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イギリス滞在記(6) [音楽]

8月17日(土)

今日は朝早くから日本で借りた携帯の電話が鳴って、飛び起きたが切れてしまった。すぐに何かあったかと思って妻に電話したが、何事もなくてよかった。風邪はすでに良くなっているようで良かった。息子はじいちゃん、ばあちゃんと買い物に出かけていて声が聞けなかった。残念!

今日は、ピートの家に行ってPAのセットをチェックする日だ。お昼をまたご馳走になって、まずはUckfieldに買い物に行った。本屋に行ったがギター関係の雑誌が全くおいてない。ヘビーメタル系の本が2冊おいてあっただけ。この辺は大きな本屋さんないのかなぁ? いやなくても大丈夫だよとピートに話した。まあないものは仕方ない。

その後、ピートの自宅に戻って、PA機材のチェックをした。ガレージに行くと、2階が改造してあって、スタジオになっていた。マイクプリアンプもあった。ピートの長男のミンガスがたまに来て、打ち込みやレコーディングをするそうだ。(現在、ミンガスはピート、リンダと一緒にピートコーニッシュ製品を製作しています。)ピートもここで音出ししたりするそうだ。2階にライブ本番を想定して、セットアップしてマイクの感度や出力のバランスをとってチェック完了した。電気の工事も屋根裏の改造も全部自分でやったらしい。よくやるなぁと思ったが、そういえば韓国のパクさんも自分でスタジオ作ったっていってたっけ。パッチベイも手作り。エフェクターラックは、ルーリードのスタジオからもらったものらしい。大きすぎるので、半分に切って使っていた。至る所に工夫の跡が見られる。電源工事ももちろん自分でやったようだ。ミンガスのアンプとルーティングシステムはここに置いてあった。それにしてもうらやましい環境にいるなぁと。でも考えてみれば、ピートとリンダもこの年になってようやくのわけだから、自分もなんとか40歳を目標に家でも持つか???いや〜無理かも。

今日昼食でリンダが話してくれたが、息子達は月に800ポンドくらい払って、アパートを借りているそうだ。そんなに払っていたら、貯めるお金などあるわけない。イギリスでは、だいたい25年ローンで家を買う人が多いらしいが、最低購入する家の10%をデポジットとして払わないと(いわるゆ頭金)購入ができないそうだ。
ローンにすると一ヶ月あたり650ポンドくらいらしいが、それにしても高い。若い世代の人は、家をもつのが不可能に近いと言っていた。なんか日本より悪い状況下もしれない。(2002年、当時のメモには、1ポンドあたり197.4円と書いてあったので、それを元に計算すると650ポンドは128,310円に相当)

ピートの簡易PAシステムはBOSEのスピーカーとアムクロンのパワーアンプ。タスカムのミキサーだった。チェックが終わって、帰り道、完全に迷って完全に違う方向に行ってしまった。通常なら30分で帰れるところ、1時間以上かかってしまった。さてこれから、どこへ迷い込んだか地図を見ることにしよう。
そういえば、ピートとリンダが飼っている犬は、兄弟らしい。名前はモンクとピコ。青い首輪がモンクですこし痩せている。緑の首輪がピコで体が大きい。名前の所以をいろいろ説明してくれたが、英語がわからなかった。うー残念。

倉庫でピートとリンダが結婚したての頃の写真を見せてもらった。二人ともほんと若かった。そりゃそうか。ピートは今よりずっと痩せていて、ほほにヒゲをはやしていて、神経質そうな感じだった。照れくさそうに見せてくれた。

DSCF0033.JPG
当時住んでいた家からの眺め



8月18日(日)

今日は、ピートのギグの日だ。朝からピートの家に行って、機材の積み込みを手伝った。30分くらい運転して現地についたが、ブルーベリー鉄道の駅近くを通った。トーマス機関車で有名な鉄道である。子供たちが多く訪れる場所で、今日も駐車場はいっぱいだった。イギリスには現在でも蒸気機関車がいくつか走っているラインがあるそうだ。さすがイギリス!今度、別の日に来ようということになった。息子にお土産になりそうだ。

今日ピートがプレイするところは、古い小さなお城のようなところで、内部がバーになっていた。裏庭には、池もあってすばらしい眺めだった。写真を撮り忘れた!ここで結婚式を行なうことが多いらしい。到着したときも夜通し飲んでいたような人たちがたくさんいた。

早速PAの機材をセッティングしてチェックした。次々にバンドのメンバーもやってきた。4人のジャズバンドで、サックス、ピアノ、ベース、ドラムである。ギグがはじまると、ピートはのりのりでプレイし始めた。ドラムとピアノがむちゃうまで、今日初見の曲も数曲あったそうだ。ピートのオリジナル曲もやっていた。自分の曲のことを”My tune”と英語で言うそうだ。1時間のギグを2回やって、普段あまり聞かないジャズのギグが終わった。
お客さんは少なかったが、ピートは演奏することがうれしかったようで、終始上機嫌だった。呼んでいた人の中に、ピンクフロイドのアルバムのアートワークをやっていた、コリン夫妻が居て紹介してくれた。何気なく、すごい人と仲がいいんだなぁ。少し話したが、訛りのある英語だったので、全く何を言っているかわからず、リンダが通訳!してくれた。

片付けをちゃっちゃとすませ、ピートの家に戻り機材をガレージに戻してからお茶をいただいた。飼っている犬がずっとまとわりついてきて、服はよだれだらけになってしまった。また、でかいのだ、この犬たちは。モンクは、手をかけてもたれてくるし、まあ、結構気に入られらみたい。

(つづく)
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イギリス滞在記(5) [音楽]

8月15日(木)

今日もいい天気だ。朝、車で通勤のとき、後ろからおばさんが乗った車にあおられた。むかっ!
ピートの職場についたら、牛が集まってきていて、私の車をみてさらに寄ってきた。じっと見つめてくる。あっちいけーと思いながら、にらみかえしても、じーっと見てくる。ハエがたかっていて、うわくさそー(笑)

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以前、私が設計したエフェクターについての指摘がピートからあった。その内容を思い出したので書くと、
1. スイッチングのノイズが非常に気になる。切り替えは、初段のバッファーの後からの方がいいのではないか?
2. トーン回路やブースト回路は、まったく問題ない。
3. 一番頭のバッファーはいらない。いい音を作るには、回路を複雑にしないほうが良い。
4. コストを抑えるにはパーツを減らしたほうがよい。電源回路もすばらしいと思うが、レギュレーターだけで、十分なのでないか?

