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イギリス滞在記(14) [音楽]

9月2日(月)

今日は、リアパネルのコネクタの配置決めの続きだ。先週に続き、今週もだ。相当時間をかけている。ピートは、考えに考えて大丈夫だと思っていても、必ず間違っているところがあると言っていた。なぜかわからないが、そうらしい。一日時間を置いたりすると、発見しやすいそうだ。早速変更箇所が出てきた。TUNER OUTやDI OUTもグランドリフトスイッチをつけることになった。先週の時点では、出力はトランス出しにしているので、グランドリフトスイッチをつける必要ないといっていたのだが、日本のグランドの状況が不明確な点が多いので、付けたほうがいいだろうと言うことになった。

それから出力トランスの話になった。北欧製のランダールトランスは、2次側にフィードバック用のタップがついているものがあるらしく、50ポンドくらいするそうだ。やはりチェックしてたんだ。10kHz以上や低域の位相を改善しようとするランダールを使って設計するのが良さそうだ。

今日はようやくリアパネルのコネクタ配置を終え、穴加工に入った。ピートから指導されたのは下記のとおり。

・3回、長さや位置を測定し確認してから、1回切る(加工)する。

・穴をあけるときは、小さい穴からあける。一気に大きな穴を開けない。多少ずれても穴が小さければ修正できる。またドリルのセンターを綺麗にしておくことが出来る。センターが綺麗だと、穴位置が正確にでる。

・バリ(burr,sworf)をとる時は穴径の2倍が目安

ピートはその後、ルーティングユニット用基板のチェックを進めた。1回路だけ、測定値が悪いものがあって調べたところ、入力のコンデンサの容量のばらつきと判明した。



9月3日(火)

今日は昨日の続きで、リアパネルの穴加工を始めた。まず、D-SUB用の穴を加工し始めた。リアパネルは鉄板なので、結構硬く、手がしんどかった。ピートにチェックしてもらったら、言うことないく、完璧と誉められた。おまえだましたな!やれるんじゃないかぁ!といわれたが、本当にやったことない。やったといえば、大学の頃実習でやっただけだと答えると、それで十分だ。と言う。目と脳と手がちゃんとそれを覚えてるんだよと、ピートは説明してくれた。“俺は悲しいよ!一年間トレーニングして、何十年もやって出来たのに、お前は今日はじめてで出来ちまうんだから、おー!”とかぶつぶついいながら、目は笑ってた。こっちの腕はパンパンだ!絶対筋肉痛になりそう。穴あけとパネルの削りは本当に大変だ。ちょっとやそっとでは出来ないなぁこれは。ファイリング(filing)するとき注意点を教えてもらった。

・あわてず、ゆっくり削る。

・やすり全体を使って削るようにする。

・自分のリズムを作る。

・早く短くやすりを動かしても、ペースが落ちる。

・必ず手を添えて、パネルが反らないようにする。

・いつも間違ったら、これで最後だぞ、注文し直しだと頭にいれて仕事する。

filing.jpg

ヤスリがけ作業中の私


そういえば、グランドの話でエフェクターのセンドリターンでグランドをリフトしたい場合は、ケーブル側で行なったほうがいいと、ピートから教わった。

今日は、いくつかピートが頼んでくれたツールが届いた。インチで計測が可能なノギスとバイスだ。早速ピートが使って見たいというので、バイスを開けて使った。これがまたものすごい優れもので、
プラグの半田付けやパネルの配線などにもってこいで、ピートも自分に欲しいといいだして、他にあるにもかかわらず、買うことにした。本当にピートはツール好きだ。今日も家のペンキ塗り用のカタログを見て、いろいろ頼んでいた。そういえば、家には草刈きからチエンソーからあったもんなぁ。それから、日本で必要と思われる、物をリストアップして手に入るものは頼んだ。自作しないといけないものが結構ある。がんばって作らねば。

夜ピートから電話があって、間違いがあったと連絡してきた。なに?と聞いたらPMS-16Uの16番にマスターミュートをセットしようと話していたのだが、ポートの組み合わせと信号の流れを考えてルーティング側を作ると、PMSの1~8番のどれかに移動しなければならないという話であった。明日、一番に再検討しようということになった。そういえば、ポートを途中で変更したんだった。
(PMSは4つのポートのコネクターが4つあり、合計16個のON/OFF情報を記憶できるシステムになっています。それぞれのポートに、好きに機能を割り当てることができるようになっています。)



9月4日(水)

今日は、朝からPMSのポートのアサインに関してと、マスターミュートに関して検討した。最初は、ピートの案でいけるかと思ったが、フロントパネルとリアパネル、PMSとの関係がおかしくなるので、いいづらかったが、変更してもらった。イギリスではLCRの順番はあまりこだわりは無いらしい。日本だと慣習的に、Lが先番として通用している。だから必ずLCRの順で番号を振っていくわけだがピートにはその感覚が無いので、説明しなければならなかった。
ポートを決めたあと、D-SUBのピン番号とリレー番号を変更したあと、回路図も変更し確認した。それからD-SUBの配線色をまず決めてから、半田付け作業を始めた。コネクターはバイスに固定して作業をした。
ピートは、その間フロントパネルに取り付けるものは、全て取り付けて、ノブとスカートも接着材で止めて、リアパネルの配線作業に入った。グランド周りのベーシックな配線を終わらせ、D-SUBのコネクターも取り付けた。その後、いったん全部を組み立ててから内部にヒンジを取り付け、そこにも回路を載せられるように追加シャーシの加工に入った。本当に全て手作りでやっていた。

今日、教わった内容は次の通り。

・スイッチクラフトのメスのコネクターの半田つけをするときは、半田がコネクター側に流れないように気をつける。バイスで固定し、流れないようにする。コネクタを半田付けするときは、必ず半田付けするピンの形状を確認しなければならない。

・標準ミニプラグは、スイッチクラフト製のものが細ケーブル2本入るため、製作しやすい。

・半田を盛る量を考えて、半田の径を決めて使用すること。

・半田は少ないと、貧弱である。しっかりとした半田をするために半田の量は重要である。富士山の山型に盛ること。そうすれば、強くしっかりとした接触面の大きな半田つけとなるため、一番良い。

・パーツを袋から出すときは、かならず皿か何かに入れて、なくさないようにする事。

・パーツはだいたい足りなくなる場合が多い。よって必ず一つか二つ多めに購入しておいたほうが良い。

・ドリルを使用するときは、服装に注意。ドリルに髪や服を挟まれないように注意。ピートも服を巻きつけてしまい、袖がちぎれたことがあるらしい。

・手袋は必ず用意して、怪我をしないようにする。

・グラインダーで金属を削る場合は、水を用意して冷やしながら(焼きいれ)やるとよい。六角レンチは、先がまるまったら、削ってつかえる。

・なんでも面倒がらずに、急がば回れ!

・バリ取りを両面とも忘れずに!フラットにしないと、ネジがもげる可能性がある。

・ドライバーのサイズには、色コードで見分けられるようにスリーブを入れておくと良い。

その後電源の位置を決め、自分はリレー駆動回路のパーツレイアウトを考えた。
作業の終わり近くで、ピートが今日メモをとった内容を英語ですべて説明してくれというので、全て説明した。ちゃんと理解してくれているかどうか、確認したかったらしい。
全て問題なかったので、ほっとした。なんかテストされているみたいだ。ま、間違ってなかったので、安心したが。ピートもだいぶ安心したようだ。

それから、ピートはリレーを作っている工場で働いたり、バッテリーからインバーターでAC電源を作り出し、電車のランプをつけるようなシステムの設計に携わったことがあるらしい。いったい、どれだけの経験があるのか・・・・恐ろしいくらいだ。


(つづく)
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イギリス滞在記(13) [音楽]

8月31日(土)

今日は、朝から大家さんのキースさんの事務所に行って、来月分の家賃を払ってきた。キースさんは、おしゃべりが大好き。日本にも是非行きたいと言っていた。神道のことをきかれたんだけど、精神論やそれらしきことを聞いてきたので、さっぱりわからず、というか英語がわからず、わからないと答えるしかなかった。うーん宗教関係の話は難しい。
キースさんの家族と思われる女性がやってきて一緒に話に加わったが、なまりが強くて、なんて言っているかさっぱり分からなくて、何度も聞き直して失礼してしまった。「あなた学生さん?」って聞かれた。くそ!またか!

