して、下に動いた時と上に動いた時では、電流の流れる向きが異なります。ピックアップに対して弦が上下に振動することで、電流の流れる向きが変化する信号が生まれます。
もうお気付きだと思いますが、弦をピックで弾く方向を変化させるだけで、信号の位相(極性)が変わります。
ピッキングが音色を変化させる重要な要素の一つですが、ピッキングによって位相も変化させることができるのです。

こうなってくると、ギターやベースの位相が正位相で出力するのか、逆相で出力するのか分からなくなってきますよね。これは私の個人的な見解ですが、ギターやベースから出力するのは、どのような位相であっても良いと思います。演奏家は、耳を使って、ピックアップを選択し、ピッキング方法を変化させ、良いトーンを得られるように工夫します。位相は使用している楽器、奏法とも密接な関係があります。

次回は、楽器用アンプの位相についてお話ししようとお思います。
タグ:位相 楽器
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楽器の位相について(2) 〜位相と周波数〜 [技術]

今回は位相と周波数(音の高低)についてです。

周波数の話をする前に、位相の基本的な現象について少し触れます。
・同じ音が2つ、同じ位相(同位相)で出ているとき、音の音量が上がります。
・同じ音が2つ、片側は正相、片側が逆相で出ているとき、音量が下がります。
位相という言葉を使うと分かりにくいと思いますので、別の例えで言い換えてみます。

海や大きな湖などで見ることができる波を思い浮かべてみてください。波と波が重なる時、大きく山なりに盛り上がる場所と、逆に谷となって沈みこむ場所や平になる場所があります。山なりの場所は、同相(この場合は正相と正相)が重なった場所。平らになった場所は正相と逆相が足されて、打ち消しあった場所。谷となった場所は、逆相同士が重なった場所。このように考えると分かりやすいのではないかと思います。

波でも想像しにくい場合は、少し飛躍してしまいますが、ブランコを想像してみてください。ブランコが進もうとする方向に力を加えると(乗っている人の背中を押すと)進もうとする方向にさらに勢いがつきます。これが同相の2つの音が加わった場合のイメージです。
ブランコが進もうとする方向と逆に引っ張ろうとしたり、地面を足ですってブレーキをかけると、ブランコのスピードが落ちます。これがある音(正相)に対して逆相の音が加わった時のイメージです。

次に「周波数」という言葉を絡めてお話を進めます。周波数という言葉に馴染みが無い方もいらっしゃるかもしれません。音の高低を表す際に使用する言葉ですが、「周波数が高い」とは音が高いという意味で「周波数が低い」とは音が低いという意味です。(大雑把な言い方ですが)ピッチが高い、ピッチが低いと言い換えることもできます。

位相を分かりにくく複雑にする原因の一つが、この「周波数」によって変わる「波長」です。
波長は言葉の通り波の長さです。例えば、ギターの基準音の440Hzは、波の長さ(1周期)が約77cmです。(音速340m/Sとして440Hzでは、340/440=約77cmなので波長が77cm) ということは、77cmごとに波の「山」があり、山と山のちょうど半分の所に「谷」が発生するということになります。この「山」を基準とすると、谷の部分が「逆位相(逆相)」となります。人間の耳に聞こえる低い周波数の限界が20Hzと言われていますが、20Hzの信号を伝えるためには、約17mの距離が必要となります。17mって凄く長いですよね?(笑)

さらにさらに困るのが、低音域ほど空気を伝わるスピードが遅くなるという事実です。広い場所で、「せーの!」で金属の高い音と、バスドラの低い音を「同時」に出したとします。かなり離れた場所で音を聞いていたとすると金属の音が早く聞こえ、そのあとにバスドラの低い音が聞こえるわけです。

波長が長く、伝わるスピードが遅い低音域ほど、扱いにくいという訳です。さらに波長が長いため、人間の耳には、低い音であればあるほど、どこから音が出ているのか把握しずらくなります。この特性を利用したのがサブウーファーです。サブウーファーの設置場所は思ったほど厳密ではありませんし、一般的な部屋で使用するサブウーファーは1個で、ステレオペアで無いのはこのためです。

前回、正相と逆相の話をいたしましたが、音が低い音ほど波長が長いため逆相の影響を受けやすくなります。例えば、ドラムのキックの音や、ベースの音、ギターの巻弦側の低音域などが影響を受けやすくなります。逆に、音が高い音ほど逆相の影響を受けにくくなります。ギターソロでハイポジションをプレイしている時などは逆相の影響を受けにくいということになります。

・低音域は、位相の影響を受けやすい。
・高音域は、位相の影響を受けにくい。
位相を理解するために、周波数(波長)についても考慮が必要と感じて頂ければ幸いです。

次回は、ギターやベースの位相についてお話ししようとお思います。


タグ:位相
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楽器の位相について(1) 〜プロローグ的〜 [技術]