以上4点が話の内容であった。
(技術者同士が回路図を見ながら、いろんな観点から意見を言い合うことは非常に重要です。自分では気づかない所も指摘してもらえる可能性があり、さらに良い製品になるかも・・・)

今日も充実した内容であった。まずツールの重要性の説明を受けた。まずいろんなサイズのドライバー、ドリル等をそろえる必要がある等。今日、必要だと言われた工具類は、下記のとおり。
1. いろんな種類のドライバー
2. 同上のレンチ
3. 同上のドリル
4. ユニットを固定するための木とホルダー
5. ドリルがユニットの奥まで入っていかないようにするためのストッパーつきドリル等。スペサーで代用できる。
6. ドラフティングテープ
7. 各種リベット
8. 絶縁シート

等々たくさん。
今日のメインの仕事は、ポールマッカートニーのストロボチューナーを治す修理である。シャーシの補強と、基板の取り付け改造。壊れていたインプットジャックの交換を行なった。時間がかかったがピートに誉めてもらった。うれしー!「まず、自分で考えて、どうすれば信頼性をあげられるか考えてみなさい」といわれたので、がんばった。とりあえずテストにパスしたようだ。

次は、アレンビックのプリアンプの改造を始めた。すでにピートが途中まで改造していたものだったが、フロントパネルについているインプットジャックをリアに移動するということで、追加の改造をした。今日は、途中で終わってしまったが、ジャックへ半田するのが非常にむずかしかった。また穴空けも非常に神経をすり減らすような作業であった。ドリルが穴を空けた後、どんどんドリルが穴に入っていくのを防ぐためにストッパーをカスタムで作っていた。ドリルの歯が1cmくらいしか出ないようになる。デスクの手前端にラックケースを配置し、傷が付かないように木を使ってクランプする。いろんな工夫が見える。いままで培ったものなんだなと実感する。

ところでドライバー類は、ドライバーの番号のカラーコードを、ドライバーの軸に付けていた。判別用。

帰り際に、BUFF BUSTERという新製品のデモをしてもらった。これは以前私が、バッファー後にゲルマニウム物のエフェクターを接続すると、正常な音にならないので、ハイインピーダンスに戻すユニットは作れないか?と話したところからくる。覚えてくれていたのだ。当時は、回路のアイデアまで、渡してもらっていたが、時間がなくて試していなかった。バッファーを通しバフバスターを通した音と、何も接続せず直接ギターの音とを聞き比べ、非常に近い音がでる事を確認した。ギターのピックアップによって音色が変わる。このためトーンアジャストがついている。ギターのピックアップによってインピーダンスが異なるためだと説明を受けた。
その後、このユニットをどのようにデモするのかが問題だなぁとなった。分かりやすく効果を説明するには、どうしたらいいか、、、
今日、エキサイトすることがあるぞ!と言っていたのは、このことだったのだ!
(このBUFF BUSTERのアイデアは、私からのものであったのですが、「時間が経ってもYukiが作らないから代わりに俺が作った。これは俺のものだからなw」 とその後、ピートは製品化してしまいましたw)



8月16日(金)

今日は、朝から昨日のつづき、アレンビックのステレオプリアンプF2Bの改造を行なった。基板にシールド線を取り付け、フロントパネルにブランク用のブラックのキャップを取り付けた。穴のサイズを大きくして、ジャックを取り付けてあったものを外したため、キャップをシリコンで取り付けた。シリコンは、建築で使う大きなサイズの物を使用していた。ピートのペダルボードは、ねじの他にこのシリコンも塗りつけて、補強しているそうだ。
このアレンビックのプリアンプの回路は、あるフェンダーの回路と全く同じ物である。このままだとハムが出てしまうので、ピートは追加で真空管を使用した回路を追加して、出力もバランス回路になっていた。またこのユニットは、電着塗装を行なっていてしっかり塗装を落とすことがアースを確実に落とすために重要である。
また、このプリアンプは低音が強めに出るためピートはMIDスイッチを追加していた。
ピートはフェンダーの回路が好きなようで、相当研究しているようだ。トーン回路のピークは、おおよそ3kHzになっていているそうだ。ピートが持っているマーシャルはトーン回路がフェンダータイプになっているそうだ。
またマーシャルのインプットのリンク方法についてアドバイスがあった。通常クロスの配線をして、ブーストするが、それはフェイズシフトするからだめだそうだ。抵抗とケーブルのもつキャパシタンスによって、位相シフトしパンチのある音が出ないとのこと。よって、入力の前でパラにするか、内部で配線するかとなる。

ピートは音出しのチェックをするとき、必ずハーモニクスのチェックをしている。ハーモニクスが損なわれないようにしているそうだ。また音質もなるだけスムーズにフラットを目指しているらしい。

午後からは、PMS(MIDIルーティングコントローラー)用のソフトを動かすために、MACにインターフェースをつなぐ作業をした。うまくMIDIインターフェースが認識してくれず、今日のところは諦めた。インターフェースは、MIDI MANの1x1という非常に小さいもの。こちらの送ったMIDIファイルは無事認識された。MIDIプレーヤーでも問題なく動いている。OMSというソフトを入れないとだめなようで、そのあとにドライバーをインストールしたが、うまくいかない。日本でもちゃんと確認する必要がありそうだ。とりあえずファイルが開かないという問題は解決した。