午後は、近くにブルーベル鉄道があって、蒸気機関車が走っていることが分かったので、息子の代わりに行って来た。お土産も買おう。デカイ駅なのか?と思っていたら、小さくてトーマスのお店もすごく小さくて、思っていたよりこじんまりしていた。蒸気機関車は、想像以上に乗り心地が悪くて、何か上から振ってくるし、においはくさいで(笑)好きになれなかったが、席が小さく区切られていて、いろんな人に出会えたのが面白かった。最初は丁度息子くらいの子供とお母さん。次が親子連れ6人の大所帯。その後、かわいい双子を連れた若夫婦。途中いろいろ話しながら面白かった。
帰りは息子のお土産にトーマスのシールと傘を買って帰った。

今夜もピートとリンダに夕食に招待してもらったので、またお呼ばれした。明日は、長男のミンガスの彼女がロンドンのハイドパークでチャリティーレースに参加するというので、応援に行くため朝早くでるのだそうだ。一緒に行くことにした。
夜はリンダがお魚とご飯の料理を作ってくれていて、最高においしかった。ジンジャースープというのをかけて、魚とご飯を食べた。いままで食べたことのない、おいしさだ。さすがリンダ!ピートと二人で誉め殺しにした(笑)久々にリンダも飲んで、ワインを3杯くらいあけていた。
いまのイギリスの政治の話や、税金が上がって、お金持ちが海外に逃げたときの話や、医療制度の話や、いろいろ話をしてくれた。仕事の話にもなったが日本の状況を聞かれたので、受け売りの話で楽器業界は景気の波が、車や住宅建築関係より遅れてくるという話をしたら、イギリスでも同じ傾向があると思うとリンダが説明してくれた。

その後は、ピートがいろんな写真を持ってきてくれた。ミンガスやキャスパーが小さなころの写真や一緒に海に行ったときの話とか、急にキャスパーがいなくなって探したら、おもちゃ箱の中で寝てしまっていた話とか。もうきりがないほど、話をした。明日は早いというのに深夜0時近くまで、会話を楽しんだ。そういえば、ピートのお父さんもおじいさんも、音楽家でさらに楽器を作ったりリペアしたりしてたらしい。お父さんのバンド時の写真をみせてくれた。やはり音楽家と技術者の両方を持ち合わせた、家系に生まれていたんだ。只者じゃないと思った。そういえば、ピートのおじいさんは、小さな楽器屋さんを経営していて、バイオリン作りをしていたそうだ。



9月1日(日)

今日は、7時に起きてロンドンに出かけた。いやに細い道をどんどん行くなぁと思っていたら、以前ピートが住んでいた近くにミンガスが住んでいるらしい。途中ミンガスの家によって、一緒に車に乗ってハイドパークに向かった。ミンガスも180cmくらいあって、一家してみんな背が高い。結構早口で話すのでリンダとミンガスの話の内容がほとんどわからなかった。結構仲がよい。でもミンガスはすごくシャイな性格だそうで、あまり話し掛けては来なかった。また、お昼に話をしよう。

screen1.jpg

美しく静かなハイドパーク内の景色


ハイドパークの近くで駐車場を探した。丁度ロイヤルアルバートホールの裏に止めて、ホールを横切って公園に向かった。公園は、ものすごい人が集まっていて、1万数千人の女性ランナーがチャリティーのために集まっていた。スタート時間に間に合って、ミンガスの彼女を探したが、見つからなかった。そのあとゴール場所に移動して、やっと彼女をミンガスとリンダが見つけた。
そのあと、待ち合わせ場所でキャスパーと会う予定だったが、いつものごとく(リンダ曰く、毎回遅れてくるらしい)遅れていて、お昼を食べる所を先に見つけてそこで待つことになった。ミンガスが彼女と、キャスパーとその彼女を連れてきて、挨拶を交わした。みんな性格も明るくて良さそうだ。なんかいい家族だなぁと関心した。家族写真を撮る事にした。キャスパーが名刺をくれた。写真をメールすることにした。ミンガスのアドレスも聞いて、写真を送る約束をした。ピートもリンダもみんなすごく仲が良くて、携帯でのメールのやり取りも結構やってるようだ。まだ、2人とも結婚はしてないそうだが、この調子だとそう遠くは無いかもしれない。

応援.jpeg

女性ランナーを応援する、女装した応援団!(笑)



キャスパーと彼女はボートに乗りにいき、ミンガスは彼女と一緒に先に帰った。そのあと、キャスパーと彼女が一緒に住む家に招いてもらい、お茶をご馳走になった。これが素敵な家!ロンドンのど真ん中にあって、それもすごく静か。今住んでる自分の家より静かではないか!(笑)リンダが言うにはキャスパーがここを見つけたのは、すごくラッキーだったのよと言っていた。地下にはコンピュータールームがあって、さらに託児所まである。入り口はちゃんと受け付けがあって、かならず人がいるらしい。それでもロンドンは危険だと言っていた。日本酒も置いてあって、ピートも日本酒が好きらしい。買っていけばよかった。今度はそうしよう。お部屋の中はCDが山のように並んでいて、音楽に囲まれて住んでいるという感じだった。バレエダンサーだけあって、ほとんどがクラッシックのCDだった。
キャスパーが彼女の公演を録音したものをCDに焼いてくれた。彼女はシンガー。彼女にCDにサインしてもらった。先月までアルバートホールで公演してたくらいのすごい人みたいだ。すごく体がきゃしゃなのに、すごくパワフルな声らしい。オーストラリア生まれだそうで、実家の周りの写真を見せてくれたが、グランドキャニオンみたいな風景だった。お母さんがガンになってしまっているらしく、毎年数ヶ月づつ帰って、一緒に過ごしているのだそうだ。来月には帰るそうだ。キャスパーも寂しいだろうなぁ。

キャスパーがピートにCDを見せていた。見せてもらうとWilliam Cornishと言う人の作品を演奏したCDだった。ピートが家系をさかのぼっていくと、この人の名前があったそうだ。1542年とかその頃の話しらしい。ピートの家系は知る限りずっと音楽家だったらしい。もしかするとこのCDの曲の作曲家が先祖かもしれないと言っていた。ほーっ、すごい昔の話だが、6代か7代くらい前の話だから、逆にさかのぼれる可能性も大かも。うちの先祖はなんだったんだろ?はて。
そろそろ、おいとましようということで帰ることになった。

帰りは少し道が混み合っていたが、7時半くらいにピートの家についた。途中リンダが子供のころ遊んだという公園の前も通った。結構ロンドンに近いところで生まれたんだなぁ。

今日は、本当に気分が晴れ晴れして、気持ちのいい日だった。ピートの家族は本当にいい感じの人たちだ。ピートもリンダも今日は、本当に気分のいい日だったと、帰り際に言っていた。うんうん、本当にいい日だった!心が澄んで、ここまで気持ちが良かったのは久しぶりだ!チャリティーで走った人たちの良いエネルギーをもらったのかも。


(つづく)
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イギリス滞在記(12) [音楽]

8月29日(木)

朝、大家さんのキースさんと会った。ずいぶん長い間旅行に出ていたなぁ。船を借りてエーゲ海を回っていたそうだ。お金持ちはやることが違う!お土産にフランスのワインをもらった。これって高いのかなぁ?(笑)

朝からピートがケーブルのシュリンクをやっていたので、どうしたのか聞いたら、昨日の夜中にポールマッカートニーからの注文のケーブルを作っていたそうだ。ほとんど寝る時間がなかったよと、ぼやいていた。おまえもこういう事をしなければならないときがあるんだからな!と脅かされた。はっ、覚悟は出来てます!

今日は、リアパネルに付けるコネクターの配置を決め、寸法を入れるようにピートから指示を受けた。正確にな!といわれたので、集中して穴位置等の寸法を入れた。この辺は得意とするところなので、ピートからもえらく誉めてもらった。がはは!2枚分なんとか終えて、後はピートにチェックしてもらうだけだ。

ピートはその間、TB-83EXTRAの製作を進めていた。チェックをしながら、2台をつなげたり、
TB-83をつなげたりして、サウンドの実験を行なった。アンプは、ローランドJC-120直前に250kΩのボリュームをつないで、アッテネートしてアンプに送った。そうしないとアンプの頭で歪んでしまうからだ。ブライアンメイは、最初TB-83だけ使用していたらしいが、その後TB-83を入れっぱなしにしてTB-83をさらに追加したくなったらしく、ピートにTB-83EXTRAの製作を依頼したそうだ。リードソロの時などに、TB-83とTB-83EXTRAを両方ONにして、あのトーンを得ていたそうだ。で、われわれも試して見ることにした。TB-83を始めに、次にEXTRAをつないで音だしすると、歪んで低域のないサウンドであった。あまりいい音ではなかった。次にEXTRAを始めに次にTB-83にして音だしをした。EXTRAのボリュームの設定をセンターから2時くらいにすると、非常に艶のあるクイッとくるサウンドになり、倍音も豊かに出るようになった。二人でおお!これはいい!と言う話になった。

波形をチェックしてみようということになって、波形を見てみると(3kHzでチェック)ちょうどいい音だといっていたところが、真空管アンプで歪ましたような丸まった非対称の波形になっていた。

次にEXTRAを2台つないで試した。これは非常に面白く、両方のボリュームの位置によって、全然音のニュアンスが変わった。これにギターのボリュームを可変したりすれば、相当なバリエーションを得ることができそうだ。ブギーアンプの3ボリューム方式みたいだなぁと話した。EXTRAのボリュームをフルにすると、TB-83と全く同じ状態になる。EXTRAだけ、トゥルーバイパスを採用している理由を聞いたら、ブライアンメイの使用しているギターとのマッチングを考えて、回路設計したので、EXTRAをつないでOFFにしたとき、後につながるTB-83にギターが直接つながるようにしたかったということらしい。途中でバファを入れたのは、このあとのTB-83 PLUSかららしい。いろいろなバージョンをブライアンメイに作ったそうだ。それから、2Wくらいのアンプも作ってあげたそうだ。レコーディングには、これを使ったらしく、このアンプの後ろにもマイクを立てて、表の音とミックスしたりして音作りしたそうだ。クイーンのどれかのアルバムでこの音が聞けるらしい。なんか、たくさんネタがあるらしい。トップアーティストの秘密という題の本が書けるよと、冗談で話した。内輪ネタで書けばいいのになぁ。結構話題になるはず。まあ書かないだろうけど。ブライアンメイの機材について問い合わせてきた人に機材写真を送ってあげたりしているそうだが、その写真はあっというまにファンの間に広がるそうだ。不思議がっていたのは、TB-83の問い合わせばかりで、TB-83 EXTRAの問い合わせはほとんどないということらしい。TB-83があまりに有名だからじゃないかなぁと言ったら、まあそうかもねぇ。と言っていた。忘れ去られたのごとく、問い合わせが無いと言っていた。