2011年頃、位相について発生する現象や問題点について、少しブログに書きましたが、その後、位相についての話題が尻窄みになってしまいました。今年、PHASE ANALYZERという位相を簡単に判定できる測定ツールの開発が終わり、フリーザトーンから3月27日に発売となります。これをきっかけに、再び位相について話をしてみようと思います。お付き合いいただけると幸いです。

下記は、2011年に書き始めた位相についてのお話。合わせてお読みいただけると幸いです。
楽器の位相問題について(1)
楽器の位相問題について(2)

基本的に人間の耳は、位相に対して鈍感です。例えば、ギター単体の音を聞いて、この音が正相(正位相)だ、この音は逆相(逆位相)だ、と判断できる方は多くないでしょう。逆にある音と比較して、正相だ、逆相だと聞き分けることは比較的簡単です。音質比較と同様に、位相も比較すると分かりやすいわけです。

実は逆相の音は、様々なケースで利用されています。例えばイヤホンで音楽や映画の音声を聞いている時、後方から何かの音がなっているように聞こえる場合があります。これは逆相を利用している例です。

ギターのアンプメーカーで有名なFenderやMatchlessというブランドがありますが、逆相で出力するモデルやアンプチャンネルが多く、狙ったサウンドを優先して設計した結果、逆相を選択しているのではないかと思われます。試しに、逆位相のアンプのスピーカーのプラスとマイナスを入れ替えて接続し、音を鳴らしてみてください。私の主観になりますが、正相にした方が「ミッドに張り」があるサウンドに聞こえます。今までカッティングやアルペジオに向いているサウンドが、リフを弾くのに適した感じのサウンドになる、という感じでしょうか。表現が難しいのですが、イメージとしてそのような感じです。元々のサンドとは異なるサウンドに聞こえます。
(*位相を変えるために機材を間に挟むと、その機材のサウンドが加味されるため、音の比較では追加機材を使用せず、スピーカーのプラスとマイナスを入れ替えてサウンドチェックしました。)

20年以上前に、レコーディングエンジニアの方から聞いた話をご紹介しようと思います。
レコードが主流だった時代、レコードを作るためにはカッティングという工程が必要でした。複数のレコードを生産するための、元になるレコード盤を作る作業と思ってください。このカッティング作業をスムーズに行うためには、低音域の処理が非常に重要になると聞きました。レコードの溝を切るのがカッティング工程ですが、レコードの溝の幅は、最大幅が決まっています。幅の制限を越えると、隣の溝まではみ出て切ってしますから(笑)周波数が低く、振幅(レベル)が大きい信号ほど、深くさらに幅をとってカットする必要があります。マスタリングである程度の振幅調整がされたとしても、カッティングにマッチしているかどうかは分かりません。このため、フェアチャイルドのようなステレオコンプがカッティング作業で必要だったわけです。低音域のレベルを抑えて、溝の幅が規定値を超えないように押さえていたわけです。(昔のレコードを聞くと、低音域のレベルが、CDとは比べ物にならないくらい低いですよね。)
そして、低音域のレベルの話だけではなく、逆位相の話が続きます。レコードのカッティング作業では、逆位相の音をある一定以上のレベルで入れると、針飛びが生じるというのです。仮にカッティング作業で逆位相のサウンドが溝に加工できたとしても、一般のレコードプレーヤーでは針飛びすると聞きました。逆位相の音はレコード針の針飛びを引き起こす。 物理的な波形ではなく、データを使用したCDでは起こり得ない現象です。なぜ針飛びが発生するかは、専門の文献に譲るとして、逆位相をマスタリングされた音源に極力入れないと言うことが重要だったことが分かります。買ったレコードが針飛びして、曲が途中でスキップしてしまうのは困りますよねw

このようにレコードが主流だった時代、逆位相はNGだったわけです。
ところがCDが主流になると、皆様がご存知のように大きく変化が訪れます。レコードという物理的な制限からデータに移行し、制限が少なくなって行きます。

逆位相は基本NGだった時代、逆位相の楽器をどうやってレコーディングしていたの?と疑問に思う方も多いと思います。実は古いミキシングコンソールにも位相計が装備されていて位相が正相なのか逆相なのかわかるようになっていました。SSLには位相を見るためのリサージュと呼ばれる位相計が付いていますが、古いNEVEのようなレコーディング用コンソールには、針のメーターでセンターより右が正相、左が逆相となる位相計が付いていました。そしてミキサーのマイクプリアンプセクションには、位相を逆位相にするスイッチが必ず付いていました。レコード時代は耳を使って物理的にマイクの位置をずらしたり、マイクプリで位相を逆にしたりする事で位相をコントロールしていたわけです。

次回は、位相の話を難しくする周波数や距離との関係についてお話ししようと思います。

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