夕方早く帰宅し、ここから30分くらい行ったところにある教会所有の小さなホールに行って、ピートのバンドのリハーサルを見た。初見の楽譜をみんなで演奏している。18人くらいの大きな所帯のバンドだった。メンバーのドラムと一人のトランペットがプロだそうだ。休憩中に、近くのパブに行ってビールを飲み、戻って30分練習してピートと帰った。驚かされたのが、ピートは楽譜が読めるということだった。曲をピアノでコピーして、各楽器のパート分までアレンジし楽譜に書いていた。それも手書きで!おそるべしピートコーニッシュ!ピートは、10年くらい前にアレンジの勉強に、土曜日の午前中、ロンドンの大学に行っていたらしい。QUEENと一緒に仕事をしていたフィルハーモニーのアレンジャーが体を壊したあと、音楽が好きで大学で教えていたそうだが、その授業に参加したそうだ。別の意味でのバックグランドがしっかりしているのだなと、本当に感心した。

(つづく)
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イギリス滞在記(4) [音楽]

8月13日(火)

ピートからダイオードチェッカーをもらった。かわりにピートには半田吸い取り器のセットをあげることになっている。

今日はケーブルの製作をじっくりと習った。半田付け作業がメインである。半田付けはスムースでストレスがなくというのが基本だとのこと。まずワイヤのストリップが難しい。いままで加工したことがない種類のケーブル。2芯シールド線である。外皮がラバーで、耐熱になっていて、その内部が黒コットン、紙、シールド線となっていてさらに内部はいろいろ入っている。さらに内部の線材は、ワイヤのように弾力がある。むずかしー!
なんとかすべて半田付けが終わった。特にシールド線の処理が難しい。処理したあと、一本の線のように見えるように処理するのがよいとのこと。外皮を少しめくりその中からシールド線を解き、いったん後ろにまわして一本に束ねる。
またシールド線を途中で断線したまま使用しようとすると、シールド線が回りにタッチしたりして、ノイズを発する可能性があると言っていた。ピートが使用しているプラグはノイトリックが多いのだが、留意点がいくつかあった。まず半田付けするときは、予備半田を必ずすること。半田付けをした後、ストレスがかかってないか、ストレートに付いているかを確認する。またシールド線とホットの間が近くならないようにすることも大事とのこと。空気が一番良い、絶縁材だと言っていた。そりゃそうだ。チップから半田付けし、次にシールドを半田付けする。
ヒートシュリンクのときは、必ずセンターからシュリンクをはじめ、外側にシュリンクしないと中央に空気が入ってしまう可能性があるからとのこと。

ポールマッカートニーのルーティングユニットは1989年に作られ1992年に改造された。入力回路に簿いゲインボリュームがあって、これをロックタイプに変更した。ロックタイプのコレットは別ピースであった。
ボリュームを使うときは、必ず同じロットを使用し、2 INPUT等、セットの場合は、かならず隣り合ったものを使用すること。これで精度が上がる。
ちなみにリニアのボリュームはセンター位置が6dBダウンでLOGテーパの物はセンターが大体20dBから15dBダウンである。

基板が大きくなると機材がゆれたとき、曲がりを吸収できない。また基板自体が半田付けして曲がってしまうので、ピートは必ず小さな基板で組み上げるようにしている。各ケーブルはかならずループ(たるみ)をつくり振動に耐えうるように考えている。
現在は、ボリュームのターミナルやヒューズホルダーにもスリーブをつけるようにしている。これは絶縁用。
ラック内部の配線材に使用しているケーブルの外皮は、PBCインソレーションといわれているもので、いくつか問題がある。本当は、ラバーのものが良いらしいが、高価なので内部の配線には、このPBCタイプを使用しているとのこと。欠点としては下記の通り。

1. 高温で溶ける。(ヒートシュリンクは使用できない)
2. 低温で硬くなる。
3. 経年変化で硬くなっている時がある。

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こちらがポールマッカートニー向けに製作したワイヤレスケーブル



8月14日(水)

今日は、ポールマッカートニーのシステムを仕上げる日。ユニットやワイヤレスのテストを行なった。自分が作ったワイヤレス用のケーブルをすべてテスターと音出しでチェック。問題ないことを確認。ワイヤレスも外に出て、約50m届くことを確認。すべての入力にオシレーターからの信号を入れて、エフェクトON/OFF時や入力によるレベルの違いを調整し、ユニティに設定。必ずオシレーターからの信号をレベル計で測定して確認し、さらに音を出して再確認すること!ワイヤレスのチェック時もケーブルをゆすって問題がないか確認した。
ポールマッカートニーの使用するワイヤレスはSURE製で非常にすばらしいものである。送信機は、ダイキャストでしっかりしていて、9Vの電池を使用せず単3乾電2本での駆動になっている。ピートは、すばらしい設計だと言っていた。電池は、セルがすくない方が、インピーダンスが低いので、電流を取り出せる能力が大きい。9V電池は、いくつもの小さなセルがシリーズに入っていて、インピーダンスが高いそうだ。単3電池は、セルが2個くらいなのでインピーダンスが非常に低く良いそうだが、エフェクターでは9Vが標準になってしまっているので、どうしようもないといっていた。
送信機の電源をOn/Offしてもノイズがまったく出ないのですばらしいと言ったら、プロフェッショナルなワイヤレスはノイズが出ないのだと。そらからSUREのワイヤレスは、送信機からのシグナルが低くなっても、変なノイズを出さないで、ミュートするようになっているらしい。