それから、ピートがぼやいていて、ピートのペダルには取扱説明書が入っていないという苦情がきたらしい。取扱説明書いるかなぁ?と聞いてきたので、いまのパンフレットで十分だと思うと答えたのだが。ユーザーはどうも量産品なみの印刷した取説が欲しいらしいのだ。手作りなんだからそんなの無理だし、プロ向けにほとんど作っているから、エフェクターの取説なんか今までいらなかったんだよ、とぼやいていた。ぶつぶつ言いながらTB-83EXTRAの取説を作っていた(笑)
(今では、ほとんどのピートコーニッシュ製品に取扱説明書が添付されています)


今日はさらにピートの経歴を話してくれた。なかなか興味深い話である。
ピートが初めて就職したのは、イギリスの軍関係の技術職だそうだが、イギリス全国で4人しか採用されなかったうちの一人だそうだ。そこで5年間、びっしり教育を受けたらしい。その内容は、最初の一年間は、金属加工の訓練で、一年間ずっと金属を削って加工したりする作業のトレーニングをしたそうだ。ピートが金属や木工加工がうまいはずだ。角穴の加工もこの頃練習したそうだ。ラックのフロントパネルなどお手の物だ。その後、家電からトランスから強電配線から電気関係のことはほとんど学んだそうだ。ピートの所属する部署は将来的に検査技術者を育成するところだったそうで、検査するためにはどのようにして作られるのか知っていないと検査できないということから、そのような教育と訓練を受けたそうだ。その後、他の部署への異動の話が出たため、いやでやめたそうだ。
そのあと、タバコを作る機械の仕事を始めたそうだ。オートメーション化する真っ最中の頃だったらしい。

明日、ビックバンドのライブがあるので、今日は練習するんだと言って、4時にあがって帰った。



8月30日(金)

今日は、ピートと色々話をした。ピートが所有している紫のマーシャルはシリアルの最後がEのタイプで、72年から75年くらいまでのものは良いと言っていた。あれ、前言っていた時期と違っている気がする(笑)

ピートはペダルの電流を測るとき、入力ジャックのグランドとリングをテスターでつないで、測定していた。そんな手があったとは。気づかなかった!

それから、今後の私の仕事のことをピートと話した。ピートのアイデアとしては、近くに倉庫みたいなのを借りる。または、リハーサルスタジオの一部を借りる。
地下室があれば一番ベスト。音だしは地下でやって、一階か事務所だといいねぇなんて言っていた。それらからピートが仕事を始めたときのことを話してくれた。テムズ川の北側にいたときは、非常にたくさんのミュージシャンが、ショップを訪れてくれたらしい。ところが川の南側に移ったとたん、来客が少なくなって、その後、今の場所に移っても変わりはないと言っていた。当時、ミュージシャンは川を渡って、南に行きたがらなかったそうだ。近いのにねぇ。ピートのアドバイスとしては、ミュージシャンが来れるところにいないと、なかなか商売として成り立たないよ、というのがアドバイスであった。こっちは、機材をスタジオに持っていって、デモすることも考えているんですよと、話したらそれもいいアイデアだが、ほとんどの場合、試すから置いていってくれという話になるよと言われた。

今日は、ピートはアコースティックDIを製作した。チェックではf特チェック、ゲインのチェック、電流値、何度もたたいてノイズが出たりしないか等をチェックしていた。

その後、あるアメリカ人のユーザーの話が出た。フォーラムに書き込みがあって、電池で使用するよりアダプターで使用したほうが、音がよかったと書いてあったらしい。早速、音を確認してみようということになった。TB-83 EXTRAでチェックした。DC電源はピートの作った実験機でルーティングシステムの電源と同じものだ。電池はプロセルの新品。まず波形3kHzを入力し電源を切り替えて、波形の変化がないことを確かめた。次にギターをつないで音だしをした。ここでは、電池とDC電源での差は聞き取れなかった。ピートもその結果に満足していた。もしかするとそのユーザーは電圧が下がっているバッテリーを使って試したのかもしれない。

それから、今後の予定のことを話した。ピートとしては、9月末までになんとかいろいろ教え込むつもりでいたようで、私がイギリスにいて、手伝える作業内容と仕事があればいいが、今のところないから、日本で仕事を進めたほうがよいと言われた。また来るのもお金もかかるし、それよりも赤ちゃんを優先したほうがいいよとも言われた。まあ、自分としては、1年くらいイギリスにいる事を想定してたから、その辺の問題はないと思っているのだが、確かにこちらで仕事が無い場合は、じゃまになるだけだ。

今晩はピートがまた演奏会があるというので、連れてってもらった。例のビックバンドの演奏会だ。リーダーはレスポールさん(本名!)だ。相変わらずビールを飲んでいる。ものすごく狭いスペースに詰め詰めで演奏していた。ドラムが一度変わったが、なんと15歳の少年がJAZZドラムをたたいていた。驚き!ピートはさすがにうまかった。ものすごく真剣に取り組んでるもんなぁ。完全に、アマチュア離れしてた。久しぶりにビールをがぶ飲みして、上機嫌で一緒に帰った。すでに12時を過ぎているので、すぐに眠れた。

レスポールさんと.jpeg

ビッグバンドのリーダーのレスポールさんと


(つづく)
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イギリス滞在記(11) [音楽]

8月27日(火)

今日はルーティングシステムのフロントパネルのレイアウトを決定し、穴あけを始めた。2枚とも無事穴あけ作業が終わり、IN/OUT側のフロントパネルにパーツを取り付けていった。
ピートは、フロントパネルにパーツを取り付けるだけでも、相当時間をかけて間違いないように丁寧に作業をしていた。いままで、ずいぶん失敗をしたそうだ。

それから、やってみなさいといわれた作業が、リアパネルのコネクターの配置だ。まず、リアパネルにパーツを配置してIN/OUTが綺麗に分かれるように、自分なりに考えてやってみたが、まずアプローチの方法が違うと言われた。PMS-16Uを持ってきて、そのリアパネルにあわせてどのように接続されるか考えながら、配置を決めないといけないと言われた。それはその通り!ホリスティックアプローチを目指すのであれば、全体を視野にいれて、考えねば!とアドバイスを受けた。まさに、目から鱗である。ピートは、このようなアプローチ方法がしっかり身についているのだ。さすが!師匠!

レイアウト.jpeg

パーツのレイアウトを検討中の写真。上の方に見えているのが、MIDIルーティングコントローラーのPMS-16U。このPMSがMIDI信号を受け取り、記憶されたON/OFF情報を光信号でピートの作るルーティングシステムに送ります。受け取った光信号は、リレーのON/OFFに変換され、ループのON/OFFなどを物理的に行います。


その後、下記のアドバイスを受けた。

1. 電源は必ず右か左どちらか一方に統一した方が良い。(リア側から見て)ピートは、左側に統一

2. 通常つなぎっぱなし(パーマネント)のケーブルは、XLRを使用する。

3. エフェクターなど、よく変更するところに関しては、フォーンジャックを使用する。

4. パネル一杯にジャック、コネクターを配置しないこと。
追加されることを想定して、十分な隙間が確保できれば、それ以上に広げないで、スペースを空けておくこと。以前、ピートもこれで失敗したらしい。

今日、お昼を済ませたあとトランスの話になった。通常、周波数特性載せているデータ-シートは、アンプのフル出力での周波数特性ではない。トランスが早く飽和して、低域と高域は特性が落ちるのが常である。この辺をわからないでいると、なぜ低域がしっかり出ないかが、わからないよ。とピートは話していた。メーカーによっては、出力トランスのサイズや中の金属の量を減らし、原価を下げていったらしいが、その分大音量での低域特性が悪くなってしまうそうだ。

その後、マーシャルの話になった。ある人は、68年~72年頃のマーシャルが良いというし、ある人は70年代後半のものが良いというし面白い。ピートは古いマーシャルだと74年以降のマーシャルが壊れにくくて良いと言っていた。そういえば、ピートはマーシャルを歪ませて使用していない。

今日はピートは、非常に疲れていて、昨日の疲れが残っていると言っていた。俺でもしんどかったから、ピートは大丈夫か?と思っていたので、ちょっと安心した。これで疲れてなかったら、超人だ!
5時半に仕事を終え帰った。
帰ってから、どうも体がだるくて、薬を飲んで早く寝た。



8月28日(水)

今日は、急に仕事が休みになった。昨日の夜ピートから電話があって、リンダのお母さんを迎えに行くことになったので、明日は休みだと言うことになった。風邪気味だったので、ほっとした。10時ごろまでたっぷり寝て、妻に電話した。息子もしっかり“お父さん”とか言えるようになっていてうれしかった。でも顔覚えていてくれているか心配だ。お腹の子供は順調らしい。名前も考えないとなぁと思いながらも、こういうのは直前にならないとなかなか出てこないものだ。

出かける前に洗濯をしようと思って、ふと思いついた。この全自動洗濯機は、すすぎちゃんとしてるのかなぁと。じっくり見ていると、一度しかすすぎをしていない!おーい、洗剤がちゃんと取れてないじゃないかぁ!先週から腕と足に湿疹がでて、痒かったのはこのせいか?と思い、もう一度、洗って洗剤を流すようにした。これでしばらくやってみよう。しかし、イギリスの人たちは、こんなんで洗ってるのか?信じられない!たぶん、アトピーの人とか大変なのでは?いや、もしくは自分の使い方が悪いのか???

そのあと、郵便局に行って、買い物をすませて、帰ってきた。今日は本でも読もう。昼寝したりごろごろして過ごした。日本じゃ、こんなことする時間ないもんなぁ。

室内.jpeg

住んでいた家の外には、洗濯物を干すスペースが無く、部屋の中に干していました。


(つづく)
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イギリス滞在記(10) [音楽]

8月24日(土)

今日はロンドンに雑誌を買いに行った。いま住んでいるあたりには、ギター関係が全く売ってないので、ロンドンまで出ることにした。ついでにデンマークストリートの楽器街も行くことにしよう。
車でLEWES駅まで行って、電車でビクトリアまで行った。途中電車が止まって車掌さんが線路に飛び降りてなにか調べていた。あーこわ。とりあえずお昼を食べよう。ビクトリアステーションの近くで適当なとこに入って、チキンとフライドポテトを食べた。うーん、まずい!チキンは焦げてるし、なんじゃこりゃ!日本だったら、返品じゃ!仕方ないので、途中まで食べてもったいないけど残してしまった。まあ仕方がない。そのあと、ピートに教えてもらった本屋さんを探したが、誰も知らない。駅の中にあると言っていたから、だれか知っているはずなのに・・・。
結局諦めて雑誌屋さんを探すことにした。あったあった。ここで3冊ほど入手して、デンマークストリートに行くことにした。地下鉄に乗って近くまで行き、楽器屋街に到着。前回は、ほとんど閉まっていたが、今日は開いている。よしよし。10軒くらいあるなぁ。お店をのぞいたが、興味を引くものは無く、結局、音楽関係の本屋さんに一時間くらいいた。ここで、スピーカーやヘッドホン、音楽系の技術本を買ったが、後でレシートを見たら10ポンド上乗せされてるではないか!どいういうこっちゃ???今となっては遅い。こんどから注意しよう。くそー。
もう一軒、大きな本屋さんを見つけたので、さっきの店になかった雑誌を3冊買った。
日本の楽器屋さんの方が、ぜんぜんいいなぁ。もう来なくてもいいかも、と思いながら帰ることにした。チャンドラーさん(ロンドン郊外住んでいる知人:楽器店を営んでいる)の所は、電話して約束してからにしよう。
明日、ピートとリンダに招待されているので、持っていくチリ・ワインを仕入れて帰りの電車の時間をまった。しかしロンドンは、いろんな人種がいるなぁ。でも以外に日本人いないなぁ。人間ウォチングしてるのも楽しいなぁ・・・。
無事ルイスについて、帰ってきた。あーロンドンは疲れる。人がおおいや。すでに田舎の生活に慣れてしまっているかも。でも綺麗なお姉さんが多くて、その辺は良かった、ふむふむ。
今日は何を食べようかなぁ?

DSCF0117.JPG

非常に古いLEWESの街並み



8月25日(日)
家の掃除をすませ、ピートの家に行った。今日は泊まりだ。お昼をご馳走になってから、庭の草刈の手伝いをするつもりだったが、雨が降り出したので、外に出ることにした。近くにサイエンスセンターという昔、宇宙観測所のあったところがあって、そこに行くことにした。近くには、古いお城もあってそちらにも行こうとしたが、11ポンドもするので、やめてサイエンスセンターだけにした。いろんな子供向けの科学実験道具があって、小学校低学年くらいの子供にぴったりのところであった。でかい天体望遠鏡も見せてもらえたが、説明してくれたお姉さんの説明は、ちっとも理解できなかった。早口だし、声は館内に響くし、専門的用語がたくさん出てくるし。おー、かなしぃー!子供でもわかっていたようだぞ!おそらくそんなに難しいことは言っていなかったはずだが。
売店でヘリコプターのおもちゃがあったので、息子用に買った。

夜はテーブルにロウソクをともして、ディナーをいただいた。このロウソク、煙が出ない。おお!
ディナーは、お魚料理をいただいた。オーブンで焼いたシーバスだそうだ。白身でこれがまたうまい!焼魚は久しぶりだ。

夜は、キャスパー(ピートの次男)がテレビ出演したときのビデオを見せてくれた。レスラーのトレーニングを一ヶ月行なって、実際にレスリングの試合をやり、偽者は誰か?を当てる番組だ。声を腹から出す練習や、お店の人と外で口喧嘩してみる練習をするのが面白かった。体中、あざを作って練習しているのが、痛々しげでピートもリンダも“Oh, no〜”と声をあげていた。自分の息子が痛い目会ってたら、見てるのやだもんね。


サイエンスセンター.jpeg

今日訪れたサイエンスセンター



8月26日(月)
今日は、イギリスは休日である。朝からヒースフィールドにみんなで出かけて、ショッピングを楽しんだ。一年に一度、フランスから食材等を車で運んできて、道に出店がたくさん出る日だ。人口は、少ないと思えるのに、道路は人が大勢来ていて、お店で何を売っているのか、見るだけでも大変なありさまだった。リンダはパンと調味料を買って帰った。

その後、今日はメインイベントが待っていた。ピートの家の庭の手入れだ。100年くらい前らしい、レンガ作りのハウスの解体を手伝って、さらに庭の草刈。庭に落ちているりんごを片つける手伝いをした。また、ピートが元気で全然休まないんだよなぁ。おかげで腕は、ぱんぱん。解体するハウスは、重い鉄でできた柱で組み上げられていて、天井の骨組みをバラすだけで結構大変だった。こんなの一人じゃ絶対できない作業だよなぁ。

アーつかれた。今日は早く寝よう。


(つづく)
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イギリス滞在記(9) [音楽]

8月22日(木)

今日は、朝からPMS-16U用のルーティングシステム用アッテネーターを作った。またこれが、大変な代物で、性能はいいが作るのに何時間もかかるものだ。肩はこるし、何十本も使う抵抗を間違うといけないし、一箇所でも半田をミスるとパーツが駄目になるという代物だ。がー、こんなん俺にさせるなぁ。ピートも多分自分でやりたくなかったんだろうなぁとか思いながら、腹をくくって丁寧に仕上げた。これはピートより、俺のほうが綺麗だぞ!とか思いつつ。ピートもビューティフル!と誉めてくれた。ちっとは、半田もうまくなった。ちょっとコツをつかんだかな。あまりピートから注意されなくなった。
(ピートは毎回私の行ったハンダ付けを隅から隅まで全てチェックしていた。)

そういえば、今日は別のことでピートに注意された。少し慌てていたときに、慌てるな!“Don’t Panic!”
どんなときも冷静に対処しなさい。慌ててはいけない。
アッテネーターを作っているときに、後ろでピートが何か作業をしていたので、見せてもらおうとしたら、2つのことを一緒にやろうとするな!必ずミスをする。いままでの経験上そうだから間違いないよ。一つのことを終えてから、次のことに集中するようにしよう!と注意された。ありがたく思った。たしかに、その通りだもんなぁ。特に技術者は集中しないと、駄目なときが多いからな。肝に命じよう。

アッテネーターの製作は、ピートもすごく慎重になっていて、全ての抵抗は、つけるまえに全てチェックして、抵抗値が正確なことを確認すること。一回路ずつ、チェックし信号をいれて正確に3dBづつアッテネートされる事を確認すること。ロータリースイッチにゆがみがないことを確認すること。スイッチのコモンが3回路ともセンターにきていることを確認すること。抵抗がスイッチに近づきすぎないこと。あー、こりゃ大変!なんとか完成した。音出しもして、クリックノイズや音切れがないことも確認した。今回つ作ったのは10ポジションの10kΩ-27dBのアッテネーターである。

ピートはずっとルーティングユニット用のシャーシの加工をしていた。M3のネジだと弱いからM4のネジに改造したり、強度が弱いところはネジの数を増やして、タップを切って補強していた。シャーシが鳴かないように相当気を使っているようだ。そういえば、ケミカルメタルというパテのようなものをシャーシの隙間に塗りこみ、乾かしたあとで、ネジのタップを切っていた。

基板検討.jpg

レイアウト検討中の写真。紙の上にパーツを置いて、レイアウトを検討します。製作に苦労した3chのロータリースイッチ(大きなノブが底側に付いている緑のパーツ)が右下側にあります。