ワイヤレスが故障したり、ギターを交換する必要がステージでは、いくらでもある。よって、すぐにギターを取り替えて演奏を続けられるようにする必要がある。ピートのやっている方法は、スイッチでA/B切り替えを行い、すぐにギターをスイッチできる方法と、フロントパネルにギターインプットを配置し、ジャックのスイッチを使用して、プラグを指すと直ちに切り替わるようにする方法。以上の2つがある。

ワイヤレスのレベルとギター(ケーブル)のレベルは、必ず同じレベルである必要がある。ワイヤレスのシステムがギターを強く弾いてもひずまないようにレベルを設定し、その後それにケーブル側のギターレベルを合わせる。

LEADという表記は、混乱のもとになるので、イギリスでは使わないらしい。ローディが混乱する可能性があるとのこと。LEADには、いろんな意味があるからだそうだ。ポールのラックには、DISTORTIONと表記されていた。SUTUDIO22ブギーのアンプを使用しているそうだ。

ラックの内容は、ギターインプットとベースインプットがあって、切り替えることができる。ギター側には、CE-2のラックマウントタイプとSD-1のラックマウントタイプ。今回は、P-2 FUZZのラックマウント版を追加した。

引き出しには、ピックやおそらくファンから投げられたベアのぬいぐるみ。ツアー用のセットリスト。それから驚くべきことにポールの曲の詩集が特別にMPL(ポールの会社)によって作成されていて、その冊子が入っていた。

ポールのストロボチューナーの入力ジャックが壊れていたので、テストだといわれ、どうやったら、壊れにくいように改造できるか?とピートに言われた。機構的にまずい設計で、フロントのジャック(モールド)2本だけで基板がとまっていた。今日は時間がなくなったので、明日にすることになった。

入力インピーダンスの重要性について習った。ピートがなぜTrue Bypassにしないかのレクチャーを受けた。エフェクターが2つや3つであれば、True Bypassもいいだろう。しかし、それ以上になったとき、ケーブルの長さの総合計は、相当なものになり、信号のロスは大きなものになる。これを考えないといけない。またTrue Bypassされた次につながるエフェクターがもしクライベイビーのように入力インピーダンスが低いものであれば、信号がどうなるか容易に想像がつく。通常は後ろに何がつながれるか、想定できないので、何がつながれても問題ないようにするのが一番良い。

ピートは、A/B比較できるダイキャストボックスをみせてくれた。これに、ピートのLINER BOOSTをつなぎ、音の比較を行なった。使用したアンプがJC120で入力インピーダンスが低いので、とくにLINER BOOSTを使用したときの効果を認識できた。コピーできるように、写真と回路図をとらせてもらった。また、ボリュームを絞ったときの高域の劣化を確認できた。パラボックスを間にいれて、バリアブル抵抗を途中につなぎ、抵抗値を変えながらそのロスがどれくらいあるかを耳で確認できた。
重要なポイントは、高域が失われると、これを補正するためにアンプのトレブルもどんどんあがり、結果的にノイズが多いサウンドになってしまうということであった。ノイズを減らすためには、アンプでトレブルを上げる必要がないように、ギターの信号のロスを極力減らすということが重要とのことであった。
LINER BOOSTの入力インピーダンスは1Mである。多くのチューブアンプの入力インピーダンスが1MΩなので、それにあわせたらしい。それがもっともナチュラルとのこと。
A/B比較用ボックスの製作用にスイッチを売ってもらった。価格は、GBP5.50。

入力インピーダンスを計測する方法を聞いた。ピートはそれを簡易化するための、計測器をカスタムで作っていた。ソースと測定する機材の間に可変抵抗を入れて、ちょうど-6dB下がる抵抗値をさがす。すると分圧比で「入力インピーダンス=可変抵抗値」がもとまる。ただ、FUZZのような信号をひずませコンプレスするタイプのものは、出力レベルが正確にでてこないので、入力側で測定するしかないが、入力インピーダンスが10MΩくらいあるプローブでモニターしないと正確に測定できない。日本に帰ったら、ステップタイプの可変抵抗器がいくらくらいか調べる。

JVCで私が設計していたデジタルアンプの話になって、スイッチング電源の話になった。イギリスではグランドが必ずあって、接地されているが日本はどうなっているのだという話だった。シャーシの電位が定まらないので、非常に問題だと言っていた。ノイズは、グランドに戻すものであるが、フローティングされていたら、シャーシが汚いままではないか?と不思議がっていた。たしかにその通り。

話の流れで、スイッチング電源を用いたラックエフェクターとハイゲインのエフェクターをつないだときに、すごいノイズが出たという話をした。ピートの経験では、あるフランジャーの内部クロックが垂れ流しだったため、そのあとにエコープレックスをつないだら、クロックの低域分周された信号がノイズとして出てきたと言っていた。

ポールマッカートニーのラックの仕事に戻る。システムの接続に使われているマルチコアのピンが曲がっていた。ダミープラグ(保護用)を付けないまま、使用していたようだ。ポールのシステムは、ペダルが2台つながるようになっていて、本人用とローディ用のペダルがある。それぞれ、チューナーがあり、スイッチもリンクして動作するようになっているので、1つのスイッチあたり4本の線が必要で、多ピンのケーブルが必要になってしまったと言っていた。最近はそれを避けるために、On/Off/Remoteのスイッチをつけるようにしたとのこと。

MIDIペダルの話。モーメンタリースイッチはITWのスイッチがベストらしい。クーラシェイカーのMIDIシステムは、このスイッチを使用しているらしい。壊すのが難しいくらい丈夫らしい。また、ピートはMIDIペダルもカスタムでケースをおこすので、スイッチとディスプレイとCPUボードが別のピースになっているのが有難いらしい。

今日は、内容の濃い一日だった!

(つづく)
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イギリス滞在記(3) [音楽]

8月11日(日)

朝から洗濯!途中で動かなくなって、どうしたのかと思ったら、プログラムスイッチが途中で動いているではないか?戻したがまた止まった。ドアが開かない!止まってから数分は、保護のためすぐにドアが開かないようになっているらしい。ふー。ぜんぜん、日本と違うぞ。

今日は、ピートの家の庭の手入れを手伝いに行った。ラズベリーの手入れだ。毎年夏に収穫して、古い枝は捨てて新しい枝だけにして、枝を紐でつないで固定しているそうだ。たわいもないことを話しながら、午前中の作業を終え、昼食をともにした。リンダのお母さんが来ていて挨拶した。すごく穏やかなソフトな感じの方で、しゃべり方が弱弱しかった。ひじを骨折したそうで、手術のあとが痛々しかった。
昼食は本当においしかった。野菜は無農薬野菜だそうで、全部おいしかった。もちろんパンとハム、チーズ、サラダって感じの内容だが。一緒に出てきたスパークリング・アップルジュースも最高においしかった!ピートも言っていたが、今日のランチは格別うまかったと言っていた。「多分、Yukiが来たからじゃないかな?毎週くるか?」みたいな事を言って笑った。
(Yukiというのは私の海外での呼び名。欧米人はユキヒロと発音するのが難しいようで「ウキイロ」に近い発音になってしまうことからユキになりました)

ピートの家はバスルームが2つあって、一つはピートが作り直してるんだといって見せてくれた。イギリスのお父さんは、家の修理や工事を自分でするらしい。またバスルームも広いんだこれが!それから庭にはたくさんの植物が植えられていて、ピーチやアップルの木も庭に植えられていた。昔この家は、このあたりの地主さんが所有していたものらしく、昔は馬を飼っていたところだそうだ。リンダはなるべく手をいれて変えたいらしい。それからリビングにはピートの作ったオーディオセットがあって、スピーカーもクロスオーバーもプリアンプも全部ピートが自分で作っていた。とくにプリアンプはかっこよかった。今度写真を撮ってこよう。

帰りの車の中で、音作りをどのようにやっているの?とピートに聞いてみた。必ず新しくつくるサーキットは、音に変化がないかどうか確認して、注意深く設計しているとのことだ。特に音作りをしているわけではないらしい。外部からノイズを入れないように、ノイズを出さないように注意深く設計しているそうだ。特にギターの微小信号をノイズなく増幅するのは難しいが、私はそれを達成したと話してくれた。ノイズのないクリアな音がピートの音質といえそうだ。
それから、前回買うとピートに話していたアンプやエフェクターを送るのにパッキングサービスが必要だと言われた。ピートではパッキングが難しいとの事なので、送るときは近鉄に連絡して送るのがいいかもしれない。



8月12日(月)

朝、レンタカーやさんに行って、日産MICRAをとりあえず7週間レンタルした。受付のインド人ぽい、おばさんは、ライセンスとかエレクトリックエンジニアのスペルがわからなくて、ピートに聞いていたのが微笑ましかった。入ったばかりの人なのかもしれない。7週間で約15万円。一応こちらが想定していた価格であった。250ポンドはデポジットとして別に払った。綺麗なまま戻したら返してくれるそうだ。地図も一緒に購入した。

車を無事レンタルしたあと、ピートのあとについて車を運転した。まずは買い物にTESCOへ。
でかいスーパーマーケットだ。買い物を済ませたあとは、ピートのワークショップ(工房)へ。
今日はP-2FUZZのラックマウントタイプの作り方を見せてくれた。

1. まず電源周りから作り始める。トロイダルタイプの電源トランスの配線は、ハムの調整のため回す可能性があるので少し長めにして配線しておく。

2. フロントパネルの接合を確実なものにするため、かならずヘアラインのメッキも削って取る。

3. ACコードのグランドピンとリアパネル、フロントパネルの抵抗値が1オーム以下であることを確認する。

4. 電源のN/H/Gすべての組み合わせで絶縁を確認する。もちろんH/N間はトランスの巻き線がわなので抵抗値のみ確認する。
(日本のPSE対応のための絶縁耐圧試験に近い作業です)

5. 次にAC電源を投入し、スライダックをゆっくりとあげていく。想定しているACの上限まで電源電圧を上げトランスの2次側に入っている、コンデンサの耐圧を越えていないか再確認する。トランスのばらつきを考慮したチェックだと思う。
(カスタム品ならではの細やかなテストをピートは実施しています。)

6. ピートは、非常にノイズの少ない電源がほしいときは、ダブルレギュレーションの方法を取っている。例えば、最初に32Vや25Vくらいの電源を用意し、その後その電源から9Vを作るという方法だ。

7. 配線が終わったら音出しチェックを行い、必ず電源トランスを回転させハムノイズが最小であることを確認する。

今日はポールマッカートニーのワイヤレス用カスタムケーブルの製作を始めた。添付されていたケーブルは、新品なのにすでに酸化して、シールド側が緑に腐食していた。ピートから徹底的に製作方法、半田の方法を聞いた。半田付けにどれだけ時間がかかるんだぁってくらいの内容だ!ピートはちゃっちゃ作っているので、これも慣れなのだろう。それにしてもピートが用意したケーブルは製作しにくい。日本製のケーブルは作業しやすい!

特に注意されたのは、配線してケーブルとプラグが必ず直線になっていないといけないということ。ケーブルやワイヤにストレスをかけてしまうからとのこと。それから空気が最高の絶縁だから、他のケーブルと離して半田つけする事!と教わった。それからもっと大事なことは、スムースにハンダ作業!