その後、アッテネーターの製作を終えて、フロントパネルのレイアウトの検討に入った。ピートは、全てのシャーシのパーツにシリアル番号をいれて、どのシャーシがどれにあたるかわかるようにしていた。上下も記入し、さらにフロントとリアパネルの内側にパーツの置ける有効範囲をマジックで書き込んでいた。それからシャーシをばらした。
まず、実物大のフロントパネルをなぞった紙の上で、全てのパーツを並べてみた。なんとか並びそうだ。ピートは、この段階で全てのファンクションが入るか入らないか確認して決めていくそうだ。もし入らない場合は、別のユニットに移動したり構成を変更するそうだ。

紙の上で並べたあと、実際にシャーシのフロントパネルに全てのパーツをならべた。隙間がないくらいぴったりで、やっと入った。トグルスイッチのON/OFF作業がやりにくいほどではない。
今晩家に帰ってから忘れがないかどうか、これでいいかどうか、確認しようと言われた。忘れないように写真とメモをとった。フロントとリアの配置を決めてから内部のレイアウトにはいるそうだ。

そう言えば、このカスタムユニットと一緒に歪みのアンプを使用するときに注意がいるといわれた。マスターボリュームは、3つの出力を同時に同じレベルだけ可変するように設計してある。マスターボリュームを動かすとアンプへ送られる信号レベルが変わるので、アンプの歪み具合が変化するので注意するように言われた。
それから、ピートから教わったことでドリルの使い方があった。ドリルを抜くときは、削る時と同じ方向に回しながら、ひきぬかないと駄目らしい。そうしないとドリルの歯が痛むと言っていた。大学の実習で習ったかも。

デイブ・ギルモアの話になった。彼は、ダイレクト(DRY)音とエフェクト音に用意されたアンプのON・OFFをよく行なうそうだ。たとえばあるフレーズはエフェクト用L/Rのみ。その後、DRY音を足したり、逆にDRYだけにしたりして、音のバリエーションを出しているらしい。遠くでなっている音が、急に前にでてくるので、非常に効果的だと言っていた。




8月23日(金)

今日はピートから非常に重要な事を教えてもらった。途中でテストされながら、何とか正解の答えを言うと、満足そうに話を続けた。話題に出た内容は下記の通り。

1. エフェクトのループには、センドとリターンがある。ここで設定する標準レベルが非常に重要。
(これはミキシングコンソールの設計でも学んだ非常に重要な内容で、レベルダイヤグラムの設計に近い内容)

2. センドリターンのレベルマッチング
ここで重要なのが、必ずセンド側とリターン側のボリュームは対照にコンプリメンタリで設定されるということだ。必ずエフェクトループがユニティゲインになるためには、ボリュームが対照の位置になるはず。ペダルエフェクターをループにつなぐときは、センドレベルを0dB、リターンレベルを0dBに設定してから始める。
(今回製作しているカスタムユニットのセンドリターンには、センドレベルとリターンレベルが付いていて、それぞれレベルを調整できるようになっている。プラス側にもマイナス側にもレベル調整可能。)

3. 次にエフェクターが歪まないようにセンドレベルを上げていく。耳で聞いて確認する。このときエフェクターのレベルは最大にしておく。それから、エフェクトループのON/OFFを行いユニティゲインになるように、リターンボリュームを下げる。こうすることによって、CDクオリティは簡単に得られると教えてくれた。

4. ラックエフェクターの場合は、センドレベルを+14dB、リターンレベルを-14dBから始める。後は同様である。

5. コンプレッサーをかけた信号は、ピークが抑えられているので、たとえばSDE3000のインプットメーターが赤まで振れていても大丈夫なこともあると言っていた。まずは耳で判断ということのようだ。機器によって、ヘッドマージンの取り方が違うので、機器に合わせて設定が重要とのことだ。


それから、今日は真空管の話にもなった。ムラードの真空管は、白のシルクが入っているものが品質が良く軍に出荷されるレベルのものらしく、次のランクは黄色いペイントが施されるようだ。このタイプはドメスティック用と言っていた。ムラードの規格に入らないものは、シルクなしで出荷され、OEM物として他社がシルクを入れて発売していたそうだ。それで白シルク入りのムラードの真空管は品質が良いんだ!
SOVTEKの5881は、非常に品質がよくすばらしいと言っていた。ベースの部分は、高熱に耐えられる別の種類のガラスらしい。

それから、電源のロードテスターも自作で作らないといけないねと言われた。おー、作らないといけないものが一杯だ。

今日も夕方、ルーティングシステムのフロントパネルのレイアウトを検討した。もう何時間もかけている。ここで、失敗したら作り直しだから、絶対にあわてないようにしているそうだ。ボーっとしていてもいいから、時間をかけて忘れていることがないかどうか、確認するのだそうだ。これで間違っていたら、おまえのせいだからな、責任持てよといわれた。まあ笑いながらだが。プレシャーかけるなぁ。

ある程度レイアウトを決めてから、正確な配置を決めることになった。ピートはLEDインジケーターの基板のジグを持っていて、正確にセンターの位置だしをしていた。V字で線引きの場所を記していた。ピートは、この作業が大好きだそうだ。美哲学を追求するのだと言っていた。機能美ということらしい。いろいろノブの位置やジャックの位置を動かし、操作しやすく且つ美しく見える配置を検討した。最終的には火曜日にしようということで、今日の作業を終えた。月曜日は祭日なので休みらしい。日曜のランチとディナーを誘ってもらったので、楽しみだ。月曜日はフランスから業者さんが来て、町に出店がでるそうだ。道も閉鎖して大掛かりにやるらしい。キャスパーも来るらしいので、写真を撮ることにしよう。

夜は、ピートのバンド練習を見に行った。先週と同じビックバンドだが、面子が違っている。聞いたらいつも違うらしい。みんな初見でもプレイできるそうだ。でもあまり上手くなかったなぁ。ピートも言っていたが、みんな趣味でやっている連中なので、2回目だと上手くできるそうだ。それでもすごい!自分には絶対できん!隣に60歳くらいの綺麗なおばさんが座っていて話かけてきた。JAZZボーカリストといっていた。今も3つのバンドで歌っているそうだ。ピートとも一緒にやったことがあるらしい。飲んでるらしく、ペンフレンドになろうとか言い出して、いま自宅の住所がわからないので、とごまかした。自分の母親くらいの人とペンフレンドになってもちっともうれしかないど!(笑)

帰りはJAZZの音楽論の話で盛り上がりながら、家まで送ってもらった。音楽理論もちゃんと把握してるそうだ。このおっさんやはり只者ではないなぁ。ずいぶんとレッスンも受けていたらしい。ロンドンにいるときに相当バンドやってたようだ。毎週パブで演奏してお金もらってたらしい。いいお金になったそうだ。

(つづく)
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イギリス滞在記(8) [音楽]

8月20日(火)

今日は朝からPMS-16U(MIDIルーティングコントローラー)とALL ACCESS MIDI PEDALの動作チェックを行なった。昨日の続きだ。
ALL ACCESSの動きで分からない部分があったので、ピートが持っているMIDIペダル(MIDI MITIGATOR/RFC-1)を使用して再チェックした。これはルー・リードがもっているものと同じ物である。これもまた改造してあって、新規に作った電源、コネクターもケーブルも全て信頼性のあるものに変えてあった。プログラムするのに時間がかかったが、なんとか動作させられた。SUTUDIO MASTERのMIDIチェッカーを間に通してチェックしたので、非常に効率がよかった。動作が問題ないことを確認し、再度ALL ACCESSにもどした。このMIDIペダルには、コントロールナンバーチェンジ用スイッチのON/OFF状態を、各プログラムナンバーにプリセットさせる機能があった。これだ!PMS-16Uのプログラムの状態と、スイッチの状態が一致するようにあらかじめプリセットして問題が解決した。ふーっと。

フットスイッチの話になった。現在ARROW製のフットスイッチを使用しているが、これはもう手に入らないそうだ。最後のロットの1300個を全部購入したそうなのだが、もうすでに100個も手元にないそうだ。新しく探しているらしいが、今のところ見つからないとのこと。貴重品である。まず壊れないと言っていた。このメーカーは、元々、飛行機関係のパーツを作っていて、非常に信頼性のあるものを作っていたとのこと。同じタイプでモーメンタリータイプもあったらしいが、すでにディスコンとのこと。非常に残念!他に手に入らないとなると困ったことになる。

そういえば、P-2ファズ等のボリュームもアメリカから入手しているらしい。現在、ボリュームはCTS社のものがメインで、入手できないものはBOURNSのボリューム(プラスチックコンダクタのもの)を使用しているので回したときのフィーリングが変わる。
(ピートは、その時その時で、できる限りベストと思われるパーツを入手し、テストしてから使用します。そのため時代によって、使用するパーツが異なる場合があるとのことでした。)

今日は、例のアレンビックプリアンプの修理を午前中に始めた。RSから届いたポリプロピレンの220pのコンデンサを両チャンネルとも入れ替え、ボリュームを回した時のdc(直流)によるノイズが出なくなることを確認した。また、ぼそぼそノイズも一日置いたままにして、出ないことも確認した。ピートは、コンデンサを交換したあと、再度トーンの効き方を耳で確認し、時々音を出してチェックしていた。何度もチェックすることが大事だと言っていた。夕方過ぎ、蓋を閉めてチェックしようということになって、天板を閉めて、また再度チェックした。チェックには、トランジスタのパワーアンプであったが、すばらしい音がしていた。ピートいわく、「プリアンプが非常によければフラットなパワーアンプであれば、いい音がするよ!」
ようやく、修理も完了した。リンダが言っていたが、改造するともちろん製造メーカーの保証が得られなくなるので、改造する際には必ず顧客に了承を得ているそうだ。