(つづく)
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イギリス滞在記(2) [音楽]

8月9日(金)

今日は、ピートのバンドのベーシストGUSさんに会った。dpと書いてあるベースを4本も持ってきて見せてくれた。すべて5弦ベースだった。ベースの簡易システムをピートが製作することになっていて、その打ち合わせだった。一年間くらいお金がなくて頼めなかったらしい。GUSさんの持ってきたアンプは、リンダが半田付けしたキットアンプのようだった。
ポールマッカートニー用にP-2 FUZZのラックマウント版を製作していたのを見せてもらった。

今日の話の中で私が重要だと感じたポイントは、

1. フロントパネルとリアパネルの接合を良くするために、穴をあけてリベットを打つ。フロントパネルは特にメッキがかかっているので、特別に作った専用ドライバー(ピートは必要な工具を自作しています)で傷をつけ、しっかりと接合するように工夫する。

2. 以前のモデルは、BOSS/SD-1を組み込んでいたが、この時の入力回路はトランスインプット(入力回路にシグナル用のトランスを使ったタイプ)であった。トランスは物理的にセンタータップを設けているために、CMRRが5,60dBが精々であった。インプット回路を変更し、CMRRを調整できるようにしたら約100dBのリジェクション効果を得ることができた。

3. トランスをインプットとアウトプット両方に使用すると、f特が劣化し理想的ではない。

4. LEDの明るさと色は必ず確認してから装着する。同じに並ぶラック等があったら、場所や色、明るさをそろえる。ピートはLEDテスターを使って全てのLEDを確認していた。

5. メタルワークは、振動によるびびり(鳴き)を抑えるために、必ずシール(シリコン)すること。ねじも同様。

6. ピートのスタビライザーは、オートスライダックが入っている。モータードライブになっているため、電気的ノイズは全く出ない。サーボアンプが制御用に入っている。

7. ロジャーウォータズのケーブルが断線していることがあった。完全に断線していたので、どこなのか探したところ、ケーブルの中の途中でシールド側が完全に切れていた。コットン(シールド線の絶縁材)が汗を吸って、シールド線を腐食したのが、原因とのこと。プレイヤーの汗が非常に問題になることがあるとの事。汗が付く可能性があるところは、半田上げしてあるケーブルが望ましい。裸の銅線に汗が付くと酸化してしまうので、問題が出ることがある。

8. リレーは、少し高い電圧でON/OFFさせたほうが反応が早く良い。

夜は映画に連れて行ってもらった。リンダがわざわざ予約してくれて“GOLD MEMBER”というコメディものを見た。めちゃめちゃ面白かった。日本でもこれは見てみよう。



8月10日(土)

今日は休みかと思ったら、仕事だった。ピートは土曜も働くのね。働き者!今日は、いろいろ工具について話してくれた。ネジの種類やドライバーなど。ものすごい種類の規格があって、とても覚えられる量ではなかった。ネジは、締めたとき必ずナットから出るようにし、ナットから最低1.5溝分出ていると信頼性があると教えてもらった。
ピートは、抵抗を通販会社から購入しており、すごく良い抵抗だそうだ。

マスターオシレーターの話になった。いくつもチューナーが存在している場合は、マスターの440Hzオシレーターを作ってそれで全てをキャリブレートしているそうだ。ペダルボードのチューナーもすべてそれで調整して出荷しているそうだ。これは必要だ!

朝、LINER BOOSTが故障したことがある事をピートに伝えた。入力回路に使用しているICは、入力回路がFETタイプで保護用のダイオードも入っていないので、アンプや他のエフェクターの電源が入っている状態で接続すると、入力回路が破壊するのだろうとピートは推測した。
イギリスやアメリカは必ずアースを取っているので、このような事故は、いままで起こった事がないと言っているが、日本では状況が違うので、日本向けに変更しないといけないな、基板もそれにあわせて変更しようということになった。(後日、検討を重ね最終的に変更はしませんでした)

ピートからすると、接地されていない機材がどういう振る舞いをするのか想像がつかないと言っていた。作業場を作る時は、アースを落としたほうがよいとアドバイスを受けた。

入力回路を検討するにあたって、ローランドの回路図を見せてくれた。(イギリスでは有償ですが回路図提供のサービスが一般的に行われているそうです)SDEシリーズは、入力回路にダイオードと抵抗が入っていて、電源電圧以上に振れないようにダイオードでクランプし、入力とシリーズに電流制限抵抗を入れてあった。おそらくローランドも同じような問題を抱えていたのではないか?と言っていた。FETインプットタイプのICを使用するときは要注意だ。

(つづく)
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イギリス滞在記(1) [音楽]

2002年、2ヶ月間ほどイギリスに滞在しました。ピート・コーニッシュ氏とのプロジェクトと言うことで、胸の高鳴りと少しの不安を抱えながら、イギリスに向かったのを覚えています。なぜ、ピート・コーニッシュ氏の元に行くことになったのか、少し流れをお話ししたいと思います。

ピート・コーニッシュ氏は、1970年代からカスタムペダルボードを製作したりラックシステムを構築したり、機材をカスタマイズしたり、多くのミュージシャンの要望に応えてきました。特にイギリスにおいて大きな功績を残しています。ポールマッカートニーやスティング、デイヴ・ギルモア、ジミー・ペイジ、エリック・クラプトン、ブライアン・メイなど多くの著名人の機材に関わってきました。私は1989年にピート・コーニッシュ氏の存在を知り、いつか直接会って見たいと思っていました。

1998年頃、ローリングストーンズのテックをしていた方と知り合いになり、それがきっかけでピート・コーニッシュ氏の連絡先を手に入れることができました。1989年に手に入れたピートコーニッシュ氏の住所・電話番号はすでに変わっていて、連絡を取ることができないでいました。連絡先が分かり、すぐに電話をしてみました。初めて電話した時のことを覚えています。以前、イギリス人の方と数ヶ月一緒に仕事をした経験があったので、イギリス英語には慣れていたつもりでしたが、電話だと全然聞き取れず、たまりかねたピートが、FAXでやり取りしようと提案してくれました(汗)それからFAXでのやり取りが始まります。
当時は、ギターテックやベーステックとして、主にレコーディング現場での仕事をしていた私は、ピートにエフェクターやパラボックスなどを作ってもらい仕事で使用していました。そのクオリティーの高さに本当に驚かされ、自分もこのような製品が作れるようになりたいと思ったことをよく覚えています。

当時、ギターテックの仕事の他に、機器の電気設計やカスタム品製作、システム設計なども行なっていましたが、一人前のプロオーディオ機器の設計者になりたいと言う気持ちが徐々に強くなり、テックの仕事もやめる決意をし、中途採用で日本ビクターに入社します。中途採用試験のために半年間、死に物狂いで勉強しました。大学受験の時より勉強したと思います(笑)

私が日本ビクターに入社し働き始めても、ピートとのFAXのやり取りは定期的に行いました。電気回路の話をFAXでやり取りです。アナログ回路の技術はピートにはかないませんでしたが、デジタル関係のことは私がピートに教える立場でした。この頃になるとE-mailもインターネットも普及してきていて、徐々にFAXからメールに移行して行きましたが、2001年まではFAXも併用して使っていました。図や回路を書く時は、FAXの方が簡単で早かったのです。

2002年に転機が訪れました。ピートからイギリスに来ないか?とお誘いがあったのです。以前から、私がギターやベースのシステム構築に興味があることをピートは知っていましたので、それを汲んでのお誘いでした。当時、息子が2歳でしたので非常に迷いましたが、これを逃したらもうイギリスに行くチャンスは無いだろうと思い、決心してピートの元に行くことになりました。
まずは、目的が無いまま来ても意味がないから、一緒にラックシステムを製作しようと提案がありました。
ピートは、「一緒にシステムを作って、君が何ができるか分かった後、その後のことを相談しよう。」と私に言いました。確かにその通りです。研修生になるような気分でピートの元に行くことになったのです。

イギリスでは、毎日その日の出来事や、ピートに習ったことを日記につけていました。読み返してみて、補足が必要と思った箇所は加筆しています。またピートからこれは他の人に教えてはダメだよ(笑)と言われたことは、怒られるといけないので、削除していますことをご了承ください。
少しでもギターやベースのシステム、カスタム品について興味を持っていただけると幸いです。

約2ヶ月分の日記ですので、結構長いです(笑)
それでは、スタートしたいと思います。

8月7日(水)
イギリスに到着。ピートとリンダが空港まで迎えに来てくれて再会した。感激!これから住む家に連れて行ってくれるとの事。どんな感じだろうと胸を躍らせ、約1時間の道のりを走った。なかなか英語が聞き取れなくて大変だったが、なんとか慣れてきた。
借りる家に到着。早速、大家さんのキースさんが出迎えてくれた。挨拶をかわし、家の中を案内してもらい、説明を受けた。洗面台の上の換気扇からは雨漏りがするらしいので、注意してとの事だった。早く直してくれぇ!
鍵を受け取ったあと、ピート夫妻と夕食しに行った。以前も行ったことのある、イタリアンレストラン。パスタとビールを頼み、久しぶりの再会をお互いに喜んだ。特にリンダは、自分の子供のように思ってくれているようだ。その後、テスコ(スーパーマーケット)に買い物に行き、必要最低限のものを購入。朝のサンドイッチも買った。ピートには、朝からサンドイッチを食べるのか?と驚かれた。イギリス人は、朝に何食べるの?
夜中12時過ぎに帰宅。シャワーを浴びて寝た。バスタブがないではないか!今になって気づいた。


8月8日(木)
9時にピートが迎えに来てくれた。道を丁寧に教えてくれた。仕事場に着くと早速自分の作業するスペースを作るように言われた。AC100Vの電源も用意してくれていて、カスタムで作ってくれたらしい。ありがたい。2個作ったので、ひとつは自宅用にとのことだ。さらにありがたい。すぐ入ったところには、ポールマッカートニーのラックが置いてあって、これも早く仕上げないといけないと、言っていた。むむ、すごすぎる。作業台の上には、CE-1を改造した私分のラックユニットが置いてあって、長く待っただろう!とピート。待ってました。ステレオで鳴らすのが最高なんだと言うことで、ジャズコーラスの120とマーシャル1959とピービーのキャビで鳴らした。本当はまったく同じアンプ2台で鳴らすのが最高とのこと。それはそうだ。コーラスでは、ステレオで鳴らすのが最高!ビブラートは、モノにしたほうが良かった。エフェクトのON/OFFはバイパススイッチがついている。うーん至れりつくせり。写真を撮り記録に残した。
次は、送った荷物の荷解きをし、PMS-16U(MIDIコントローラーの事)のセッティングをした。コンピューターを使ってのソフトフェアアップデートのデモをし説明をする。
早速、PMS-16Uの評価を始めた。メタルワークとディスプレイの認識度が非常に良くなったと誉められた。回路的には問題点をあげられた。外部接続のケーブルが断線したり、ショートした場合、大丈夫かどうか?という内容である。ショートした場合、内部の集合抵抗の47Ωはおそらくもたいないであろう。いろいろ検討した結果、ポリスイッチがいいのではないかということになった。温度特性と応答時間が問題なので、それを確認してからに進めようということになった。まだいろいろと指摘がありそうな気配だ。

(つづく)

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楽器の位相について(7) 〜アンプの逆相ついて〜 [技術]