ピートがフェンダーアンプの話をしてくれた。「ぼそぼそノイズは、古いフェンダーアンプではよく出るが、なぜか知っているか?」と聞かれた。知らないと答えると、原因は今回のようなコンデンサのリーケージがほとんどだが(今回のリーケージは、0.01V前後の微妙な値)、昔のフェンダーはファイバーボードを使用しているために、そのコンダクタンスで電圧がボードに出てくるんだ。と解説してくれた。サウンドシティー時代に何十台もフェンダーのアンプを直したことがあるそうだ。ボードにテスターをつなぎ、シャーシ間の電圧をみると5Vくらい出ていることもあったらしい。これが、グリッドやインピーダンスが高いところで、発生しているとノイズが出るとのことだ。これを直すには、パーツをボードから浮かして配線するしかないとのこと。

それから、TC.ELECTRONICの話になった。以前、2人の兄弟がTCを立ち上げたころ、工場見学に行ったそうだ。その当時のTCはすばらしく、すべてピートの商品と同じよう手で穴を開け、手半田して作っていたそうだ。見事に美しくすばらしかったといっていた。その後TC2290を発売するというので、展示会に行ったそうだ。
TC2290の話題では、ステレオエフェクトのディレイの位相が180度違うためモノミックスしたときに、ディレイ音が消えてしまったというという話を教えてくれた。これはピンクフロイドのツアーで起こった話らしいが、舞台では、ディレイ音が聞こえる。ところがレコーディングしているミキサーの所では、ディレイ音がほとんど聞こえなくなっているという状況だったらしい。すぐにピートのところに連絡があって、原因を探ったところ、逆相だったということだ。これをすぐにTCに連絡したら、彼らはそれをすでに知っていて、このスイッチを押せばそれを解決できるよと言われたそうだ。たしかにこの現象は経験がある。しかし、どのスイッチを押したら解決できるのか、ピートも忘れてしまっていた(笑)

夕方からSOFT SUSTAIN-2とP-2 FUZZの製作を手伝った。ピートは自分でちゃんと穴をあけて、やすりで削って作っていた。「全部手で作っていると言っても人は信じてくれないのだよなぁ」とぼやきながら作業していた。皿ネジの取り付け部の穴あけは、いちいちネジをはめながら深さを見ながらドリルで削っていた。このドリルも自分でネジにあうように角度をあわせて作ったそうだ。グラインダーは必需品のようだ。
バリ取りとリベット打ちは、教わって自分がやった。そのあと、内部をハケで綺麗にし、パーツ付けと半田付け作業に入った。ピートは、電池ホルダーを除く全てのパーツを最初に取り付けた。その後、つまみを取り付けた。その後、アウトプットジャックを配線。次にインプット側をソリッドワイヤでシャーシとジャックを半田つけした。その後、ボリュームの配線。コンデンサをつなぎ配線した。ピートいわく、フェイズシフトをしないようにギターのトーンコントロールと同じように、ハイカットの単純なトーンコントロールにしたとのこと。配線や半田付けのチェックを、その都度やってもらっているが、今日はパーフェクト!といわれたので、すごく気分がよかった。ピートに誉められると非常にうれしい!

ピートにもう一つ、ピンクフロイドの話を聞いた。ロージャーが抜けて変わりのベーシストが加入したときに、ツアーでショウをやるたびにスピーカーが飛んでいたそうだ。ハートキーのベースアンプを使っていたらしいが、歪ませて使ったりしていたらしい。歪ませて2つの音を同時にだすと、ベースの場合は、数ヘルツの音が発生する。2つの周波数をあわせるとビートが発生するのと同じ原理だ。この低周波の発生でスピーカーが飛んでいたらしい。ピートは20Hzのハイパスフィルターを入れてこれを対処したそうだ。

そういえば、プロフェショナルな仕事をするならば、やはりマーシャルをならせる位の場所がないとだめだと言われた。それは良くわかるが、すぐにそういう状況を作れるわけはない。つらいところである。田舎に行けばいいのかもしれないが・・・。うーん、悩むところだ。

今日は、いろいろ話したなぁ。覚えきれないくらいだ。

そういえばオアシスのノエルギャラガーがピートの工房に来たときの話になって、リンダが言っていたが、ミュージシャンにシステムを製作するときは、使いやすく単純なほうが絶対に良いというのが常であり、そうするべきだと話していた。それに関しては、まったく異論はない。

そういえば、キャスパー(ピートの次男でプロのバレエダンサー)が舞台に招待してくれるそうだ。バックステージにも案内してくれるそうだ。楽しみ!キャスパーは今年で28歳だそうだ。まだ若い!
ピートは自分のお父さんとお母さんの写真も見せてくれた。お父さんはいくつもバンドをやっていたマルチプレイヤーだったそうだ。バイオリンから管楽器からなんでもこなせる人だったそうだ。やはり音楽の血が流れてるんだ!
今日も内容の濃い一日だった。

DSCF0034.JPG

イギリスで住んでいた家とレンタルで借りていた車



8月21日(水)

今日は朝から体がだるかった。ちと疲れがたまってきたか???今日は、出勤の途中で遅い車が前をずっと走っていたので、初めての追い越しを試みた。途中までは良かったが、対抗斜線でも追い越しをしようとしている車がいて、びびった。もう、追い越しはやめよう。

今日は、PMS用のルーティングユニットの製作に入った。まず3出力のマスターアウトのレベルを調整するために使うアッテネーターの製作だ。細かい作業で半田付けにてこづった。1回路できたとことろで、ピートが回路をチェックし始めた。まずレベルメーターで正確に3dBダウンするかどうかを確認。その後、ギターからの音を入れてチェック。切り替え時にポップノイズが出るので、おかしいと言い出して、これと同じモノを何回も作っているが、ノイズはでなかったのに。といっていた。このままでは駄目だということで、接点構造がMBB(Make Before Brake : 一方の接点を離す前に、もう一方の接点に接続する方式)のタイプを再度注文して明日製作することになった。また2dBステップのタイプと比較したが、ピートは3dBくらい上げないと、ステージでは音量が上がったようには感じないよ、といって3dBタイプをすすめられた。2dBステップだと確かに微調整という感じである。

今日は、ポールマッカートニーのラックを事務所の人が取りにきてくれた。トラックの中央に前後と上下方向から縛って、揺れないようにしていた。ブギーのパワーアンプもメンテして欲しいと置いていった。
今日は、二人とも疲れていたので、早く帰った。

そういえば、P-2FUZZとG-2FUZZの名前の由来を聞いた。G-2ファズは、そのままゲルマニウムファズの頭文字のGだそうだ。Pはというと、PRESISION(正確、精密)FUZZと呼んでいたところから来たらしい。付け加えて、ギルモアは、バンドとしてアンサンブルの中に入ってプレイするときは、G-2 FUZZを使うそうだ。P-2 FUZZだと音にパワーがありすぎて、他の楽器の邪魔になってしまうからだそうだ。ソロ活動とかは、P-2を多様するらしい。というように使い分けているそうだ。

(つづく)
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イギリス滞在記(7) [音楽]

8月19日(月)

今日は、朝から早速アレンビックのプリアンプの作業にとりかかった。蓋をしめて梱包しようとしたら、ピートに止められた。チェックしてからだよ!といわれて、チェックし始めたら、ぼそぼそぼそというではないか。やっぱりチェックしてよかっただろ!と言われ色々話が始まった。
蓋をする前と、した後は必ずチェックをする事と教わった。ぼそぼそノイズの原因を探るときに、どこから発生しているかを回路図を見ながら冷静に始めた。1chからノイズが出ているが2chからは出ていない。よって共通の電源回路ではない・・・等。トーン回路のトレブルに使用されているセラミックコンデンサのリーケージが原因であろうと断定。パーツを通販で頼んで、今日一日ノイズがどのようになるか電源いれっばなしにした。別のコンデンサを入れて、場所をはっきり特定しないで大丈夫かな?と心の中で思いながら、まずはピートの言うとおりにした。真空管の場合は、グリッドの入力インピーダンスが100MΩとか非常に高いので、ほんのわずかな電流のリークによる電圧の発生がノイズの原因になるとのこと。

F2B.png

こちらが改造したリイシュータイプのアレンビックF2B。


そのあと、ピートが電源電圧がおかしいと言いはじめて、自作の電源ユニットを分解し始めた。電源電圧の表示が実際の電圧と異なっている。調整してもしばらくすると電圧表示が狂ってしまっていた。おそらく表示LCDが異常なのだろうということになったが、いままで数ボルトずれていた事になる。まあ、大きな被害はないので問題ないが、ピートでもこんなことがあるのね、とちょっとホットした。

その後、リンダが作った基板のチェックに入った。しかしリンダの半田つけの速さは驚異的。あっというまに基板を作りあげていた。ピートがリンダに基板を頼み忘れていて、あと一つ作ってくれないかなぁ?と頼みこんでいるときの状況は、うちの状況にも似てたので笑えた。どこも奥さんには頭があがらないとか・・・・(笑)

基板のチェック時にピートが確認していた内容は、
1. ゲイン
2. 周波数特性
3. 入力インピーダンス(約1MΩであること)6dBダウンのポイントを確認していた。
4. 基板ごとの電流値

全ての基板に対して、チェックを行なってから、ペイントをしているとのこと。
ゲインの調整は、おおよそユニティにあわせて、再度組みあがったときに再調整するとのこと。回路の後に、いくつ回路がぶら下がるかわからないからだという説明であった。

今日は、プロフェショナルな仕事を本当にしたいならば、という前置きでいろいろ条件を話してくれた。

1.自分の作業効率を上げるために、ワークステーション(作業台)を作ること。
2.基板を作ったり、配線したりするスペース以外に、汚く汚れてもいいスペースを、隔離して用意しておかないといけない。同じスペースで、削ったりする作業をすると、機材にその切りくずや埃が入ってだめになる。
3.機材を痛めないためにも1階に作業場があるべきである。それがで無理な場合は、専用のリフトが必要。機材が入らないようなリフトでは問題だ。
4.きちんとパーツ等を整理できるように、パーツボックスを用意する。
5.ツールは大事な仕事道具である。必ずマッチした工具を使うこと。ないものは自分で作ること。

ピートとリンダに、今言った内容を信じろ!といわれた。マジで話してくれていただけに、本当にそうしないとだめなのか?と思ってしまったくらいだ。これを全て揃えるのは大変なことである。ただ確かに揃えていかないと仕事にならないのは確かである。マジで考えないと!!!
そのあと、ピートから、作業台の解説をしてもらった。まず絶対必要といわれたのが、
1. テストイクイップメント
・ひずみ率の低い10dBステップのアッテネーター付きオシレーター。
・ステレオのセットに対応するためのアウトプットトランスとオシレーターをパラにするためのトランス。トランスは、信号を通すだけで通常1dBダウンするらしいので、注意が必要とのこと。
・それから非常に重要なのが、正確なミリボルメーター。アナログメーターが一番良いと言っていた。これにフィルターがついているものが必要。
・バリアブルアッテネーター
・パラボックス
・絶縁を確認するためのメガーのテスター
・アースを確認するためのテスター

2. 手作りしないといけないツール
・入力インピーダンスを測定するツール
・テスト用入力、モニターセレクター(アンプの出力セレクト用には10A容量のスイッチを)

3. ケース加工用のツール
・固定用ツール(シャーシ等を固定)
・ドリル
・リーマ
・ドライバーやレンチ等
・ピンバイス
・強力な18V以上の電動ドリル
・鉛筆書きを落とすための液体(名前あとでしらべる)
・切りくずを落とすためのハケ

4. 半田付けや基板加工に必要なツール
・半田こて(ピートとリンダはウェラーの50Wの7番が今までいろいろ使って一番良かったと言っている)温度も自動的に調整できるものらしい。7番というのは、半田こてのチップのそこに番号が入っていて、これが温度を決めると言っていた。)
・半田のコテ先のクリーナー
・基板のヤニを落とすためのクリーナー
・ヤニを落とすために使用するハケ

*日本に帰国してからピートが使っていたものと同じ半田ごてを探したが、同じものは見つからなかった。イギリスでも探してもらったが残念ながら製造中止になっていた。残念!

等々あげたらきりがなくらいだ。ピートは必要なものは頼んであげるからいつでも言ってくれと言ってくれた。ありがたい!

グランドループの質問をした。トランスの一次側とシャーシ間に流れるACの電流が信号ラインのグランドといったん共通になると、それを除くことはできなくなる。よって信号ラインのグランドとシャーシを流れるACを別々にし、ノイズが入り込まないようにする必要があると説明してくれた。

今日は基板の調整作業を見せてもらった。しかし説明しながら使用する全部の基板の調整をしてたら、日が暮れてしまう!悪いなぁと思いながら、聞いていた。

お昼には、PMS(MIDIルーティング・コントローラー)用のソフトをピートのiMACコンピュータで動かすことを始めた。MIDIファイルはちゃんとオープンし、動くのだが、MIDIアウトからデータが出力されない。結局諦めた。日本で再度マックを用意してチェックしないとだめだ!くやしー。

カスタムルーティングシステムの仕様の話になった。ギター入力は、マニュアルでのセレクト(トグルスイッチを使った切り替え方式)がいいだろうということになって、PMSからのコントロールは無しにした。アンプ出力以外にDI出力を付け足した。このDI出力は常時出力できるもので、出力レベルは固定にした。PAサイドからするとレベルは一定のほうがよい。またALL MUTEも追加した。出力が3つあるため、何かあったとき全てを一発でOffできたほうが、いいだろうということになった。出力はOn時にLEDが点灯するように決めた。

そういえばDIの話になって、音の帯域を狭めたほうが、強い音が出せると話してくれた。ギターアンプのスピーカーは高い音域を再生できないのだから、あまりハイファイにする必要はないというのが、ピートの考え方だ。TB-83のように3kを強調するというのも音楽的に正しいと思うと言っていた。

PMSと今回のアナログルーティングユニットで使用するコントロール用基板をつなげてチェックした。問題なく正常に動いた。
次にROCKTRON/ALL ACCESSをつないでチェックを始めた。PMSにプログラムナンバーとポートナンバーOnが一致するように(たとえばPGM001の時は、ポート1がOn)プログラムした。ところがペダル側のスイッチ11番から15番がPMSのポートの12番から16番までアサインされているため、プログラムチェンジ番号を出力すると、同時にc.c信号のバリューを送ってしまい一瞬LEDが点灯してすぐに消えるという症状が出てしまった。どうしてこうなるかはわかっているが、どうやって解決したらよいか、いい案が浮かばず、時間切れとなった。うーーー困った!!!さらに一度、ペダルの15番を押したとき、PMS側が反応しなくて、あせった。何度かトライして現象が一度だけ再現した。ペダル側からデータが来なかったのが、原因であることがわかってちょっとほっとした。

(つづく)
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イギリス滞在記(6) [音楽]

8月17日(土)

今日は朝早くから日本で借りた携帯の電話が鳴って、飛び起きたが切れてしまった。すぐに何かあったかと思って妻に電話したが、何事もなくてよかった。風邪はすでに良くなっているようで良かった。息子はじいちゃん、ばあちゃんと買い物に出かけていて声が聞けなかった。残念!

今日は、ピートの家に行ってPAのセットをチェックする日だ。お昼をまたご馳走になって、まずはUckfieldに買い物に行った。本屋に行ったがギター関係の雑誌が全くおいてない。ヘビーメタル系の本が2冊おいてあっただけ。この辺は大きな本屋さんないのかなぁ? いやなくても大丈夫だよとピートに話した。まあないものは仕方ない。

その後、ピートの自宅に戻って、PA機材のチェックをした。ガレージに行くと、2階が改造してあって、スタジオになっていた。マイクプリアンプもあった。ピートの長男のミンガスがたまに来て、打ち込みやレコーディングをするそうだ。(現在、ミンガスはピート、リンダと一緒にピートコーニッシュ製品を製作しています。)ピートもここで音出ししたりするそうだ。2階にライブ本番を想定して、セットアップしてマイクの感度や出力のバランスをとってチェック完了した。電気の工事も屋根裏の改造も全部自分でやったらしい。よくやるなぁと思ったが、そういえば韓国のパクさんも自分でスタジオ作ったっていってたっけ。パッチベイも手作り。エフェクターラックは、ルーリードのスタジオからもらったものらしい。大きすぎるので、半分に切って使っていた。至る所に工夫の跡が見られる。電源工事ももちろん自分でやったようだ。ミンガスのアンプとルーティングシステムはここに置いてあった。それにしてもうらやましい環境にいるなぁと。でも考えてみれば、ピートとリンダもこの年になってようやくのわけだから、自分もなんとか40歳を目標に家でも持つか???いや〜無理かも。

今日昼食でリンダが話してくれたが、息子達は月に800ポンドくらい払って、アパートを借りているそうだ。そんなに払っていたら、貯めるお金などあるわけない。イギリスでは、だいたい25年ローンで家を買う人が多いらしいが、最低購入する家の10%をデポジットとして払わないと(いわるゆ頭金)購入ができないそうだ。
ローンにすると一ヶ月あたり650ポンドくらいらしいが、それにしても高い。若い世代の人は、家をもつのが不可能に近いと言っていた。なんか日本より悪い状況下もしれない。(2002年、当時のメモには、1ポンドあたり197.4円と書いてあったので、それを元に計算すると650ポンドは128,310円に相当)

ピートの簡易PAシステムはBOSEのスピーカーとアムクロンのパワーアンプ。タスカムのミキサーだった。チェックが終わって、帰り道、完全に迷って完全に違う方向に行ってしまった。通常なら30分で帰れるところ、1時間以上かかってしまった。さてこれから、どこへ迷い込んだか地図を見ることにしよう。
そういえば、ピートとリンダが飼っている犬は、兄弟らしい。名前はモンクとピコ。青い首輪がモンクですこし痩せている。緑の首輪がピコで体が大きい。名前の所以をいろいろ説明してくれたが、英語がわからなかった。うー残念。

倉庫でピートとリンダが結婚したての頃の写真を見せてもらった。二人ともほんと若かった。そりゃそうか。ピートは今よりずっと痩せていて、ほほにヒゲをはやしていて、神経質そうな感じだった。照れくさそうに見せてくれた。