今回はアンプの逆相ついてについてです。

ここまで、お付き合いしていただいた読者の皆様は、位相が重要な音作りの一つであることを感じていただいていると思います。現在の状態が正相なのか、逆相なのか、基準を持っていた方が良いですよね。
基準を持つ上で、困る存在があります。チャンネルによって異なる位相を持つアンプです。チャンネル1は正相、チャンネル2は逆相、チャンネル3は正相、など、、、、チャンネル間で位相が異なる場合が多々あります。位相を統一したい場合には、位相を逆相にするための機器が必要となります。チャンネル切り替えとセットで、位相を変える機器のコントロールが必要となるわけです。このように困った状況を解決するために、ARC-4 (フリーザトーン製のスイッチャー)を開発し発売しました。売り込みっぽくなってしまうようで恐縮ですが、ARC-4は位相切り替えをプリセットごとに設定できるようになっています。アンプの位相が変わった場合でも、逆相機能をONにして位相を反転させ、それをプリセット毎に覚えさせることができます。おそらく、位相をコントロールできる機能を持つスイッチャーは、世界でもこのARC-4だけだと思います。位相のコントロールは非常に重要で音作りに有効なので、 ARC-4から位相切替機能を抜き出した製品を現在開発中です。できるだけ小型にして使いやすい製品に仕上げたいと思っています。

話が少しそれてしまいましたので、アンプの位相の話に戻ります。位相を説明する上で、真空管(チューブ)アンプを例に説明するのがわかりやすいと思いましたので、ネット上にアップされていた、あるチューブアンプの回路図を元に、なぜ正相と逆相のチャンネルが生まれてしまうのか、探ってみたいと思います。


まず、前回のブログでご紹介しました、真空管の回路を思い出してください。信号を取り出す場所によって、信号の位相が変わります。同位相(正相)で出力する場合と、逆相で出力する場合がありました。
上側の回路③は、主にインピーダンスを下げる回路です。下の回路④は主にゲインを上げるために使われる回路です。

IMG_2522.jpg

では、具体的にアンプの回路を見て見ましょう。パッとみると様々なパーツが接続されていますので、難しそうに見えますが、実は簡単です(笑)22, 23歳くらいの時だったと思います。回路の勉強をしている際、先輩にこう言われました。
「コンデンサーは、信号の周波数によってインピーダンス(抵抗)が変わる性質のものだから、コンデンサーの記号を抵抗の記号に置き換えて、抵抗として回路を書き直してみると理解しやすいよ。」
そのあと、
「コンデンサーを抵抗に書き換えると、ほとんど抵抗ばかりの回路になってしまうから、あとは直列に繋がっている抵抗や並列に繋がっている抵抗は、1本にまとめてしまうと、回路としてはものすごくシンプルなものになる。」
と教わりました。電気回路を分かりやすくするために、有効なアドバイスだったと思います。もしご興味がある方は、是非やってみてください。

アンプ回路.jpg

(上の図をクリックすると大きなサイズの回路図を見る事ができます)
ざっと、回路についてご説明いたします。回路図の左側が信号の入力です。電気回路は、左側から右側に信号が流れるように回路が書かれています。Inputと書かれたジャックのマークにギターからの信号が入力され、その信号が回路に流れて行きます。
・クリーンチャンネルの信号は、「黄緑の矢印」
・ドライブチャンネルの信号は、「紫の矢印」
に分けて信号の流れを示しました。途中で信号が分かれて、異なるそれぞれの回路を通過します。その後、信号は合流します。
クリーンチャンネル側から、幾つのチューブ回路を通過したか見て行きましょう。
入力信号 > 逆① > 逆② > 逆⑤の手前で合流
逆相の回路を2つ通過しましたので、正相の状態で、信号が合流するポイントへ入ります。

次にドライブチャンネル側を見て行きます。
入力信号 > 逆① > 逆③ > 逆④ > 逆⑤の手前で合流
逆相の回路を3つ通過しましたので、逆相の状態で、信号が合流するポイントへ入ります。
ドライブチャンネルは、信号を歪ませるために、通過するチューブ回路がクリーン側より1つ多くなっています。このため逆相となる回路を奇数回通過することになり、逆相となって合流ポイントに入ることになったわけです。
結果的にこの回路では、クリーンチャンネルとドライブチャンネルは、位相が異なって出力されます。

楽器のアンプに頻繁に使用される代表的なプリ管(プリチューブ)は、12AX7(ECC83)です。この中には2回路分入っています。アンプの設計者は、サウンドの事だけでなく、できる限り効率良く、合理的にアンプを設計したいと考えます。真空管の数を減らすことができれば、電源トランスの容量を下げることができるため、トランスのサイズや重量を小さくすることができます。またアンプのスペースも小さくすることができます。コスト削減に直接、繋がります。逆相のチャンネルを正相に戻すためには、チューブ回路を1つ追加する必要がありますので、合理化とは逆の方向に進むことになります。私は、これが1つのネックになっていると考えています。
また、もう一つ大きな要素はサウンドです。私も以前、チューブアンプの設計をしていたので分かりますが、1つの真空管が増えることによって、サウンドキャラクターが想像以上に変化します。真空管の数、回路の数が増えれば増えるほど、音の「腰」「芯の強さ」が弱まり、「音が遠く」なるように感じました。もちろん比較して見ないと分からないくらいの差の場合もありましたが、設計者としてはより良いサウンドを提供したいと思っているわけです。位相のことはちょっと横に置いておいて、アンプ自体のサウンドを重視!という気持ちが、痛いほど分かります。私のようなシステム設計をする立場の技術者としては、アンプ設計者の気持ちを汲み取り、弱点は補い、より良いサウンドシステムを組み上げる事が重要だと思っています。私が位相切替機能付きのARC-4を開発したり、位相切替機器の開発をしているのも、ご理解いただけるのではないかと思います。

チャンネル毎に位相が異なるから、使えないとか否定的な方向では無く、気に入ったサウンドが出るアンプの弱点も受け入れて、その弱点を補いながら自分独自のシステムを構築していくのも楽しい事だと思います。このブログを参考にしていただけると幸いです。

位相のシリーズは、今回で一旦終了です。また、新たな情報が出てきましたら、ご案内したいと思います。

次回からは、私がイギリス在住の技術者Pete Cornishの元で修行していた時に書いていた日記をご紹介しようと思います。すでに18年近く前の話ですが、これから技術者を目指すための方にもお役に立つ内容だと思いますので、是非楽しみにしていてください。

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