DSCF0033.JPG
当時住んでいた家からの眺め



8月18日(日)

今日は、ピートのギグの日だ。朝からピートの家に行って、機材の積み込みを手伝った。30分くらい運転して現地についたが、ブルーベリー鉄道の駅近くを通った。トーマス機関車で有名な鉄道である。子供たちが多く訪れる場所で、今日も駐車場はいっぱいだった。イギリスには現在でも蒸気機関車がいくつか走っているラインがあるそうだ。さすがイギリス!今度、別の日に来ようということになった。息子にお土産になりそうだ。

今日ピートがプレイするところは、古い小さなお城のようなところで、内部がバーになっていた。裏庭には、池もあってすばらしい眺めだった。写真を撮り忘れた!ここで結婚式を行なうことが多いらしい。到着したときも夜通し飲んでいたような人たちがたくさんいた。

早速PAの機材をセッティングしてチェックした。次々にバンドのメンバーもやってきた。4人のジャズバンドで、サックス、ピアノ、ベース、ドラムである。ギグがはじまると、ピートはのりのりでプレイし始めた。ドラムとピアノがむちゃうまで、今日初見の曲も数曲あったそうだ。ピートのオリジナル曲もやっていた。自分の曲のことを”My tune”と英語で言うそうだ。1時間のギグを2回やって、普段あまり聞かないジャズのギグが終わった。
お客さんは少なかったが、ピートは演奏することがうれしかったようで、終始上機嫌だった。呼んでいた人の中に、ピンクフロイドのアルバムのアートワークをやっていた、コリン夫妻が居て紹介してくれた。何気なく、すごい人と仲がいいんだなぁ。少し話したが、訛りのある英語だったので、全く何を言っているかわからず、リンダが通訳!してくれた。

片付けをちゃっちゃとすませ、ピートの家に戻り機材をガレージに戻してからお茶をいただいた。飼っている犬がずっとまとわりついてきて、服はよだれだらけになってしまった。また、でかいのだ、この犬たちは。モンクは、手をかけてもたれてくるし、まあ、結構気に入られらみたい。

(つづく)
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イギリス滞在記(5) [音楽]

8月15日(木)

今日もいい天気だ。朝、車で通勤のとき、後ろからおばさんが乗った車にあおられた。むかっ!
ピートの職場についたら、牛が集まってきていて、私の車をみてさらに寄ってきた。じっと見つめてくる。あっちいけーと思いながら、にらみかえしても、じーっと見てくる。ハエがたかっていて、うわくさそー(笑)

ushi.jpg

以前、私が設計したエフェクターについての指摘がピートからあった。その内容を思い出したので書くと、
1. スイッチングのノイズが非常に気になる。切り替えは、初段のバッファーの後からの方がいいのではないか?
2. トーン回路やブースト回路は、まったく問題ない。
3. 一番頭のバッファーはいらない。いい音を作るには、回路を複雑にしないほうが良い。
4. コストを抑えるにはパーツを減らしたほうがよい。電源回路もすばらしいと思うが、レギュレーターだけで、十分なのでないか?

以上4点が話の内容であった。
(技術者同士が回路図を見ながら、いろんな観点から意見を言い合うことは非常に重要です。自分では気づかない所も指摘してもらえる可能性があり、さらに良い製品になるかも・・・)

今日も充実した内容であった。まずツールの重要性の説明を受けた。まずいろんなサイズのドライバー、ドリル等をそろえる必要がある等。今日、必要だと言われた工具類は、下記のとおり。
1. いろんな種類のドライバー
2. 同上のレンチ
3. 同上のドリル
4. ユニットを固定するための木とホルダー
5. ドリルがユニットの奥まで入っていかないようにするためのストッパーつきドリル等。スペサーで代用できる。
6. ドラフティングテープ
7. 各種リベット
8. 絶縁シート

等々たくさん。
今日のメインの仕事は、ポールマッカートニーのストロボチューナーを治す修理である。シャーシの補強と、基板の取り付け改造。壊れていたインプットジャックの交換を行なった。時間がかかったがピートに誉めてもらった。うれしー!「まず、自分で考えて、どうすれば信頼性をあげられるか考えてみなさい」といわれたので、がんばった。とりあえずテストにパスしたようだ。

次は、アレンビックのプリアンプの改造を始めた。すでにピートが途中まで改造していたものだったが、フロントパネルについているインプットジャックをリアに移動するということで、追加の改造をした。今日は、途中で終わってしまったが、ジャックへ半田するのが非常にむずかしかった。また穴空けも非常に神経をすり減らすような作業であった。ドリルが穴を空けた後、どんどんドリルが穴に入っていくのを防ぐためにストッパーをカスタムで作っていた。ドリルの歯が1cmくらいしか出ないようになる。デスクの手前端にラックケースを配置し、傷が付かないように木を使ってクランプする。いろんな工夫が見える。いままで培ったものなんだなと実感する。

ところでドライバー類は、ドライバーの番号のカラーコードを、ドライバーの軸に付けていた。判別用。

帰り際に、BUFF BUSTERという新製品のデモをしてもらった。これは以前私が、バッファー後にゲルマニウム物のエフェクターを接続すると、正常な音にならないので、ハイインピーダンスに戻すユニットは作れないか?と話したところからくる。覚えてくれていたのだ。当時は、回路のアイデアまで、渡してもらっていたが、時間がなくて試していなかった。バッファーを通しバフバスターを通した音と、何も接続せず直接ギターの音とを聞き比べ、非常に近い音がでる事を確認した。ギターのピックアップによって音色が変わる。このためトーンアジャストがついている。ギターのピックアップによってインピーダンスが異なるためだと説明を受けた。
その後、このユニットをどのようにデモするのかが問題だなぁとなった。分かりやすく効果を説明するには、どうしたらいいか、、、
今日、エキサイトすることがあるぞ!と言っていたのは、このことだったのだ!
(このBUFF BUSTERのアイデアは、私からのものであったのですが、「時間が経ってもYukiが作らないから代わりに俺が作った。これは俺のものだからなw」 とその後、ピートは製品化してしまいましたw)



8月16日(金)

今日は、朝から昨日のつづき、アレンビックのステレオプリアンプF2Bの改造を行なった。基板にシールド線を取り付け、フロントパネルにブランク用のブラックのキャップを取り付けた。穴のサイズを大きくして、ジャックを取り付けてあったものを外したため、キャップをシリコンで取り付けた。シリコンは、建築で使う大きなサイズの物を使用していた。ピートのペダルボードは、ねじの他にこのシリコンも塗りつけて、補強しているそうだ。
このアレンビックのプリアンプの回路は、あるフェンダーの回路と全く同じ物である。このままだとハムが出てしまうので、ピートは追加で真空管を使用した回路を追加して、出力もバランス回路になっていた。またこのユニットは、電着塗装を行なっていてしっかり塗装を落とすことがアースを確実に落とすために重要である。
また、このプリアンプは低音が強めに出るためピートはMIDスイッチを追加していた。
ピートはフェンダーの回路が好きなようで、相当研究しているようだ。トーン回路のピークは、おおよそ3kHzになっていているそうだ。ピートが持っているマーシャルはトーン回路がフェンダータイプになっているそうだ。
またマーシャルのインプットのリンク方法についてアドバイスがあった。通常クロスの配線をして、ブーストするが、それはフェイズシフトするからだめだそうだ。抵抗とケーブルのもつキャパシタンスによって、位相シフトしパンチのある音が出ないとのこと。よって、入力の前でパラにするか、内部で配線するかとなる。

ピートは音出しのチェックをするとき、必ずハーモニクスのチェックをしている。ハーモニクスが損なわれないようにしているそうだ。また音質もなるだけスムーズにフラットを目指しているらしい。

午後からは、PMS(MIDIルーティングコントローラー)用のソフトを動かすために、MACにインターフェースをつなぐ作業をした。うまくMIDIインターフェースが認識してくれず、今日のところは諦めた。インターフェースは、MIDI MANの1x1という非常に小さいもの。こちらの送ったMIDIファイルは無事認識された。MIDIプレーヤーでも問題なく動いている。OMSというソフトを入れないとだめなようで、そのあとにドライバーをインストールしたが、うまくいかない。日本でもちゃんと確認する必要がありそうだ。とりあえずファイルが開かないという問題は解決した。

夕方早く帰宅し、ここから30分くらい行ったところにある教会所有の小さなホールに行って、ピートのバンドのリハーサルを見た。初見の楽譜をみんなで演奏している。18人くらいの大きな所帯のバンドだった。メンバーのドラムと一人のトランペットがプロだそうだ。休憩中に、近くのパブに行ってビールを飲み、戻って30分練習してピートと帰った。驚かされたのが、ピートは楽譜が読めるということだった。曲をピアノでコピーして、各楽器のパート分までアレンジし楽譜に書いていた。それも手書きで!おそるべしピートコーニッシュ!ピートは、10年くらい前にアレンジの勉強に、土曜日の午前中、ロンドンの大学に行っていたらしい。QUEENと一緒に仕事をしていたフィルハーモニーのアレンジャーが体を壊したあと、音楽が好きで大学で教えていたそうだが、その授業に参加したそうだ。別の意味でのバックグランドがしっかりしているのだなと、本当に感心した。

(つづく)
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